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思考が起こるのは、脳が座標系内の一ヶ所ずつ活性化して、関連する知識が生み出されるときだ

私はほとんどの場合、バーナード・マラマッドの『フィクサー』に登場する男のように、スピノザの思想にちょっと心地よい共感を覚えていた。そう、その男は、スピノザについて数頁読むや、竜巻に背中を押されるかのように読みつづけた。「・・・・・・すべての言葉を理解したわけではないが、そういう概念をこねまわしているときって、まるで箒にまたがって魔女と空を飛んでいくような感じになるじゃないか」(中略)なぜスピノザは名をなしつつも無名のままだったかをほとんど説明していない。たぶんもっとうまい解釈は、スピノザを理解するのは容易ではないということだろう。その難しさの発端は、勘定に入れるべきスピノザが数人いることだ。私の勘定では最低四人はいる。第一のスピノザは近づきやすいスピノザ。

(※スピノザは)どこにも属していなかったがすべてに属していた↓

あなたが子ども向けの本を書くなら、脳と思い込みについて書くことを考えてほしい。あなたが教育者なら、どうすれば必修科目の一部に脳の理論を組み込めるか問いかけてほしい(中略)良い教育を受ける人は、教育をあまり、またはまったく受けていない人より、財源と医療を利用しやすく、ひいては自分の遺伝子を伝える可能性が高くなる(中略)私たちが知的なのは、ひとつのことを特別にうまくできるからではなく、ほぼどんなことでもやり方を学習できるからだ(中略)情報は「感覚野」経由で新皮質に入り、領域の階層を上がったり下がったりして、最終的に「運動野」に下りるのだと信じられていた。運動野の細胞は筋肉と四肢を動かす脊髄内のニューロンに投射する。現在、この説明は誤解を招くおそれがあるとわかっている(中略)古い脳には頭方位細胞と呼ばれるニューロンがある(中略)古い脳内の格子細胞と場所細胞が追いかけるのはもっぱら体の位置である(中略)脳内で知識は座標系に保存される。座標系は、予測し、計画を立て、動くためにも使われる。思考が起こるのは、脳が座標系内の一ヶ所ずつ活性化して、関連する知識が生み出されるときだ(中略)皮質コラムは、格子細胞と場所細胞に相当する細胞を使って座標系をつくり出す、というのがわれわれの提案である(中略)われわれの現在の理解では、新皮質内の細胞のほとんどは、座標系をつくり、操作することに専念しており、脳はその座標系を使って計画を立てたり考えたりしている(中略)私たちが何かを考えているのはおもに新皮質(中略)実験は新皮質(※知能の器官)に格子細胞が存在することを示したのだ。詳細は込み入っているが、fMRIを使って検出できる特徴を格子細胞が示す可能性があることに、研究者は気づいた(中略)何かについての私たちの知識は、何千もの皮質コラムに分散している。コラムは冗長ではないし、互いにまったく同じではない。とくに重要なのは、コラムそれぞれが完全な感覚運動システムであることだ(中略)新皮質は何万もの皮質コラムで構成されており、各コラムが物体のモデルを学習する(中略)各コラムはある程度独立して働くが、新皮質内の長距離連絡のおかげで、コラムは自分たちがどんな物体を感知しているのかについて、投票することができる。※引用者加筆.

