見出し画像

目先の利益よりも、長期的な関係づくりを。スキーレンタルビジネスを例に

最近はnoteやTwitterで「PR広報系」と「雪山スノーリゾート系」の発信がこんがらがっていたのですが、いい方法を思いつきました。

スノーリゾートを例に、PRの話をすればいいんじゃん?ていう。我ながら超名案。

「目先の利益を得るために動くのではなく、長期的に見据えて関係づくりをしていきましょう」というPRの超基本のことを今さらなんですが、いい事例が見つかったので書こうと思います。

「PRには時間がかかるので即効薬じゃないんです〜」
「長期的な目線で年間計画を立てて〜」
「KPIは広告換算値や掲載数じゃなくて〜」

とか自分で言っておきながら、徐々に言い訳しているみたいな罪悪感に苛まれる……ことありませんか?私はあります。

そして今まさに、スキー&スノーボードのレンタル業界でこれを考えるべきなような気もするのです。短期的な利益を追いすぎると、やがては市場まるごとぶっ潰れる。レンタル閉店・廃業が続出の未来が見えすぎていてこわい。。

スノーレンタルビジネスを例にPRの話をするので、どっちの人も見ていってくれたらうれしいです。


目先の利益・数字ももちろん大事だけど

最近、ものすごーく丁寧にPRの説明をしたつもりなのに、

「で、サービスの登録者数を増やしたいんです。来月までに○人が目標です。このLPを見てどう思いますか?PRできますか?」

という相談を頂いてしまい、がっかりしました。(すみません)

はじめましての人にお伝えしておくと、私はPR=Public Relationsという、社会との関係づくりによってファンを増やしていく感じのお仕事をやってきました。

上の例ほど極端ではないにしても、PRや広報において「短期的な数値目標」を出されてしまうことはけっこうあります。何がいけないの?と思うかもですが、PRは今すぐに売上を伸ばすとか登録者数を増やすとか、そういったことには不向きです。結果としてそうなることはあっても、直近の数字をKPIとして置いてしまうと、本質を見失った活動になってしまいます。

もちろん数字を伸ばすことも大事ですが、こうしたKPIは「デジタルマーケティング」の領域で置かれるべきこと。私のやっていることとは大きくかけはなれているので、残念ながらお力になれませぬ。

現実的に達成しなければ立ち行かなくなってしまう数値はあるはずなので、経営視点では甘いと言われてしまうかもしれません。それでも、あくまでも私自身は、じっくりと半年後・1年後を見据えて関係づくりをしていくための発想を大切にしています。

最近この発想が大切だと実感した、ひとつの例を出します。


スキー&スノーボードレンタルは超儲かりビジネス

スキー場の近くにあるレンタルショップ、行ったことありますかね?板からウェアまでフル装備をその場で貸してくれて、連泊ならその日数分借りっぱなしにしておくことができますね。

そのレンタルショップを経営視点で考えたことがある人は少ないと思うのですが、実はスキー&スノーボードレンタルというのは超儲かりビジネスです。12〜3月くらいでがっぽり稼いで春〜秋は悠々自適なリゾート暮らし……という人も少なくありません。

往々にして「レンタルビジネス」というのは儲かりますね。先に物品投資して、適切な料金設定で貸していけばすぐに原価は回収でき、そのまま壊れるまでは儲けっぱなし!(そこまで単純ではないと思いますが、、過去に働いていたショップの店長がそんなことを言ってました笑)

スキー&スノーボードレンタルビジネスの仕組みはこうです。

・ギアは安いもので揃えれば一式3〜5万円
・ブランドギアでもせいぜい一式7万円
・ブーツ2万円、ウェア上下セット1万円、小物数千円

これが元手。

・レンタル価格設定は1日5000円くらい
・半日レンタルやセット割りなど適当に設定しておく
・破損紛失の保険料として500〜1000円上乗せする
・これでシーズン中、毎日のように貸し出しを回す

マネタイズはこんな感じ。そしてランニングコストはというと、

・店舗家賃(これはふつうにかかる)
・ギアのメンテ費はシーズン前のワックスくらい
・初心者相手なので高度なメンテは不要
・ウェア等々は乾燥室に放置しておくだけ
・人件費はリゾートバイトや住み込み手伝いを使えば安く済む
・宣伝費・マーケティング費はかけなくても立地的に勝手に来る

こうです。安い。

初期投資とスペースの確保がちょっとたいへんだけど、固定費はそんなにかからない。原価分なんて10人くらいに貸せばすぐに元は取れて、板は数年もつのであとはずっと黒字です。(すごいざっくりですがお許しください)

