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映画『夢みる小学校』対談ダイジェスト採録① 学校、家庭…〝子どもとの関わり〟のヒントに

先日、映画「夢みる小学校」の劇場対談ダイジェスト映像がzoom配信されました。
映画上映後に劇場で行われた、教育関係者とオオタヴィン監督との対談模様の一部を、監督のトークを交えて紹介する内容です。

映画に登場した学校に対する、礼賛一色というわけではありません。
一般的な学校とはちょっと違う、〝自由〟や〝子どもファースト〟をモットーとする学校の在り様を踏まえた上で
学校の在り方についての考えを、各人各様の視点から語っています。

対談で繰り出された言葉の数々には、学校教育はもちろん、家庭での子どもとの関わりに際しても、わたしにとってヒントになるものが沢山ありました。
こうしたテーマに関心のある人たちと共有したく、印象的だった内容を抜粋・意訳して書き記すことにしました。
ご興味のある方に、是非ご一読いただければ嬉しいです!
(長いので、2回に分けています。)

なお、「夢みる小学校」に登場したのは
・きのくに子どもの村学園
・伊那市立伊奈小学校
・世田谷区立桜丘中学校
の3校です。
(※画像は、オオタヴィン監督)

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〇前川喜平さん(元文部科学省事務次官)

『先生と生徒』は〝権力関係〟
≪映画で印象的だった場面について≫
「(きのくに子どもの村学園において、教師として働く大人のことを)『教師』と呼ばないところ。
僕自身、『先生と生徒』という関係が苦手だった。それは一種の上下関係、もっと言えば〝権力関係〟だと思うから。でも映画に登場した学園では、そういう関係が一切なかった」

通知表に、法的根拠はない
「通知表を出さなければならない、と法令で決まっているわけではない。慣例として、(どの学校も)通知表を出しているだけ。(本来は)いらない。校則も、なくてもいい。
(映画に登場した3校のような)ああいう教育を、公立学校でも堂々とできる」

〇井本陽久さん(栄光学園教師)

細胞が湧きたつ『森の教室』
「僕は、(既存の)学校を否定するつもりは全くない。
ただ、数学の授業を学ぶ場を自分でつくっているからこそ分かることとして、教室というのは〝不自然な場所〟だと思う。
教室に入った時、誰も「わ~、素敵!」とはならない。教室自身に、人の細胞を躍らせるような何かがあるわけではない。
これと対照的に、(自身が携わっている)『森の教室(※)』はすごい。全身の細胞が湧きたってくるような教室だ。子どもたちはここに来ると、川に入ったり木に登ったり、ちょっと引いた場所に座ったり…各々が心地いい所を、自ら見つける。大人は何もする必要がない」

※森の教室…井本さんが講師を務める教室。河原などで体を動かしながら、子どもたち同士のコミュニケーションを楽しむ。

体を動かそう
≪不登校問題へのアドバイスを求められて≫
「不登校の状態を、解決する必要はないと思う。
200年前に学校は存在していなかったはずだけれど、それでも人類は存続してきた。生きていくのに、必ずしも学校が必要であるわけじゃない、ということ(を示している)。
それよりも、『体を動かす』ことの方が大事だと思う。
体を動かさないのは生物として不自然。(体を動かさなければ)心を病むし、気力もなくなってしまう」

〇杉田かおるさん(女優)

大人と子どもの隔たりがない
≪映画を鑑賞した感想として≫
「大人と子どもの隔たりがなかった。
格差社会であり、どこでも分断や格付けがなされる現代において、(映画に登場する大人と子どもは)フラット(な関係)だった」

自分を好きになり、信頼すること
「自分を好きになるための作業って、結構大変。
そして自分を好きになった後、更に『自分を信頼する』ことができて、人生一区切りと言えるように思う。それ(=一区切りするまでの過程)が、(映画に登場した学校では)スムーズに無駄なく学べるように思えた」

〇星野概念さん(精神科医、ミュージシャン)

凹とみるか、凸とみるか
「人は誰にでも、『凸凹』がある。
そして、社会的には『凹』だと思われるような面が、実はその人の得意なことであり『凸』かもしれない。周囲が、その人のそんな面を強みと捉えた上でフォーカスできれば、その人自身も周囲も幸せで、楽になれると思う」

〇吉田田タカシさん(『アトリエe.f.t.』主宰、ミュージシャン)

自己肯定感さえあれば、勝手に学び始める
「得意なことと不得意なこととの間には、波がある。
その波は、大きくても小さくてもどちらでもいいのだけれど、今の社会は波が小さい人たちがつくっている。反対に波の幅が大きいほど、生きづらい社会だと思う」

「本来は、自己肯定感があって生きていく意欲さえあれば、人は勝手に学び始める。
教育は、主体性に火さえ付けば、スタートと同時にゴールだと思う」

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