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「信長のリモート・武将通信録」シナリオ1「本能寺のZOOM」脚本

「信長のリモート・武将通信録」シナリオ1「本能寺の ZOOM」

  これはあくまで読み物です。上演を希望される方は、必ず事前に許可をお願いします。

 連絡は

 warrino_naikaku_u@yahoo.co.jp  まで

作・演出 高間響

時は1582年6月2日深夜。この時代にはZOOMが存在しこの物語は、全てZOOM画面で行われている


登場人物
同じ人物が複数の呼び名で言われるためややこしいため、通称や官職名も記載。さらに舞台上はすべて、ZOOM の画面上で行われますが、それぞれの登場人物はその ZOOM をインストールしているパソコン及びスマホを持って、それぞれの場所にいるため、各登場人物が物語の最初、6月2日深夜時点でどこの場所にいるかも明記します
誰が主役ということはないため登場順に記載

ナレーター 

矢部家定(善七郎)(27)信長の小姓衆次席。織田家リモート奉行淡路国にて四国方面軍の補給を担当 

丹羽長秀(五郎左衛門)(48)近江佐和山城主及び若狭一国領主。織田家宿老次席。四国方面軍補佐。和泉岸和田にて四国遠征の準備中 

柴田勝家(権六)(62) 越前一国、北ノ庄城主。織田家宿老筆頭。北陸方面軍軍団長。越中魚津城にて上杉勢と交戦中 

滝川一益(彦右衛門)(57)伊勢長島城主及び上野一国及び信濃小県郡・佐久郡領主。織田家宿老。関東方面軍軍団長。上野厩橋城にて在城中 

明智光秀(十兵衛・惟任日向守)(55)近江坂本城及び丹波一国領主。織田家宿老。近畿方面軍軍団長。秀吉への援軍に居城を出発中 

織田信長(お館様)(49)織田家当主。京・本能寺にて宿泊中

羽柴秀吉(藤吉郎・筑前守)(46)近江長浜城、及び播磨一国領主。織田家宿老。中国方面軍軍団長。備中高松城にて毛利勢と交戦中 

ルイスフロイス(51)ポルトガル人宣教師。京に在中 

吉田兼見(48)公家・吉田神社神主。京の吉田邸に在宅 

織田長益(のちの有楽斎)(36)。信長の弟。京・二条城に在城中 

三法師(3) 信長の嫡男 信忠の嫡男  京・妙覚寺に滞在中

徳川家康(三河守)(41)。信長の同盟相手。三河・遠江・駿河の領主家臣団とともに堺にて遊興中 

北畠信意(のちの織田信雄)(25)信長の次男。伊勢松ヶ島城主。安土城に在城中 

帰蝶1(48)信長の正室。岐阜城に在城中 

帰蝶2(48)帰蝶1とは別な役者が演じる

お市の方(36)信長の妹。元浅井長政室。伊賀上野城に在城中 

森長可(武蔵)(25)織田家臣。信濃海津城主。信濃から越後上杉攻めの行軍中 

前田利家(又左衛門)(44)織田家臣。能登七尾城主。越中魚津城にて上杉勢と交戦中 

筒井順慶(34)織田家臣。大和筒井城主。筒井城在城中 

長岡藤孝(幽斎 のちの細川幽斎)(49) 織田家臣。丹後宮津城主。宮津城在城中 

池田恒興(勝三郎)(47)織田家臣。信長の乳兄弟。摂津有岡城主。有岡城在城中 

古田重照(織部)(40) 摂津茨城城主中川清秀付織田家臣。茶人。茨城城在城中 

前田利益(慶次郎)(41)滝川一益甥。前田利家の義理の甥。上野にて滝川軍に従軍中 

ねね(36)羽柴秀吉正室。長浜城に在城中

星野源(39) 歌手・俳優

森蘭丸の(声のみ) (16) 信長の小姓

ナレ 時は天正十年(1582年)6月2日深夜。この世界は現実の安土桃山時代の歴史とほぼ一緒ではある。ただ一つ違うのは、この世界にはインターネットがあり、武将たちは日々ZOOM を使い、リモートで軍議が行なわれているということであった

