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NovelJam2018回顧録 第3話

編集の命運はスピーチにあり!

運命の日である。

八王子の大学セミナーハウスに到着したのは、12時を少し過ぎたあたりだったろうか。そのわりには、もう席は半分近く埋まっている。みんなの並々ならぬ、熱意が伝わる。
受付を済ませ、席に案内された。僕はEの札が掲げられているところを訪れた。一人は根木珠さんだった。静かに本を読んでいる。ここは彼女なりに集中しているとみて、会釈のみとする。
もう一方は、昨年は編集で参加されていた藤沢チヒロさんだった。昨年も出てましたよねー? はい、今年は編集なんですよ〜、なんて会話をしながら、しばらく時を過ごした。

おっと、編集役はのんびり過ごしていたらいけない。机の上にパソコンをセットし、ファイルからカンペを取り出した。
少しカマをかけてみた。

いやあ、実は編集には3分のプレゼンタイムがあるんですよね〜

「えっ、そうなんですか?」

なるほど、著者やデザイナーにはこの時間があることすら伝えられていないのか。同盟恐ろしいわ。でも、だとすれば…

理事長からのインサイダー情報を手にした僕は、当初の想定以上の気合でスピーチづくりに取りかかった。そして、頓挫した。

経歴がやっぱりペラペラじゃー!

最初は自らのプロフィール、特に出版にまつわる部分を抜き出した。そして、最後に「自らが誇れる一冊をつくろう」という大テーマを添えて完成させた。
が、これはあまり面白くなかった。ベタではある。ハズレではない。でも、あまり面白くない…。

何より、これを読んだだけでは「お前は何をしたいんだ?」ということが伝わらなかった。こういう僕だからこそ、NovelJamでできることがある…いや、あるのだろうか…?

周囲の情報も観察する。プロ編集者もいるが、意外と前回大会の参加者もいた。特に、著者からのスライド組は僕含めて3人もいた。昨年もランディングページをあっという間につくってしまう仕事の早い小野寺ひかりさんと、セルフパブリッシング界の先輩である米田淳一さんだった。
特にマークしたのが米田氏だった。セルパブ組と丸顔のメガネという大きな共通項がある以上、米田氏とは異なるポジショニングで僕自身をアピール必要がある。
Twitterを眺める。むむっ、やはり米田氏も経歴を全面に押し出してくる模様。特に作家としての経歴、そしてセルパブでも遺憾なく発揮される文字生産能力を強調するかもしれん…。こりゃ、自分は敵わないわ…。「セルパブしてます」だけではダメですわ…。
はあ、どうしましょう。

僕は普段、サラリーマンをしている。この日はデスクワークから抜け出し、講演会を聞きに行った。この方の話を(会社の金で)直接聴けるだなんて…。珍しくサラリーマンをしていることを喜んだ。

講演者は中竹竜二氏。早稲田大学ラグビー部の元監督で、現在は日本ラグビー協会のコーチングディレクターをしている。いわゆる、コーチのコーチだ。

僕が通っていた大学も、一度だけ当時の早大ラグビー部と公式戦で対戦したことがある。五郎丸歩や畠山健介がいたチームだ。そんなスター性を抜きにしても、コテンパンにやられた。歯が立たなかった。
どうやったらこんな強いチームができるんだ? 中竹氏が本を出すというニュースが流れた。タイトルは「監督に期待するな」。貪るように読んだ。そんな大学終わりから社会人の始まりにかけて、氏の著作は出るたびに買っていた。

そんな中竹氏を間近で見て、お話を聞くことができた。現役時代、3年間公式戦に一度も出たことがないのに、早大ラグビー部のキャプテンになったこと。コーチの経験が無いのに、早大の監督になったこと。そして、コーチとして経験が浅いのに、コーチを指導する先生の立場になったこと…。
本で読んだエピソードは懐かしく、最近の話は新しく。とにかく、共感できる話が多かった。

「コーチとして大事なことは、自分に合ったスタイルでリーダーシップを築くことです。そして、自分や他者に対して正直であることです。不完全なことやわからないことに対して、素直に対峙できるようにしましょう」

そんな一言で、この講演は拍手で締めくくられた。

いやー、良かったなあ。良い話だなあ。久々に氏の著作を読んでみるか…。

んっ?
この考えって、ひょっとしたら活かせるんじゃないか?

話を再び、八王子市の某所へと戻そう。

編集者のスピーチ大会は、そろそろ僕の番である。
危惧していたネタ被りは無さそうだ。いや、このスタイルで挑むのは僕だけだ。

壇上に立ち、パワーポイントの準備をする。紺色のタイトルバックは無事に映った。タイム係にアイコンタクトを送り、淡々と話を始めることにした。

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本連載をより楽しむには、下記の2冊を合わせて読むと更に楽しいです。

◆平成最後の1日を、逃げる二人の行く末は? アラサー女子が織り成す優しいロードノベル/新城カズマ賞受賞
藤崎いちか著「平成最後の逃避行」
https://uwabamic.wixsite.com/heiseisaigo

◇怪獣が現実に現れるようになった平成を舞台にした、生きる意味と恋を巡る青春ビルドゥングスロマン!!/海猫沢めろん賞受賞
腐ってもみかん著「怪獣アドレッセント」
https://uwabamic.wixsite.com/kaiju

【次回予告】なんとまさかの自己紹介スピーチ全文掲載!&そのスピーチに隠された僕の意図とは? お楽しみに!?

第4話はコチラ

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和良 拓馬
どうもです。このサポートの力を僕の馬券術でウン倍にしてやるぜ(してやるとは言っていない)