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NovelJam2018回顧録 第2話

僕が「編集」を選んだ理由

11月のある日、僕は末広町のとあるイベントスペースに居た。そこではNovelJam2018の大会説明会が開催されることになっていた。
僕は一応、日本独立作家同盟の正会員である。都合があえば、なるべく同盟のイベントには参加している。今回もそういう意識で、この場所に足を運んだ。
この時点では、NovelJamに出るか出ないかはハーフ&ハーフだった。

NovelJamには2017年大会も参加している。この記念すべき第1回大会は、もちろん著者としてだ。スポーツライターとして、自分の可能性や限界に挑戦してみたい。いつも以上に、野心をみなぎらせていたな、と今は思う。
結果は完敗だった。自分の野心が前に出過ぎてしまい、作品を上手くコントロールできなかった。僕が定義した敗因は、こういうものだった。

悔しい気持ちに蹴りをつけ、再び自分を奮い立たせたい。でも、前回大会でノベルジャムの怖さは嫌と言うほど思い知らされた。失敗を2回も繰り返すのは、ダメージが大きい…。
そんな悶々とした悩みを抱えながら、僕は会場にたどり着いたのである。

大会概要の説明があったのち、審査員の藤井太洋氏、内藤みか氏、そして前回は編集役として参加された漫画家の小沢高広氏の3者でパネルディスカッションが行われた。
パネルディスカッションとしての内容は…実を言うと、あまり思い出せない。というよりも、小沢氏の一言が頭に突き刺さって離れなかったと表するのが適切だろう。

「作家さんが編集を体験するのは、とても良いことだと思います」

要約すると、そういうことである。
小沢氏は前回、諸事情で当日に作家から編集役へのコンバートが行われた。そのときの経験をもとに、もっとノベルジャムにはジャム感が必要だ! と熱く語られていた。そして、とどめの一言がこれだった。

そうか、役割を変えるという手があるのか…

編集として参加する。それは意外にも、自分が「今後どうありたいか」という思いと合致していた。
人事異動により職場が変わり、通信販売の企画担当になった。ホームページやメールマガジンの構成を考えたりするのは、僕が学生時代にしていた新聞の編集作業に通じるものがあると思っていた。
また、昨年11月に電子雑誌をつくるイベントを主催しており、本の編集という意味でも、一応経験はある。第2回もぜひ! というオファーも主催先から届いていた。

とはいえ、それをかき集めても、果たして編集経験があると言えるのだろうか? ノベルジャムの編集役として、その任務を全うすることができるのか?
運営側が編集とデザイナーに空きがあることを仄めかすメールを送ってきた。いや、そういう問題じゃないんだよ。自分自身の問題なんだよ! そんな、禅問答を延々と続けながら、師走が過ぎ去っていった。

最終的に決断を下したのは、12月26日だった…と僕の手帳には記されている。
決断の軸になったもの。それは自分を育ててくれた、セルフパブリッシングへの思いだった。
セルフパブリッシングは本を出すハードルを下げ、多くの作家に光を当てた。その一方で、大半のことを自分自身で行わなければならない。そして、自分自身の中に「編集」というリソースがある人は少ない。書くことと、表紙をどうするかで精一杯だろうか。
そういう状況の中で、編集のスキルを持った人間がいるのは強みにならないだろうか? それを周囲の人々に還元できれば、より良いセルフパブリッシングの土壌となるのではないか?

あまり本大会中は、自分自身のエゴっぽいところは出さないようにした。ただ、自分の内的動機を正直に記せば、セルフパブリッシングの視点を伝えたいし、そのために自分なりに歩む道を示していこう! となるのである。

1月のある日、僕は渋谷のとあるビルにいた。日本独立作家同盟のセミナーを聞くためである。
その一方で、目的はもう一つあった。ノベルジャムを目前として、運営している同盟の空気感を知るためである。

プログラムが終了し、懇親会となった。何名かの方が話題を振ってくださる。
ある方は「和良さん、編集でも頑張ってね!」と声をかけて下さった。
またある方は今大会より新たに設置された「デザイナーの役割が肝になるのでは?」とアドバイスをくれた。
またまたある方は、「運営で出ようと思ったのに、諸事情でデザイナーになっちゃったよ〜」と笑っていた。

最後にT理事長にご挨拶をして帰ろうと思った。

「和良さん、いよいよですね。準備どうですか?」

準備…あはは、ぼちぼち頑張ってます…。

「編集のスピーチ聞いて、作家とデザイナーさんは希望の方を選びますからね。和良さんもスピーチづくりを…」

!?
ちょっと待って!
今、大事なことを言いました!!
言いましたよね!!!

「メールに『編集担当は3分間のスピーチをお願いします』と書いてますが…」

はい。スピーチは明日つくろうと思ってました。

「メールであれだけ書いておけば、だいたいそういう方式だとわかるでしょう?」

裏は取った。
この大会は、スタートダッシュがキーになっている!!!

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本連載をより楽しむには、下記の2冊を合わせて読むと更に楽しいです。

◆平成最後の1日を、逃げる二人の行く末は? アラサー女子が織り成す優しいロードノベル/新城カズマ賞受賞
藤崎いちか著「平成最後の逃避行」
https://bccks.jp/bcck/153415/

◇怪獣が現実に現れるようになった平成を舞台にした、生きる意味と恋を巡る青春ビルドゥングスロマン!!/海猫沢めろん賞受賞
腐ってもみかん著「怪獣アドレッセント」
https://bccks.jp/bcck/153416

【次回予告】なかなか進まないスピーチづくり。そんな僕を救ったのは、あのラグビー部の監督だった? 次回もお楽しみに!?

第3話はコチラ

どうもです。このサポートの力を僕の馬券術でウン倍にしてやるぜ(してやるとは言っていない)