織田家リモート奉行である矢部家定が、今晩の ZOOM のホストとして画面上で一人待機している

丹羽 あ、あ、聞こえますか
矢部 丹羽様、お疲れ様です
丹羽 うむ、善七郎。今はどこにおる
矢部 淡路島にて四国攻めの補給の算段を
丹羽 そうか、それは世話になるのう
矢部 はい
丹羽 しかし、ZOOM のホストに加えて、奉行もとは忙しいことじゃのう
矢部 いえ、それがしの役目でございますから
丹羽 うむ、しかし便利な世の中になったものだの。こうして遠方にいて会わずに、軍議を出来るのだから
矢部 (不満そうに)そうでございますな
丹羽 なんじゃ、不満か
矢部 やはり、私はお館様のお側に仕えとうございますので
丹羽 そうか
矢部 今回の京での滞在も、同行できず悔しく思っております
丹羽 補給も大事な仕事じゃぞ
矢部 されど、その、やはりお側で
丹羽 ・・蘭丸に焼いておるか
矢部 そ、そういうわけでは
丹羽 声が、うわずっているぞ
矢部 ・・最近お館様のお伴は蘭丸ばかり、奉行としての席次はそれがしの方が上なのに、お館様はそれがしに飽きたのでしょうか
丹羽 そうは限らんとは思うぞ
矢部 どういう意味ですか
丹羽 お館様はな、ある程度寵愛した小姓は、いつまでも相手にせず次の働き場所を用意してやるのだ。お主も能力を認められたからこそ、側を離れさせたのではないか
矢部 そうなのですかね
丹羽 わしは、男色は好かぬ。おぬしが枕だけで成り上がったのなら評価はせぬ
矢部 かたじけない
丹羽 さよう、世の者は恐ろしいお人だと思っているかもしれぬが、身内には甘いし、何度裏切られても許すし、意外と伝統は大事にするし、根は優しいお方じゃ。
矢部  確かに
丹羽 わしから言わせれば、明智殿や筑前の方がよほど残酷じゃ
矢部 羽柴様はお優しい方に見えますか
丹羽 あやつは人当たりが良いからそう見えるだけじゃ、根は残酷な男じゃぞ。いわば、笑いながら怒る人だ
矢部 はあ
丹羽 明智殿など言うまでもない、優しいお館さまは渋っていたのに、ノリノリで延暦寺も焼き討ちするわ、領地の横領はしまくるわ、アメリカに逆らってゴジラを冷凍しようとするわ
矢部  なるほど
丹羽 とにかくじゃ、おぬしが側から離してることこそ、お館様の愛情であると思って

柴田 割り込んでくる

柴田 善七郎。ご苦労
矢部 これは柴田様
柴田 なんじゃ、愛だの何だの何の話をしておった
矢部 それは
丹羽 柴田様にはわからぬことです
柴田 何じゃ、わしだって恋バナくらいできるぞ
丹羽 好きな女子にまともに喋れぬ男が何を言っておるのです
柴田 何じゃと

滝川 入ってくる 斜め45度で映っている

滝川 こんばんは、滝川左近将監です
矢部 滝川様、お疲れ様です
滝川 善七郎、いつもすまぬの
柴田 彦右衛門、しっかり正面を見ろ
滝川 何となく恥ずかしくてのう
丹羽 滝川殿は相変わらず斜め45度でござるな
滝川 では、皆様。早速、最近手に入れた茶器を見ていただこうと
柴田 何、言ってんだお前
滝川 は?今宵はリモート茶会ではないのですか
矢部 滝川様。今宵はリモート軍議でござる
滝川 何と茶会ではないのですか
丹羽 滝川殿は本当に茶会が好きですなあ
滝川 せっかく皆様に関東流のお・も・て・な・しをしようと思ったのに
柴田 何がおもてなしだよ。こんなクソ暑い時期に、まともにおもてなしなんかできるかよ

