2022年は人工衛星の“光通信ビジネス”元年になるか?World Satellite Business Weekから読み解く宇宙光通信ビジネスのトレンド
明けましておめでとうございます。
年始年末休暇があったかと思えば、あっという間に1月も中旬に入りました。
2021年を振り返ると、米国の宇宙旅行企業が次々と有人宇宙飛行を成功させ、さらにZOZO創業者の前澤友作さんが旅行者としてISSに滞在するという大きなニュースもありました。まさに有人宇宙飛行元年と言える1年でした。
2022年はどんな1年になるのでしょうか。
昨年、世界各国で開催された宇宙ビジネスカンファレンスに参加したワープスペース・CSOの森は、ビジネス向けの「衛星光通信元年」になると予想しています。
トップエグゼクティブが集結するSummit on Earth Observation Businessとは
森が特に、光通信事業の盛り上がりを感じたというのは、2021年12月にパリで開催された「Summit on Earth Observation Business」(以下SEOB)です。
Summit on Earth Observation Businessの会場の様子
これは、宇宙専門の調査・コンサルティング会社Euroconsult(ユーロコンサル)が毎年開催しているイベント「World Satellite Business Week」を構成するカンファレンス2つのうちのひとつ。各国の衛星関連事業者のトップエグゼクティブが集結し、観測衛星ビジネスに関わるトレンドが語られる場として知られています。
SEOBはキーノートやパネルセッションがメインですが、会場にはスポンサー企業のブース出展があります。
スポンサー企業のブース出展の様子(credit:Euroconsult)
例年は、BoeingやAirbus、Lockheed Martinといった大手企業、特にフランスの企業による出展がほとんどだといいますが、今回は昨年末にNasdaqに上場した光通信端末の開発を進めるドイツのベンチャー企業Mynaric(マイナリック)が出展していました。さらに、衛星データビジネスに参入したMicrosoftはAzure Spaceのブースを出展していて、本格的な事業化に向けてブーストをかけている様子が見て取れたと森はいいます。
光通信のセッションが初登場
カンファレンスのプログラムには、今年から光通信にフォーカスしたセッションが加わりました。5Gや衛星コンステレーションと並び、専門のセッションができたということは、光通信が科学技術の研究としてではなく、衛星ビジネスの重要な技術として注目が集まっているからでしょう。
セッションは「Optical communication: open for business?」と題し、MynaricのCEOであるBulent Altan氏やSpacelinkのCEOであるDavid Bettinger、そして光通信機開発製造や光通信事業を行うHoneywell、BridgeCommやTesatのCEOやシニアディレクター陣が登壇しました。
また、主催者のEuroconsultがその年に活躍した事業者を表彰するアワードでは、Mynaricが「パイオニア宇宙ビジネス賞(Pioneed Space Business Award of the Year)」と小型SAR衛星のコンステレーションを構築しているアメリカのベンチャーCapella Space(カペラスペース)が「新参情報ビジネス賞(Newcomer Information Business Award of the Year)」を受賞がしました。
Mynaric(1枚目)Capella Space(2枚目)の表彰の様子
(credit:Euroconsult)
Capella Spaceは、2021年11月にMynaricの光通信用ターミナルを衛星に搭載することを発表しています。衛星は今年2022年に打ち上げられ、実証が行われる予定です。
SAR衛星はデータの容量が大きいため、大容量通信が可能な光通信との相性は抜群。1社が導入すれば、競合企業も導入の検討を加速させるでしょう。
キーワードは小型・軽量化
光通信技術を導入しようとしているのはSAR衛星事業者だけではありません。地球を一周する間に、SAR衛星よりも多くの画像を撮影できる光学衛星事業者も同じように光通信技術の導入を検討しているはずです。
ところが衛星の小型化が進んでいるため、光通信用のターミナルを搭載するスペースを確保するのが難しいのが現状。まずは、衛星の機体が比較的大きいSAR衛星事業者から光通信用ターミナルの導入が進められているわけです。
一方、ワープスペースは、3U〜12U、大きくても100kg程度の光学観測コンステレーションを構成する超小型衛星事業者を主なターゲットとし、小型・軽量化した、光通信用のターミナルを開発しています。
現在は光通信用のターミナルを衛星に搭載するには、スペースを確保したり、他のサブシステムの重量を削ったりする必要がありますが、GPSなどの測位衛星データを取得できるGNSS受信機がスマホに搭載されているように「しれっと衛星に乗っている」ほど、小型・軽量化されたターミナルを開発することが理想だと森はいいます。
ロボットやヘッドホン、家電や理容家電など他業界を見ても、ハードウェアの小型化や軽量化は日本のお家芸です。ユーザーのニーズを汲み取りながら、サービス開発に取り組むことで、日本は光通信事業においてプレゼンスを発揮していけるかもしれません。
ワープスペースは、国内で光通信サービスに取り組んでいる唯一の企業であり、ターミナルの小型・軽量化の先陣を切っていこうとしているわけです。
ワープスペースの小型中継衛星のイメージ
今年から各社が地球低軌道-地上間の光通信技術の実証を進めていく動きがありますが、そこにワープスペースが2023年から実施する低軌道-中軌道間の実証が加わることで、2025年頃には、地上と地球低軌道・中軌道・静止軌道の全てが光通信によってシームレスに繋がることが現実味を帯びてきます。
これらの技術を転用すれば、月-地球間も光通信が活用できるようになり、有人月面着陸を目指すアルテミス計画にも貢献できるでしょう。
今後の宇宙開発を大きく変えるであろう、光通信サービスの普及の幕開けに、引き続きご注目ください!
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