【読んでみましたアジア本】「絶縁」をキーワードにアジア作家9人が競作/村田沙耶香、アルフィアン・サアット、郝景芳ら『絶縁』(小学館)


いやー、のっけからだが、非常に面白いコンセプトの一冊だった。アジア各地の作家が1つのテーマに沿って書き下ろした作品がまとめられているのだ。

参加した9人のうち、筆者は中国の郝景芳(ハオ・ジンファン)、またこの連作コンセプトの発案者でもあるという韓国のチョン・セランの作品はこの「読んでみました」でもこれまで紹介してきた。その他はアルフィアン・サアット(シンガポール)の名前はどこかで耳にしたことがあったという程度。台湾の連明偉もその名前を見たことがあるが、作品を読んだことはなくどんな作家なのかはまったくわかっていなかった。

加えて、ベトナム、香港、チベット、タイ、そして日本の村田沙耶香は完全に初読。それぞれがそれなりにキャリアを持つ作家であることも、この本を味わい深くしている。ただ、決められた「お題」に合わせてちゃちゃっと書いてみた、のではなく、それぞれにそれぞれが持つ文化的キャリアをじっくり滲ませた、読み応えのある作品を献上してくれているからだ。

読者にとっては、この中の知っている作家につられて手にとってみたら、「9倍美味しかった」といえる重厚な読後感を味わえる、大変興味深い作りになっている。

●文字から色が溢れ出るハオ・ジンファン作品

ここから先は

1,989字

¥ 500

このアカウントは、完全フリーランスのライターが運営しています。もし記事が少しでも参考になった、あるいは気に入っていただけたら、下の「サポートをする」から少しだけでもサポートをいただけますと励みになります。サポートはできなくてもSNSでシェアしていただけると嬉しいです。