明智 入ってくる

明智 あ、あ、あ
矢部 明智様。お疲れ様です
明智 ああ
滝川 日向守殿、お顔がすぐれぬようですが
明智 そうですか
丹羽 だいぶお暗いようですが
明智 いや、外だからでしょう。 羽柴殿への援軍で備中に向かう最中ゆえ
矢部 ご苦労様です
明智 ですので、報告終わり次第早めに回線は切らせていただきます
矢部 お館様入場です。

信長 入る
全員、頭を下げる

信長 苦しゅうない、表をあげい
全員 はは〜
信長 全員、揃っておるか
矢部 羽柴様がまだ
信長 サルめ。時間を守らぬとは
柴田 お館様、藤吉郎は増長しておるのです。しっかりと喝を入れてくだされ
信長 権六、家臣同士で足を引っ張り合うな
柴田 しかし
信長 みんな仲良く、仲良きことは美しきかなじゃぞ
柴田 はは
信長 五郎左、先ほど大阪にいる信澄からお主が昼過ぎに出かけたという
LINE が来たが、今宵はどこにおる
丹羽 蜂屋兵庫頭殿に招かれ岸和田に滞在しておりまする。大阪には明日帰ります
信長 信孝も一緒か
丹羽 はい
信孝 うまくやっておるか
丹羽 それはもう
信長 頼むぞ
明智 お館様は今宵はどこにお泊まりで
信長 今宵は本能寺に泊まっておる
明智 本能寺でございますか。手勢はいかほど
信長 100ほどかな
明智 なるほど・・・100ですか
丹羽 恐れながら、警備が軽すぎではございませぬか
信長 そうかのう
滝川 そうですよ。いくら本能寺が寺にしてはちょっとした城壁があるとはいえ、所詮は寺。城のように防御はできませぬ。
柴田 まあ、あんな壁じゃ10m 級の巨人が来たら突破されちゃうな
滝川 せめて二条城に入ってくだされ
信長 だが、二条城は wifi が弱いからのう
丹羽 しかし、もし今襲われたら
信長 誰が襲うというのじゃ。今京で軍勢を率いているなど、妙覚寺に泊まっている信忠だけじゃ。信忠がわしを襲うか?
滝川 まあ、確かにそれもそうですな

秀吉 入ってくる

秀吉 遅なりました
柴田 藤吉郎、遅い
秀吉 いやあ、先ほど、お館様からの伝令である堀久太郎がちょうどいりゃあしたところだで、労をねぎらっとったらすっかり盛り上がってしまったんだがね
信長 で、あるか
秀吉 しかし、久太郎はえらい男だがね、本当にいろんなことが得意だで、さすが名人久太郎と呼ばれるだけあって、お館様が目をかけた若者は皆才がありゃーすなあ。
信長 で、あるか
秀吉 いやメール、ZOOM の時代であっても伝令は直接面会に限るがあ
丹羽 筑前、しゃべりすぎだ
秀吉 ああ、丹羽様。こりゃあ、失礼しました。じゃあ始めよまい
矢部 では、これより天正10年第6回、織田家オンライン軍議を始めたいと思います。今日からわかりやすいように、皆さんの共有画面に地図を表示させていただきます