あるボーダー細胞は、あなたの右側に境界があらわれた時にだけ発信(中略)ボーダー細胞は場所細胞とグリッド細胞に、どの場所で用心すべきかを教えている(中略)頭方位細胞は、ラットが進む方向ではなく、顔の向きに影響を受ける(中略)速度に応じて信号を出す細胞(中略)スピード細胞はある種の速度設計で、ランドマークにも周囲の明るさにも影響を受けません(中略)スピード細胞は、ラットの現時点の速度ではなく、到達するであろう速度を示す傾向(中略)まとめると、グリッド細胞に対して、頭方位細胞はラットがどの方向に動いているのかを伝え、スピード細胞はラットの移動速度を伝えます。グリッド細胞はこれをもとに、地図細胞の縮尺を更新します。ボーダー細胞は、グリッド細胞がつくった地図の限界を示します。場所細胞は、私たちの現在位置を教えてくれます(中略)これらの細胞が、私たちの空間認識を助けてくれます(中略)スピードメーター、コンパス、境界マーカー搭載の脳内GPS(中略)足が地面に着いたかなど、自分の身体の動きを感じたり意識したりしていることも必要で、これには頭頂葉と小脳が貢献(中略)頭頂葉は視覚情報とそのほかの感覚情報を統合(中略)場所細胞は海馬にあり、グリッド細胞はその外周の大脳皮質に(中略)空間認識にもっとも重要な細胞のうちの2つが、これまでわかった限りでは、側頭葉内部にある(中略)頭方位細胞は海馬外周の大脳皮質にのみ存在するのではなく、視床および大脳基底核以外の大脳皮質領域にも存在(中略)後頭葉からの視覚情報を使ってランドマークを認識(中略)頭方位細胞と、海馬外周の大脳皮質にあるグリッド細胞の間には、どこに境界(ボーダー)があるのかを教えてくれる小さな細胞群があります。あなたが地図上の境界(山、道またはフェンスなど)のすぐそばにいる時、ボーダー細胞は信号を発します。

頭方位細胞は、ラットが進む方向ではなく、顔の向きに影響を受ける

シナプス可塑性は、どの出来事が記憶するに足るほど重要かを合図する神経伝達物質、とりわけアセチルコリン、ドーパミン、セロトニンの広大なネットワークによって調節される(中略)「海馬」と呼ばれる領域で、ニューロンは「場所細胞」のようにふるまうことはわかっていた

ボーダー細胞は場所細胞とグリッド細胞に、どの場所で用心すべきかを教えている

本当の覚悟とは、放棄するものを決めて、「これはなくなっても大丈夫です」といえることです。

京都にある臨済禅の大本山・天龍寺で館長をされていた関精拙老師が、まだ修行中の雲水のときの話が残されています(中略)ある日、真言宗のお寺に立ち寄られました。するとお坊さんが出てきて、雲水姿の精拙さんに向かって、「禅というのものは、一体どんなものなのですか」と問いました。すると精拙さん、無言で、そばにあった香炉をお坊さんの目の前にパッと差し出しました(中略)それを見たお坊さんが、「それだけですか」と言うと同時に、精拙さんが差し出した香炉をパッとひっくり返しました(中略)ひと言も発せず香炉を差し向け、ひっくり返した行為そのものに禅があるのです。

描いている途中の作品を見ると、「これ、失敗だろう」と思う瞬間があります。それを立て直して完成させるのがプロです。

説得の変異はあまりにも急で、危険で、原始的ですが、たんにテーブルをひっくり返すのではなく蹴り倒します。

映画『メン・イン・ブラック』では、リンダ・フィオレンティーノ演じる人物が、明らかに人間の死体の頭と思われるものの中で、制御装置の前に座っている、まさにそのようなエイリアンのホムンクルスを発見する。とはいえデカルトは、オランダでしばらく隠遁生活を送ったときに、ポルトガルからのユダヤ移民の子で、同時代の年下の哲学者バルーフ・スピノザの、はるかに過激で、啓蒙された進化的な見方に接した。異端の主張をしたとして迫害され、追放されたスピノザは、現代の神経科学の結論を不気味なほど先取りしていた。彼はデカルトに意を唱え、物質と心を同一とする、見事なまでに近代的な見方を提唱し、フランシス・クリックがのちに「驚異の仮説」と呼ぶことになるものを擁護する議論を展開した(中略)私たちが持っている人間の自由は、スピノザに言わせれば、「人間は自分の欲望を意識しているが、その欲望を引き起こした原因は知らないという、もっぱらその事実によって成り立っている」という。その意味では、坂を転がり落ちる石が自らの動きを決めているのではないのと同じで、私たちも自分の人生を自ら決めてはいない。

無知の状態が維持できるのは、調査研究を禁止し知識の流布を禁じる法律でいっぱいの警察国家のような国家

インドで蝶がパタパタやると、二年後にニューヨークでハリケーンが起こる可能性がある(中略)ランダム性には、社会のカードをシャッフルし直し、肩で風切る大物を叩き落とすという優れた効能がある↓


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