Happy Halloween 振り返れば奴がいる
おいらは野良。
今日はハロウィンである。まゆみ君と仮装をして近所の家にお菓子を貰いに行くことにした。
おいらはピカソ君にメイクをしてもらった。両目の位置がズレまくったガチャガチャな顔面に仕上がった。まゆみ君はカラヴァッチョ君にメイクをしてもらった。まゆみ君の平たい顔が欧米人よろしく、ハイライトもノーズシャドウも必要ない激しい程の明暗を帯びた顔面に仕上がった。
おいら達はメイクを終えてご対面。互いの顔を見合わせて気絶した。
意識が戻り、気を取り直して、おいらはアルチンボルド君にメイクをしてもらった。おいらの好きな果物や花をリクエストしたのだが、あまりにリアルすぎて、ハエや蜂がたかってきて鬱陶しかった。まゆみ君はダヴィッド君にメイクをしてもらった。まるで磁器のようなスベスベ肌に仕上がった。
おいら達はメイクを終えてご対面。互いの顔を見合わせて気絶した。
意識が戻り、気を取り直してからおいら達はまず、オバケチックな絵画のセカイを探検することにした。
ファン・エイク兄弟君『最後の審判』地獄の底から人間がひしめき合う不気味な音。鼻をつく異臭。阿鼻叫喚の光景が広がっていた。おいらもまゆみ君も悪い事をするのはよそうと心から誓った。
ゴヤ君『我が子を喰らうサトゥルヌス』
とても「トリック・オア・トリート」なんて言える状況ではなかった。
おいらもまゆみ君も命からがら疲れ果てターナー君のいる海に向かった。まるでミストサウナに包まれたような感覚になり、しばし癒された。絵画のセカイも人間ばかり見続けていると疲れることがあるのだが、月や雲をずっと眺めていられるように風景画はおいらのココロを落ち着かせてくれる。
そういえば今日は朝食をとったきりである。腹が減った。おいら達はセザンヌ君には悪いが、ちょいと失敬して2.3個ならバレないだろうと思い、無断で『リンゴとオレンジ』をつまみ食いして逃走した。
さて、これで近所の家をまわってインターホンを鳴らす度胸がついた。
(異様な視線を感じる……)
「……! アンタ誰だにゃ !?」
「Trick or Treat」
振り返ればマセイス君の『醜い老婆』が
おいらの背後に立っていた。どうやらどこかのタイミングでおいらとまゆみ君の後を追って、くっついてきてしまったようである。
おいらとまゆみ君は、醜い老婆を見るが早いか気絶した。
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