(これ以後、わかりやすいように地理の話題が出るたびに地図を表示する)
信長の野望風の城に家紋と各自の顔写真を載せる

柴田 おお、これはわかりやすい
滝川 「新しい地図」の始まりでござるな
矢部 飯島マネージャーのおかげです
信長 で、あるか
矢部 それでは各、方面軍の皆様ご報告お願いします。まず北陸方面軍の柴田様から
柴田 は、引き続き、魚津城を攻めておりますが、ちょうどただ今、佐々成政、前田又左衛門の両名、総攻撃を加えている最中にて、もはや落城は時間の問題かと
信長 で、あるか
秀吉 落城はええけど、上杉方の諸将はどうなさるおつもりで
柴田 降伏は許すつもりはない。皆自刃してもらう
秀吉 柴田様、言いにくうことでぃやーございますが、力攻めをしすぎではございませぬか
柴田 何が言いたい?
秀吉 わしが三木城や、鳥取城でやったようにのんびり攻めりゃあ敵も味方の損害も少ないで残酷じゃねえと言うとるんです
柴田 ふん、味方はともかく、敵を飢えさせる方がよほど残酷だと思うがの
秀吉 ほうだがねえ
柴田 さよう、たとえ飢えなくても、人間ずっとステイキャッスルなんてしていたら気が狂うてしまうわ
秀吉 そりゃあ、柴田様が長年対峙してきた一向宗でありゃあ、死なにゃー 限り信仰を捨てにゃーだもんで皆殺しでも致し方にゃーことでございますが、上杉勢は所詮武士だがね。降伏を許せばしたごうのではございませぬか
柴田 甘い、上杉勢は謙信以来不屈の闘志を持った武士じゃ。お主も亡き謙信の神がかり業は知っておろう
秀吉 確かに、ぶどう酒や肉の味を必ず当てる一流戦国大名でしたからねえ
柴田 そうじゃ、わしなどスニーカーの紐の回答を間違えてこんな風に(一旦画面から出て)映す価値なしになってしまったのに(画面に戻って)、あやつは60問連続正解じゃぞ。お主が相手にしている軟弱な中国勢とは違う
秀吉 中国勢とて弱くはありゃあせん
信長 そこまでじゃ、サルよ。家臣同士で争うでない
秀吉 ははっ
信長 はい、じゃあ権六も仲直り
柴田 はは
秀吉 はは
矢部  それでは関東軍の、滝川殿、お願いいたします
滝川 はは、こちら関東の統治ですが現在私は上野・厩橋城に入りまして、関東の諸将に織田家の傘下に入るよう交渉しております。小田原の北条氏政とは協力関係を取り付け、常陸の佐竹や陸奥の伊達も我らとよしみを通じたい旨伝えてきておりまする。信濃の旧・武田家臣の中では、真田安房守、出浦主水佐などが恭順の意思を示してきました。
信長 で、あるか
滝川 また、関東は未だに関所が多く、商人が商いをする妨げになっております。通行手形を必要とする場所も多いのです
丹羽 通行手形とは
滝川 これです(マスクを見せる)、これをしてないと往来中に怒られるとか
柴田 こんなものが手形になるとは不思議なご時世じゃ
信長 上杉攻めはどうなっておる
滝川 はい、準備整い次第、柴田様を助けるため、三国峠を超え、越後に入る予定でございます
信長 で、あるか
柴田 彦右衛門、かたじけない
秀吉 滝川殿?本当に大丈夫でかね
滝川 なんじゃ、筑前。文句があるのか
秀吉 いえそれがし風の噂で耳にしたとですが、どうも関東軍は勝手に列車を爆破したり、生物兵器を作っとるのではないかっちゅう話を聞きまして
滝川 そんなことはしとらん
柴田 藤吉郎、いちいち失礼であろう
秀吉 されど
信長 サル、いかんぞ。ほら仲直り
秀吉 はは
矢部 では、丹羽様。お願いします
丹羽 はは、信孝様と四国へ渡り長宗我部元親を打つべく準備中です。すでに先方の三好笑岩殿は、阿波の勝瑞城に入りまして長宗我部軍と交戦中。我々も間も無く渡海いたします
信長 で、あるか
明智 お館様
信長 なんじゃ
明智 恐れながら、四国攻めの議、誠にお考え直し遊ばせないのでしょうか
信長 しつこい、金柑頭

(PC画面をを叩く)

明智  痛っっ!(叩かれたような演技をする)
秀吉  いや、当たっとらん当たっとらん実際には
丹羽 お館さま、そうやっていつも画面を叩くからすぐ壊れるんです
信長 で、あるか
丹羽 すぐに物に当たりすぎです
信長 すまぬ。十兵衛、申せ
明智 はい、長宗我部に対して、四国のことは切り取り次第と約束し、元親殿の嫡男信親殿の烏帽子親にまでなったのはお館様ではございませぬか?それを今更裏切って、対立する三好笑岩殿に肩入れし攻め込むなど、道理から外れまする
秀吉 それは単に明智殿の面目が立たにゃだけではございませぬか
明智 何?
秀吉 明智殿が取り次いだ長宗我部と断交し、わしが取り次いだ三好殿と結んだことに焼いとられるのじゃにゃーですか

