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初めてつけられたキスマークは首筋だった。

どうやっても隠せない位置だったが、
幸いにも現在はGWのど真ん中。
上司と2人で働く翌日を除いては
しばらくお休みである。

翌日を乗り切れば隠し切れると思った僕は
熟考の末、小さな絆創膏を貼って勤務先へ向かった。

オフィスのドアを開けると
出会い頭、3秒も経たない内に上司が気づいて
「首元の絆創膏はキスマークでもつけられたの?」とピンポイントに話を振ってきた。

「........。」
「虫に刺されたの?」
「ム、ムシニササレマシタ。」
「そういうことにしておいてあげよう。」

上司は猫のように几帳面だ。
メールの誤字を見つけるのはお手の物である。

『社交性皆無』と自分で言ってしまう人なのでたまにぶっきらぼうな言葉を投げつけられて苛ついたりもするのだが、頭の回転が非常に速く、1兆円規模の障害が起きた時も落ち着いていた。目上の人の懐に入るのがとても上手なので尊敬している。

目を細めて笑う顔は本物の猫そっくりで、
お昼休みは猫のように丸まって眠る。

他の上司からナイーブと称される声は
ちゃんと話しているのに角がないように聞こえ、
「にゃぁぁ...」と低めの音を出すアイツの腑抜けた声とよく似ていた。

先日、働いていると上司が僕に同意を求めてきた。

「◯◯さんって動物に例えたらリスだよね?」

小動物みたいな動きをする後輩を見て、動物で例えるなら絶対にリス!と前々から思っていたらしい。

「後輩もですけど...」
「何年も前から思っていましたが上司も猫そっくりですよ。警戒心強いところとか」。

そう言われた上司は「藤原はなんだろうな〜」


「うーん....ぱっと思い浮かばないや」と悔しそうな表情を浮かべた。

自分では狼だと思っている。
群れから外れた一匹狼。
一匹狼はじつは孤独を好んでいるわけじゃないと何かの記事で読んだ。

牙もついているしね。

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