マガジンのカバー画像

月刊「読んでみましたアジア本」

日本で出版されたアジア関連書籍の感想。時には映画などの書籍以外の表現方法を取り上げます。わたし自身の中華圏での経験も折り込んでご紹介。2018年までメルマガ「ぶんぶくちゃいな」(…
¥200 / 月
運営しているクリエイター

#香港デモ

【読んでみましたアジア本】どこにでもいるような少年から香港という社会を知る/西谷格『香港少年燃ゆ』(小学館)

【読んでみましたアジア本】どこにでもいるような少年から香港という社会を知る/西谷格『香港少年燃ゆ』(小学館)

「今、日本では香港の話題ってどうなの? 読まれてるの?」

旧暦の正月を東京で過ごした、香港の大学で教鞭を執る友人に訊かれた。

む…さすが元ジャーナリストで、今もジャーナリズムを教えているだけある。単刀直入だ。

「正直、手応えはあんまりなくなってる。香港の話題自体があまり日本人の意識の範囲にない感じがしてる。直接の原因はやはりマスメディアが伝えていないこと。日本のマスメディアのほとんどが香港に

もっとみる

【読んでみましたアジア本】日本と香港の関係史から「香港を知る」/銭俊華『香港と日本――記憶・表象・アイデンティティ』(ちくま新書)

すでに思い出したようにしかニュースには上がってこないが、実際に香港に降り立つと、毎日のように人々の生活が迫ってくる。

評論家たちが語る「香港」も嘘ではないのだろうが、どこか遠い時空の世界のようだ。島国の日本にとって、「海外」は常に海を隔てた向こう側の世界であり、自然のシールドで隔てられている。だから時に妙に神格化とまではいかないものの昇華されていたり、受け取り側の現実によって大きく違う想像が掻き

もっとみる

【読んでみましたアジア本】2021年を前に読んでおきたい、おすすめアジア本

もう今年もあとちょっと。

もうねぇ、今年はどうしたもんかねぇ、愚痴ばっかり出てきますよねぇ。振り返ってみても、ずるずるーずるずるーと見えない力に引っ張られてここまで来た、というモヤモヤ感いっぱいです。

わたしは取材に出かけられないので、取材アイディアが浮かんでも実行に移せない、試作品も作れない、という中途半端な宙ぶらりんな状態が続きました。

そんな中で今年「やったよ!」と言えるのは、2月に白

もっとみる

200714 「現代ビジネス」寄稿:《「中国の香港政策に口出しするな」「植民地時代はもっとヒドかった」のウソ》

昨年以降、香港で起きているさまざまな葛藤を、「内政干渉はいやだから」「それでも祖国だから」「植民地時代が自由だったわけがない」といった独特の理由で拒絶する人たちがいます。

その人たちの多くが、日頃はリベラルな発言をする優等生であることが、そういう発言に同調する人たちを増やしています。だが、優等生にも知識不足や認識不足がある。そんな優等生的な発言にある誤解を解くために書きました。

【読んでみましたアジア本】「わたしは失敗者。でも若者たちは成功した。優秀な新しい世代だ」/李怡『香港はなぜ戦っているのか』(草思社)

【読んでみましたアジア本】「わたしは失敗者。でも若者たちは成功した。優秀な新しい世代だ」/李怡『香港はなぜ戦っているのか』(草思社)

『香港はなぜ戦っているのか』の著者、李怡さんが2022年10月5日、移住先の台湾で亡くなりました。本書は日本ではあまり話題になっていませんが、実際には日本人が香港デモの背景を知る意味でとても重要で、多くの誤解や無知を解いてくれるはずの一冊です。

2020年6月30日。ちょうど北京で開かれている全国人民代表大会(全人代)の常務委員会で、「香港特別行政区国家安全維持法」が可決されるだろうと伝えられる

もっとみる