光秀、屈辱にまみれた顔になる

柴田 藤吉郎。言い過ぎじゃ
秀吉 事実ではありゃせんか
丹羽 いや、言い過ぎじゃ、明智殿のお気持ちも考えよ
秀吉 ・・失礼しました
信長 十兵衛、わしも長宗我部が讃岐や阿波から完全に撤退するのであれば、土佐一国のみは安堵するつもりはある。五郎左、攻め込むとその交渉も同時にせよ
丹羽 かしこまってござる
信長 これにて四国のことは終わりじゃ

光秀、不満そうな顔

矢部 では、明智様、ご報告を
明智 先ほど、羽柴殿の援軍に我が居城丹波亀山城を出発し行軍中でござる
秀吉 かたじけない
明智 先を急ぎたいのでこれにて退出して構いませぬか
矢部 お館様
信長 構わぬ、十兵衛、サルをよう助けてやってくれ
明智 はは
秀吉 明智殿、山陽自動車道でいりゃあすなら備前サービスエリアで検温があるもんで気をつけてくだされ
柴田 何ゆえ、検温などしているのだ
秀吉 流行り病にかかっとるものを備前に入れたにゃあようでして、備前の問屋天満屋の主人が提案したんですが、「岡山に来たことを後悔させてやる」とか言っとる。商人(あきんど)のくせにおもてなしの心がにゃーようです
滝川 おもてなしの心がないのは良くないな
丹羽 流行り病の影響がそこまで来ておるのか
柴田 困ったものじゃのう
秀吉 まあでも困ったことばかりではござりゃあせんよ。この流行り病で困窮した百姓も多いだろうで、流行が終わったら、え?こんな子がなんて美しい娘が遊郭に売られてくるでしょうからねえ。わしはそれが楽しみで楽しみで
矢部 羽柴様やめてください。ひどい失言ですよ。そういう身内のノリは、ZOOM だからまだしも、ラジオだったら大失言ですよ
秀吉 おお、ほやね
信長 はっはっは、サルよ。矢部っちに説教されるとは情けないのう
秀吉 申し訳ございませぬ
明智 しからばごめん

光秀、返事をせずに退出する

矢部 では、羽柴殿、お願いします
秀吉 はい、私は今、毛利方の備中高松城守清水宗治を水攻めにしとる最中でござる
柴田 なんじゃ、水をかけて攻めるとは、その清水という男はジャミラか
秀吉 違います。高松城は沼地にあるもんで攻めづらい城でしたが、我が軍師、黒田官兵衛がそれを逆手に取り、城の周りに堤防を築き、この梅雨時の雨水がその堤防の中に入るようにし、城の周りを水没させ孤立させるちゅう策でござる。
丹羽 それはすごい策じゃ
秀吉 官兵衛は毎年ひらパー兄さんとしてプールを設営しとりますからな。水攻めはお手の物です
信長 で、あるか
秀吉 おかげで毛利方の援軍も城に近づけんもんで、高松城は孤立。場内にはなった間者の報告によりますと兵糧も残りわずかちゅうことでござる
柴田 そんな作戦は金がかかりすぎる
秀吉 柴田様も後輩の金持ち巡査に頼めばええでねえですか
柴田 中川〜ってそりゃワシとは別人じゃ
信長 では、それからどうする
秀吉 ははそれも心・配・ご・無・用、毛利方の使者、安国寺恵瓊と交渉中でございますが、備中、備後、美作、伯耆、出雲5カ国の割譲を条件に和睦の交渉をしとります
信長 ならぬ、石見まで加え6カ国割譲とせよ
秀吉 石見まででございますか?
信長 今の丹波と近江坂本に代わって、十兵衛には出雲と石見を与えたいと思っておる。
秀吉 2カ国もですか?
信長 あやつは今まで本当にわしに尽くしてくれた。出雲・石見のような大国、2カ国与えても決してあげすぎではなかろう
丹羽 ああ、明智殿。退出してなければ喜んだだろうに
滝川 聞かせてあげたかったですな
秀吉 しかし、5カ国に加え、銀山がある石見まで割譲せよとなると、毛利方が納得しかよるかどうか
信長 それをなんとかせよ
秀吉 では、前々からお願いしとった通り、お館さま自らご出陣いただけにゃーでしょうか
信長 わしに備中まで来いと申すか
秀吉 お願いいたしまする
信長 ・・よかろう。軍勢を整え、十兵衛の後を追う
秀吉 ありがたき幸せ
柴田 お館さま、藤吉郎を甘やかしすぎです。高松城は落城寸前ではございませぬか
信長 せっかく備中まで行くのだ。何も毛利だけを落とすわけではない、ついでに九州まで足を延ばす
丹羽 九州までですか
信長 そうじゃ、サル、なぜお主を筑前守にしたかはわかっておるな
秀吉 もちろんでございまする
信長 九州勢との交渉はどうだ
秀吉 はは、すでに大友、島津、龍造寺らとも交渉をしとります。一気に平定するのも容易いかと
信長 まあ九州は民家にロケットランチャーがあるような修羅の国だ。十分に気をつけよ
秀吉 かしこまりました
柴田 ならば筑前、頼んだぞ
信長 何を言っておる。権六、お主もさっさと上杉を片付け、九州には同行するのじゃ
柴田 それがしもですか
信長 左様、お主は学がないからの。薩摩にはザビエルが作ったラサールという学校があるらしいから、そこで学び直せ
柴田 ははあ

