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スポーツ観戦との「再会」・その6【20.11.21@東京競馬場編】

もしも「僕はコロナ禍を乗り越えて、スポーツ観戦ができる日々を取り返したぞ!」というシチュエーションがあるのならば、それは「東京競馬場に再び足を踏み入れたとき」だと思っていた。
理由は単純。「コロナ禍前に最後に観たスポーツが、東京競馬場のフェブラリーステークス」だからだ。もちろん、8月から徐々に、サッカーやら野球やらでスポーツ観戦を再開させてきた。大井競馬場にも足を運んだ。でも、止まっていた時計が本当に動き出す瞬間は、東京競馬場に帰ってきたときしかない! と。

とは言え、中央競馬を観戦する権利を得るのは難しいことだった。開放されている観客席は、指定席を中心に数百程度。10月からダメ元で応募はしてみたが、ハズレの日々は続く。開放される席数は徐々に増えていたのだが、東京競馬場ではGⅠレースが開催されない11月上旬もさっぱりだった。
そういう意味では、この11月第3週というのはチャンスウィークである。3日間開催で応募者はバラけそうだし、重賞の開催も3日目の東京スポーツ杯2歳ステークスのみ。翌週のジャパンカップウィークはとんでもないことになりそうだが、ここの注目度は薄い。
ならば、まずは一番注目されそうにもない日を選ぼう。11月21日(土)のメインレースは準オープンクラス。ここならば……

   ◆

スタンド2階のフードコートは、開店している店とそうでない店が半々ずつだった。フライドチキンの「鳥千」にて、チキンを貪りながら、競馬新聞を眺める。

ガラガラの場内だったが、唯一「風の音が強かった」ことは印象に残っている。びゅうびゅうと強風が吹く。ダートコースから砂埃が舞い、芝コースも何だか霞んで見えるくらい。
この風向きとなると、スタート地点からは向かい風。先行勢は厳しそうだ。ただ、直線に入れば追い風だ。差し・追込馬にとっては恵みになる。
今日の環境は極めて特殊だ。故に、この風を味方につけれそうな馬を探す。

今日の方針は固まった。油とスパイスで汚れた手を拭き取り、僕はパドックに向かうのだった。

   ◆

「風を味方にする作戦」というのは、思いの外ハマった。
この日の結果を簡潔に記すと……

【4R】◎ホワイトクロウの単勝的中
【6R】人気のブエナベントゥーラを軽視し、◎ニシノアジャストで単複的中
【7R】(競馬場内をお散歩したかったので)ケン
【8R】◎スマートアペックスの単複+コーユーヌレエフのワイド購入も、無念の4着

ということで、好位から差せる馬を重視するだけで、ポンポンと馬券が当たってしまったのだ。早い段階で非常に気持ち的に余裕が持てる競馬デーにすることができた。
中でも、僕が最も印象に残っているのは【5R】。芝マイルの新馬戦だ。
上位4頭の人気オッズは割れており、パドックを見ても一長一短な感じはしていた。悩んだ末に、4Rを勝った横山武史騎手の馬にしようと決めた。良い流れには素直に乗る。なにより、ローカルではなく中央場所で騎乗を続け、結果を残しつつある姿勢には好感を持てる。あと、ディープ産駒ならば、多分差し馬のはず。

そんな軽い見立てだったのだが。レースを見て度肝を抜かれた。
2021年のクラシック、追いかけるならこの馬だな。

   ◆

年が明けて、2月14日。首都圏は再び緊急事態宣言下に置かれ、僕もテレビで競馬を眺める日々を続けていた。

あの日の新馬戦を勝った牝馬、レフトゥバーズの復帰戦は共同通信杯となった。
本来ならば前日の牝馬重賞であるクイーンカップが狙いだったのだが、抽選漏れで無念の除外。ただ、こちらにも出走登録をしていた。牡馬に混じっての戦いは実質的な格上挑戦である。だが、前走の勝ちっぷりを多くの人々が評価している通り、3番人気に推されていた。

レフトゥバーズの単勝は勝っていた。しかし、しっくりこないところがあった。
鞍上が横山武史騎手ではないのだ。
そう、横山騎手はクイーンカップだったら騎乗予定なのだが、共同通信杯はエフフォーリアという馬に先約があった。なので、クイーンカップが抽選漏れによる除外だった場合は、必然的に他の騎手へ乗り替わりとなる。
さらに横山騎手にとって不幸なのは、そのクイーンカップを勝ったのが、以前騎乗していたアカイトリノムスメだったこと。そして、そのアカイトリノムスメに載っていた戸崎騎手は、今日レフトゥバーズに騎乗しているのである。

踏んだり蹴ったりな運の巡りと言うべきだろうか。
いや、むしろここは火事場の馬鹿力を見せるべき時だとも言える。エフフォーリアがレフトゥバーズに勝てば、牡馬クラシック挑戦への道ができるだけでなく、レフトゥバーズが自分の手元に戻ってくるかもしれない。

レフトゥバーズに勝って欲しいが、横山武史騎手にも報われて欲しい。
残りの資金をどう振り分けるかを考えた結果、僕はエフフォーリアの単勝にベットする道を選んだのである。

   ◆

単勝馬券が的中した。エフフォーリアの方である。
勝利ジョッキーインタビューで見せた安堵の表情。そこには、自らの手で未来を掴めたことに対する、自信も含まれているような気がした。

このレース後も横山騎手が活躍を見せる一方、レフトゥバーズの次走予定は入ってきていない(21年3月14日現在)。
果たして、この両者が再び混じり合う時は、どういうシチュエーションになるのだろうか? 許されるのならば、その時は実際に競馬場で確認したいところである

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