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【ぶんぶくちゃいな】習近平版「南巡講話」に見る威勢と虚勢

10月12日午前、ネットで2日後に予定されていた、林鄭月娥/香港行政長官による4回目の「施政報告」の内容についての予想論評を読んだばかりのところに、突然「施政報告延期」のニュースが流れてきた。

林鄭長官は延期を告げる記者会見で、この日の朝に新華社が発表した習近平・国家主席の南方視察スケジュール、そして14日に行われる「深セン経済特別区設立40週年記念式典」出席に触れ、施政報告発表がこの式典と重なること、そして林鄭長官ら香港政府高官の元に直前の週末になって同式典への出席招待が届いたことを理由としてあげた。

中央政府主導の中国国内の式典のために、香港の重要な行政スケジュールが道を譲る――昨今の香港市民にとってあまり気持ちの良い話ではない。だが、隣の深センのここ40年の成果における香港の役割は無視できないほど重要であり、行政長官らが出席するのはある意味当然だとも納得できた。

だが、疑問もあった。なぜ、10月14日なのか。40週年を祝うなら、深セン経済特区(以下、深セン特区)の設立日である8月26日に式典が行われるべきだった。この点については、今年は新型コロナウイルス感染拡大という懸案もあり、延期されたのであろう。

しかし、その一方で深センとともに1980年に経済特区に制定された珠海(広東省)、アモイ(福建省)では同様の大規模な祝賀式典は行われていない。特にアモイが経済特区に指定されたのは10月7日で、さらには習近平はかつてアモイ市の副市長を務め、また福建省のトップを務めたという経験を持つのに、である。

明らかにこの「深セン40週年祝賀」には特殊な意味が込められていた。

ならば、その意味とはなにか。

●末席に置かれた香港行政長官

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