和やかな雰囲気

滝川 いやいや、ならばそれがしが関東東北勢を恭順させ、柴田殿が上杉、丹羽殿が長宗我部を倒せば、もうこれ、一気に日ノ本統一ではございませぬか信長 そうなるの
滝川 いやいや、これでやっとのんびり茶器集めができまする
柴田 彦右衛門はそればかりじゃのう
滝川 いや、私も歳ですから。そろそろ隠居してのんびりしたいですよ
信長 そうだな。わしも人からは破壊王などと呼ばれたが、いよいよ天下布武となると
柴田 となると?
信長 時は来たっ それだけだっ

滝川 吹き出す

柴田 おい、彦右衛門、失礼だろう
滝川 いやいやつい
秀吉 赤コーナーより破壊王、織田信長の~入場ですっ

秀吉ちょうしに乗って爆勝宣言を口ずさみ
丹羽以外嬉しそうに橋本コールのように信長コールをする

丹羽  (信長コール二回目)やっぱZOOMで音楽のセッションは無理だな…ちょちょちょちょっと待ってください
信長 どうした五郎左
丹羽 お館さま、なんか聞き取りづらくはございませぬか
信長 ん?電波が悪いか
丹羽 いえ、そのそちらの方が騒がしくありませんか
信長 確かに。(画面外に)おい、お蘭、何ぞあったかみてこい
滝川 何かあったんですかね
信長 まあ、大方、兵どもがケンカでもしてるのだろう
秀吉 なんとお館様をお守りする者でありながらケンカとは
信長 まあまあ、そう怒るな

信長の後ろの画面、火が燃え出す

丹羽 お、お館さま、後ろ、後ろ
信長 なんじゃ
矢部 後ろみてください
信長 だからなんじゃ、
柴田 火、火が出てます
信長 え、まじで?わ、熱っ
丹羽 どういうことですか
信長 いや知らんよ
秀吉 どう見ても火事だがん
信長 まあボヤだろボヤ
柴田 本能寺燃え尽きちゃったらどうするんですか
信長 まあ、そうなったら、河原町御池あたりに建て直すよ
矢部 そういう意味じゃなくてですね
信長 じゃあ、ついでにホテルにしよう。とまりやすくなるぞ
丹羽 これ以上ホテル作ってどうするんですか。ただでさえ流行り病で、上洛するバテレンが減ってるのに
蘭丸の声  お館さま
信長 お蘭、どうだった。火事か?
蘭丸の声  それが・・敵襲でござる。
柴田 えっっ!?
丹羽 敵襲!?
滝川 えっっ!?
矢部  えっっ!?
羽柴 ほんまか!?
蘭丸の声  何者かが火を放った模様です
矢部 一体誰が