お客さんにとってはスキー&スノーボードをすること自体が「非日常」なので、多少高く感じても「そういうもの」と思って文句を言われることはありません。さらに、ちょっと危険性が伴うスポーツでもあります。身の安全のためと思えば人はいくらだって払います。

さらに、上手くやれてるレンタルショップはツアー会社と繋がっていて、修学旅行などの団体客の受け入れもしていたり。毎年最低限の売上は確保されているので、よほどのことがなければ食いっぱぐれない仕組みです。

バブル期なんかは超絶おいしいビジネスで、その余韻に浸りつつも今日までうまくやってこれたのがスキー&スノーボードレンタルだと思います。


レンタル業界を食いつぶすかもしれない外資の波

もう少しスキー&スノーボードレンタルの話をします。

先日「外国化したニセコの現状から考えた、日本のスノーリゾートの未来」という記事を書いたところ、読んでくれた方からいろいろな情報をいただきました。

今、レンタル業界にも外資系の店舗が入ってこようとしていて、古くからやっている老舗レンタル店が追い込まれているというのです。

まあ予想できていたことですが、、
外資のレンタルは従来の日本の感覚だと本当に敵いません。適当に選ばれた板をホイホイ貸されるのではなく、きちんと店員さんが接客してその人の求めるギアを貸してくれます。ハイエンドモデルや最新ギアも揃っていて、雪の状況にあわせて板やバインを選べるし、パウダーボードもある。もはやショップ自体がブランド化しています。

全世界的に見ると、これからはスキー&スノーボードをある程度たしなむ人でも、マイギアを買わずにレンタルを選ぶ人が増えるはずです。カーシェアの普及やコリビングの流行を見ているとわかるように、確実に所有→シェアの時代に移ってきているからです。(ちなみに、スノーボードのシェアリングサービスを立ち上げたライダーさんもいましたね)

外資のレンタルは富裕層をターゲットに、潜在化したニーズを汲み取ってうまくやっていますが、日本の既存レンタル店がこういうふうに切り替えるのはスタートアップを立ち上げるレベルで勇気のいる行動です。年配のオーナーさんが多い業界ということもあり、すぐに軌道修正するのは難しいと思います。

引き続き日本人向けに、“今シーズン儲かる”レンタルビジネスを続けていく、、しかしミレニアル世代の価値観はたしかにシェアに移りつつあるし、インバウンド需要に対応できないとやがては市場まるごと潰れます。


レンタル店にも「関係づくり」の発想を

欲張りなので、ここでPRの話を引っ張り出して締めようと思います。

日本のスキー&スノーボードのレンタルショップには、リピーター、ファン、評判、口コミといった発想がほとんどありませんでした。今からでも「世の中やお客さんと関係をつくる」という視点を取り入れたらいいのになと思います。

スキー場に行ったら、目の前にあるレンタルショップに入りますよね?去年行ったショップの名前を覚えていますか?「あそこのレンタルショップはサービスが良いからまた行こう」なんて会話があったでしょうか?

正直、「どこでも同じ」というのがほとんどの人の感想です。

もちろん、常連さんといい関係を築けているショップもあると思います。でも多くのお店は、上手くなれば自分のギアを買い揃えレンタルを卒業してしまうと諦めて、“通過点”として自分たちの存在を割り切ってしまっていた。新しい顧客を釣り続け、今シーズンの売上目標を達成することを第一に考えていたと思います。

今まではそれでもいけましたが、とくに意思なく行われる消費行動というのは、よりよい選択肢が提示されれば一瞬でそちらに流れます。外国からスゴイレンタルショップが入ってきたら、たぶん日本のそれなりにお金持ちの人はそっちを使いますよね。

その場その場では儲かってきたし、ビジネスとしては大成功。しかし長期視点でのコミュニケーションがなかったことで、今、市場まるごと潰れそうな危機に陥っている。。ああ無念。


実は、私がいちばん長く濃くやっていたのは「飲食店」のPRなので、どこか通じるものがあると思っています。小さなお店ほど大事なのは、ファンづくり、関係づくり、イメージ、ブランディング。常に新しさを提供すること。口コミが口コミを呼ぶ情報設計。

こういうことがスノー業界でもできたらいいのになあ、と少し思っています。関係構築の視点、Public Relationsの視点、インストールしていきましょ。

なにか感じてくださったら、Twitterでシェアしていただけると見つけにいきます!Facebookは見つけられなくて悲しいです!ありがとうございます!


さらに書くための書籍代・勉強代に充てさせていただきます。サポートいただけると加速します🚀