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やっぱり「2」のほうが好きだけど『ビジョナリー・カンパニーZERO ゼロから事業を生み出し、偉大で永続的な企業になる』も悪くはなかった

『ビジョナリー・カンパニーZERO ゼロから事業を生み出し、偉大で永続的な企業になる』

ビジョナリー・カンパニーシリーズの原点にして最新刊。どういうことかというと、1992年に、ジム・コリンズが著した『ビヨンド・アントレプレナーシップ』に、加筆を行って復刻再出版したものだ、ということらしい。

「ゼロから事業を生み出し、偉大で永続的な企業になる」というサブタイトルは欲張りだ。しかし、どんな偉大な企業にも起業された瞬間があった。たいていの偉大な企業も、最初は零細企業から始まっているのは事実である。

内容的には、これも結局はビジョナリー・カンパニーシリーズなので、似たようなステージの会社を探してきて、偉大になった企業と、滅んだ企業とを比較して、偉大になった企業に共通する特徴をエッセンスとしてまとめたものだ。

ということは、言うまでもないが、

「まず適切なやつをバスに乗せろ、話はそれからだ」

みたいなことは最重要のポイントとして最初に出てくる。あとの、ビジョンがどうしたとか、戦略、規律、イノベーションといったことは、人材がKUSOだと基本的に意味がない

最高の人材を揃えて、会社のために働かせることができたら、あとは自由にやらせとけばなんとでもなるというのは、最近よく聞く話だ。というか、おおかたネットフリックスのやつのせいだと思うが、なんてことはない、リード・ヘイスティングスもジム・コリンズのファンだったようだ。

本書で一つ大事なこと、というか見落としがちなことを学んだとすれば、リーダー自身も成長する必要がある、ということだろう。ジョブズはすげえやつだが、人間としてはわりとKUSOだ、みたいな話は多々見かけたことがあるが、ジョブズはKUSOなところもあったが、ちゃんと経営者として成長したエライやつだ、という話は実はあんまり今まで見てこなかった。伝記みたいなやつをちゃんと読めばどこかに書いてあるのかも知れないが。

なお、偉大な企業を作り上げるリーダーに求めらられる資質というのは、シリーズの中で第5水準のリーダーシップと呼ばれるものである。この辺りは「2」に詳しく書いてある。リーダーシップについてマッチョな勘違いをしている奴は世の中にごろごろいるわけだが、カリスマとかそういうのは実は最高水準のリーダーの資質ではない、という話だ。

教科書的な良い会社の作り方みたいなのは、ビジネス本があふれている昨今、もう概ね正解みたいなのが誰の目にも見えているものなんじゃないかと思う。しかし、実際にそれが難しいのは、もちろん最初の「適切なやつ」探しがめちゃくちゃ困難だということもあるが、どちらかというと、「自分が適切じゃない」という問題がなかなか克服できない、というところにあるんじゃないかと思う。

謙虚さと不屈の精神、正直我々凡人には、かたっぽでもあればいいほうだ。謙虚だが意思が強く、控えめだが大胆、いったいどうすればそんな素晴らしい人物になれるのだろう。まず考えるべきことは、自分はバスに乗る資格があるのか、ということなのだ。

この第5水準のリーダーの話は、とても気に入っている。この話が詳しく書かれているのが「2」なので、結局「2」を推すのはこれが主な理由だ。

我が強く欲が深い経営者は長期的には会社の没落をまねく。謙虚で欲がないのに、組織目標の達成には極めて野心的。謙虚さだけでは語れない面が第5水準のリーダーにはある。そんな傑物はめったにいないし目立たない。どうすればそういった資質を身につけられるのか、それはまだわかっていない。ただ言えることは、組織やチームを率いる者こそ、成長しなければならないということだろう。

もう一つ、『ZERO』で気に入ったポイントを挙げるとすれば、イノベーションやクリエイティブな文化をどうやって作るのか、というところだろうか。言われているのは、実に当たり前のことなのだが、昨今の巨大な組織というのは、どこからどうみても、それとは逆の方向に進化していっているように見える。

デカい組織が、効率を重んじたらどうなるか、官僚制組織になる。簡単に言えば、高度に分業が進んで効率化された組織は変わることに向いていない。みんながみんな日々革新的なことをしていると、業務が回らないわけである。

結局のところ、組織をいい感じに、活力あるダイナミックな感じにしようと思うと、ある程度非効率を許容する必要がある。非効率のデメリットよりも、自由な裁量を与えられたメンバーが生み出すイノベーションからくるメリットのほうがよっぽど大きいからだ。まとめると、そんなような話だった気がする。この視点は、多くの組織に欠けているように思う。

人間はもともとクリエイティブな存在であると自分も思う。ただ、世の中の仕組は、人間がクリエイティビティを自由に発揮することを阻害していることが多い。もちろん、それは秩序というか社会システムを安定的に稼働させるために必要な事なんだろうが、それを当たり前のように感じてしまい、クリエイティブな「特別な」人をもっぱら外に探したりするようになると、もうおしまいである。

大事なことは忘れないようにしたい。このての本を読むといつもそう思うが実戦はとても難しいのである。


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