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【ラグビーW杯】最後は、男と男の真剣勝負 19.10.05 日本対サモア戦

長くラグビーを観てきたが、人生で一番緊張する試合観戦だった。
長く観てきたからこそ、サモアのパワー、そして火事場の底力は充分知っている。
だが、長く観てきたからこそ、僕はラグビー日本代表が強くなるプロセスを知っている。
だから、悔いなく応援しなければならない!

   ◆

横浜から東岡崎までの高速バスの旅は、渋滞もあって予定より1時間以上オーバーしてしまった。少し急ぎ足でホテルにチェックインし、名鉄線を乗り継ぐ。
豊田市駅へ向かう三河線の車内は、ほぼほぼ日本代表ユニフォームだった。こんなに日本代表を応援してくれる方がいるだなんて…。なんと幸せなことだろうか。

気温はまだ夏を残している一方、日の入りは秋を感じさせる早さだった。18時半の段階で周囲は真っ暗。スタジアムだけが、不気味に輝いている。
スタジアムにそそくさと入り、階段を登る。豊田スタジアムの4階席は、高所恐怖症を怯えさせるにはもってこいの眺めだ。そして、ピッチ上の様子や観客の反応を見るのも最適である。

アイルランド戦の勝利で勢いに乗る日本代表。ここまでピリッとしない戦いが続くサモア代表を迎える第3戦は、どちらかというと楽観論が流れていた。4トライ以上奪うボーナスポイントはマストである、と。
だが、ここぞという時のアイランダーほど怖いものはない。過去、何度も痛い目に合ってきた。なにより、日本代表はまだ「ティア1見習い」みたいな立場だ。ここで日本を倒せば、逆に自分たちが「ティア1」への階段を上ることができる。
そういう立場であることを理解した上で、この試合に挑まなければならないのだ。

   ◆

そんな僕の予想は見事的中してしまった。前半からサモアのフォワードは力強く、そして荒々しく選手たちを襲う。もちろん、その中には荒っぽいプレーもあり、カードトラブルもあった。しかし、日本代表も同じくらいのペナルティを与えてしまった。
前半の16―9というスコアは、リードしたという点で上出来だった。しかし、奪えたトライは前半28分にラファエレが決めた一本のみ。少し焦りも出てくる展開だ。

お互いに1本ずつペナルティ・ゴールを決め、迎えた後半14分。ラインアウトモールを組むと、バックスの選手も加勢に加わり、最後は姫野がグラウンディング。地元選手の活躍に、豊田スタジアムは「姫野コール」に包まれた(個人的には、その前段で相手選手をタッチ外に追いやったレメキのプレーにも感動!)。

60分を超えて、ここから一気に日本のペースに……と思ったのだが、なかなか仕留めきれない。サモアのフィットネスも中々切れなかった。勝手知ったる相手だからこそ、意地をむき出しにして戦う。そんな気概を感じた。
その思いがトライに結びつく。後半32分に敵陣22メートルラインからピック&ゴー繰り返し、じりじりと進出。最後はヘンリー・タエフが華麗な身のこなしを見せトライ。ゴールキックも決まり、26―19。勝利どころか、この勢いのままでは引分や敗戦の恐れもでてきた。スタジアムが緊張感に包まれる。

だが、尻に火が付いたジャパンが最後の猛攻を始める。
キックオフのボールをヘル・ウヴェが奪い、スイッチオン。ボールをキープし、ピッチ幅を大きく使ったパスワークで相手ディフェンスからスペースをつくり、最後は大外にいた福岡がトライ。勝利に大きく近づき、さらにボーナスポイントまであとひとつ。もはや、完全に時間との戦いだ。

後半38分、再びサモア陣5メートル内からのラインアウトモール。バックスの選手も入れて、13~14人でモールを押していただろうか?
だが、執念も空しくモールは崩れ落ちてしまった。
この時点で、多くの観客は「もう試合は終わりだ」と思っただろう。

だが、サモアは試合は切らなかった。再びスクラムを選択する。
よくよく考えてみれば、サモアも1トライを獲れば7点差以内のボーナスポイントをゲットできる。
グループリーグの上位3位までに入れば、次回大会の出場権を得ることができる。ボーナスポイントを得るということは、そのチャンスを維持し続けるということだ。

そういう理性的な要素を、現地で試合を観ている僕はすっかり忘れていた。
これはもう、男と男の意地だと思った。
ロスタイムの5分間は、グループリーグ突破やらボーナスポイント獲得とか関係ない、「勝敗を超えるラグビーの面白さ」がそこにあった。

   ◆

結果は既に多くの人がご存知の通り、スクラムに組み勝った日本代表がチャンスを活かし、松島幸太郎がトライを奪った。
豊田スタジアムは大団円で幕を下ろしたのである。

かつて互いに「ティア2」の有力チームとしてしのぎを削った仲だが、少しだけ日本が一歩先に進んだ。
そして、迎えるスコットランド戦。日本代表が新たな一歩を刻み、まだ見ぬ景色を見るための戦いが始まろうとしている

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