信長 ・・・信忠か

滝川 そんなまさか、信忠様の様な忠義者が父親を襲うわけはございませぬ
信長 ほな信忠ちゃうか、あいつは律儀者だから信忠ちゃうか
秀吉 しかし、今近くに軍勢を率いとるといえば
信長 ほな、信忠やないか。妙覚寺に泊まってる信忠やないか
滝川 しかし動機がございません。謀反など起こさずともすでに家督は信忠さまに譲っているではございませぬか
信長 ほな、信忠ちゃうか。信忠以外に継がせる気ないし、信忠ちゃうか
秀吉 しかし家督を譲られたちゅうても、実権を握っとるのはお館様、それに不満を持っとらんとも限らにゃーで
信長 ほな信忠やないか、実権まで取りたいんやったら信忠やないか
滝川 されど、確か今信忠様はご嫡男の三法師様も一緒に連れてきているはず。もともと、謀反を狙っていたのならば、むざむざ戦場になる京に三法師様を連れてくることはないのではありませぬか
信長 ほな、信忠ちゃうか。愛する息子を戦場には連れてこないやろうし信忠ちゃうか
秀吉 しかし、お館さまが本能寺に泊まるちゅうのは急遽決まったことではござらんか。であれば、信忠さまが謀反を決意したのも直前。三法師さまを安全な場所に返す暇がなかったとしても不思議ではにゃあがあ
信長 ほな、信忠やないか。確かに急遽決まった予定やし信忠やないか
蘭丸の声  お館さま。敵の旗印が見えました。桔梗の紋でございます
信長 ほな信忠ちゃうか、あいつやったら織田家の家紋の木瓜紋だから、信忠ちゃうか
丹羽 ちょっと待ってください。桔梗の紋ということは敵は
蘭丸の声  はい、敵は惟任日向守
全員 え?
信長 まさか、十兵衛が、わしを襲っているだと
蘭丸の声  さよう
信長 信じぬ、たとえ我が息子がわしを襲うことがあっても、十兵衛が裏切るわけがない
蘭丸の声  されど
信長 お蘭、もう一度見てこい

柴田 ど、どういうことじゃ、明智殿は藤吉郎の救援に向かったのではないのか
丹羽 善七郎。メールじゃ
矢部 え?
丹羽 もう一度、明智殿に ZOOM の招待を送るのじゃ
矢部 はは

信長 いかがじゃ
矢部 ・・応答・・しません

秀吉 お館さま、お逃げになりゃあ
柴田 そうです。とにかく脱出を
滝川 そうです。珍しい茶器とかあると思いますけど全部置いて
信長 ・・ぜひに及ばず
矢部 お、お館さま
信長 信忠ならともかく、十兵衛がわしを取り逃がすなどありえぬ。すでに蟻一つ逃さぬほど、この本能寺を囲んでおろう。脱出は不可能じゃ
秀吉 ほんでも
信長 これより敦盛をやる
柴田 そんな、今ゲームなんかしてる場合ですか
信長 集まれ動物の森ではない。敦盛じゃ
矢部 お館さま
信長 (報道ステーション風に)敦盛!
丹羽 お館さま、それも違いまする
信長 ん?じゃあ、(ソフトバンク松田の)熱男〜〜
丹羽 遠ざかりました
信長 わかっておる。わしもテンパっとるんじゃ
滝川 お館様
信長 人生最後の舞じゃ、今ちょうど一緒に踊るのにいい動画があるの

星野源のうちで踊ろうとコラボをする信長

信長 人間五十年、下天のうちをくらぶれば、夢幻の如くなり!
丹羽 ・・・おやかたさま、絶望的にコラボになっておりませぬ

        家臣団、必死にワーワー逃げてー逃げてーという 星野源は歌う

信長 ひとたび生を得て 滅せぬもののあるべきか。滅せぬもののーあるべーきかー
矢部 お館さまー

信長の通信が切れる 星野源も退出する

柴田 ・・切れた

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