【洒落怖漢譯】匠兒(原題:不明)

譯文

昭和之初,匠家有一兒。兒爲五歳,始欲斧鑿。其父是以教之小鋸。兒半晝略知其法,得伐枝條。父不許子之獨身執鋸,而竊刎蜥蜴。父思未知善惡,奪而匣之。他日,父見兒振物,察此猫肢也。傍有其所解之體及大鋏。父甚疑懼,匣百刀而鍵,又藏櫃而封。其翌日,兒爲所剄。

書き下し文と語彙解説

昭和せうわはじめ匠家しやうけ一兒いちじ有り。兒五歳とれば,はじめて斧鑿ふさくを欲す。其の父こゝもつて之に小鋸せうきよをしふ。兒半晝はんちうにしてほゞ其の法を知り,枝條しでうるを。父子の獨身どくしんにして鋸をるを許さず,而れどもひそかに蜥蜴せき𛀁きる。父未だ善惡ぜんあくを知らざるなりと思ひ,奪ひて之をる。他日,父子の物を振るを見る,察するに此れ猫のなり。かたはらに其の解く所のからだ及び大鋏だいけふ有り。父甚だ疑懼ぎくし,百刀ひやくたうを匣れてかぎし,又たくゐかくしてづ。其の翌日,兒くびきる所とる。

○昭和 元號。西暦一九二六年より一九八九年まで。○匠家 大工の家。○半晝 半日。○略 ほゞ。○蜥蜴 トカゲ。○匣 箱に物を入れる。○疑懼 疑ひ恐れる。○剄 首を切り落とす。

各種リンク

參考元:短くて読みやすい怖い話【4】全10話 – 洒落怖 ショートショート の10

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