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月刊「読んでみましたアジア本」

日本で出版されたアジア関連書籍の感想。時には映画などの書籍以外の表現方法を取り上げます。わたし自身の中華圏での経験も折り込んでご紹介。2018年までメルマガ「ぶんぶくちゃいな」(…
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#郝景芳

【読んでみましたアジア本】「絶縁」をキーワードにアジア作家9人が競作/村田沙耶香、アルフィアン・サアット、郝景芳ら『絶縁』(小学館)


いやー、のっけからだが、非常に面白いコンセプトの一冊だった。アジア各地の作家が1つのテーマに沿って書き下ろした作品がまとめられているのだ。

参加した9人のうち、筆者は中国の郝景芳(ハオ・ジンファン)、またこの連作コンセプトの発案者でもあるという韓国のチョン・セランの作品はこの「読んでみました」でもこれまで紹介してきた。その他はアルフィアン・サアット(シンガポール)の名前はどこかで耳にしたことが

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【読んでみましたアジア本】2022年に読んだおすすめアジア本5選

さてさて、年の瀬恒例の「今年のおすすめアジア本」となった。

今年は、コロナの香港パンデミック(運悪く香港入りしていた…汗)や、予想もしなかった上海2カ月ロックダウンという「事実は小説よりも奇なり」を地で行く大事件が続き、今もまたコロナ措置は緩和されたけれども「!!」という状況で、この1年を振り返ろうとしても自分が何を読んできたのか、すっかり思い出せなかった。その分、資料としてたくさんたくさん、コ

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【読んでみましたアジア本】SF本を開いたら、そこには「現実」が広がっていた/郝景芳(ハオ・ジンファン)『人之彼岸(ひとのひがん)』(ハヤカワ・SF・シリーズ)

【読んでみましたアジア本】SF本を開いたら、そこには「現実」が広がっていた/郝景芳(ハオ・ジンファン)『人之彼岸(ひとのひがん)』(ハヤカワ・SF・シリーズ)

2022年5月の最後にこれを書いている。上海はやっと明日6月1日から「通常化の生活」に向けて、9割のロックダウンが解除されるという。

中国が世界に誇る大都市上海でなんと2ヶ月間も続いた「完全ロックダウン」。わたしの知り合いが住む地域は3月初めからすでに団地封鎖が始まっていたので、すでに80日近く封鎖されたままだった。

それは日本の緊急事態宣言の比ではない。人々の外出を禁止すべく、団地に設けられ

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【読んでみましたアジア本】2022年を前に読んでおきたい、おすすめアジア本5選

12月も下旬に入り、あとちょっとで仕事納め、そしてお正月。その前にもし、参考にしていただけるなら、ということで、好例の「今年読んだ本」の振り返り版をお届けする。

今年ご紹介した11冊をピックアップして、ううむ、と気が付いた。たぶん、この「読んでみましたアジア本」を始めてから初めてと言っていいほど、今年は最も国別のバラエティに富んだ1年ではなかったか。特にどうしてもわたしが手を伸ばしてしまう(時に

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【読んでみましたアジア本】中国で「最も恵まれた世代」が直面した社会とは:郝景芳・著/櫻庭ゆみ子・訳『1984年に生まれて』

2016年に『折疊北京』(邦題『折りたたみ北京』)でSF小説界のノーベル賞といわれる「ヒューゴー賞」を受賞した中国の郝景芳(ハオ・ジンファン)の自伝的小説といわれる一冊。

『折りたたみ北京』は、中国出身の米国人作家ケン・リュウがまとめた中国人SF作家アンソロジーで読んだ時、SFといえばSFなんだけど、それよりももっとちょっとセンチメンタルなストーリーがピカイチの作家だなぁ、という印象があった。そ

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