見出し画像

#130 飲食業は下に見られがち(後編)

前編では、飲食店=年収が低いというイメージが最近は少し変わってきたというお話しをしてきましたが、実際に業種別で比べてみると相対的に低いというのは確かな事です。しかし、経験年数と共に年収が上がっていき、専門性を身に着けることにより十分な年収を得ることができるということもわかりました。企業が経営しているチェーン店では経験年数を積んでも思ったように年収が上がっていかない場合もありますが、福利厚生がしっかりしているのは魅力の1つかもしれません。しかし、外食産業は日本経済の中核を担う業種といっても過言ではありません。一方で飲食業界にはブラック企業が多いという負のイメージもあります。農林水産省食料産業局の調査でも他の産業に比べて過重労働が多く離職率が高いといった課題が指摘されています。そこでここでは飲食業界にブラック企業が多い理由をはじめ、飲食店への就職や転職を志す際にブラック企業を見極める方法や入社した場合の対処法などを詳しく解説していきたいと思います。
#昭和的な働き方

なぜ飲食店にブラック企業が多いのか


「ブラック企業」はかつては反社会的企業の俗称でしたが、現代では労働者に不利な雇用条件と劣悪な労働環境のもとで従業員を酷使する企業を意味します。労働基準法を所管する厚生労働省は一般的な特徴として以下の3点を挙げています。

①労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す。

②賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い。

③労働者に対し過度の選別を行う。

このような状況下で労働者に対し過度の選別を行うとは、人事権の濫用によって労働者に不合理な待遇差を生じさせることを指します。飲食店にブラック企業が多いのは、それらの条件に当てはまりやすい業界特有の経営環境があり、長年問題視されてきました。
#コンプライアンス

閉鎖的労働環境の悪化=ブラック企業

飲食業界は業務運営が店舗単位で独立する特性上、従業員が店舗という閉鎖的労働環境で長時間勤務を強いられるケースが多く、人間関係や雇用環境の悪化によってブラック企業化しやすい、という問題点が指摘されています。長時間労働、不規則なシフト、離職率の高さなどが、ブラック企業としての特徴を示しています。

離職率が高い


飲食店が抱える雇用問題のひとつが離職率の高さです。厚生労働省のデータによると、大学卒業者における就職後3年目までの離職率は宿泊業・飲食サービス業で50.2%と全産業平均の32.2%よりも大幅に高い値です。このような離職率の高さが、人手不足や労働環境の悪化につながり、ブラック企業化の一因とされています。

混み具合により業務量が不規則に


飲食業界で長時間労働が常態化しやすい理由のひとつは、食事時など特定の時間帯に仕事が集中してしまうことです。混み具合は天候などの外的要因によっても変動するため、業務量が不規則で合理化が難しく、長時間勤務が当たり前とされています。このため、労働環境が悪化しやすい傾向があります。

利益率の低さによる影響


飲食業界の多くは「薄利多売」のビジネスモデルが主流です。人件費や食材費が大部分を占め、利益率が低い状況下で労働者を増やして対応することは難しいため、従業員の労働量が増える傾向にあります。このような状況下でブラック企業化しやすくなります。

ブラック企業を見極めるには


外食産業や一般飲食店が全てブラック企業であるわけではありませんが、見極める際に以下のポイントに注意することが重要です。

①給与額が不自然に高い

達成不能な成果給や不自然に高い基本給が示される場合、注意が必要です。

②募集期間が長く採用人数が多い

離職率が高い可能性があるため、見極めが必要です。

③労働環境の改善がされていない

労働時間や休日に関する具体的な情報が不明瞭な場合、ブラック企業の可能性が考えられます。


ブラック企業に入社した場合の対処法

不運にもブラック企業に入社してしまった場合は、がまんせずに対処することが大切です。

①経営者への要望

労働環境の改善を経営者に求めることや、労働組合などを通じて改善を提案することが考えられます。

②求人票の内容の確認

求人票に記載された内容と実際の労働条件が異なる場合は、労働基準監督署に相談することができます。

③転職

不適切な労働環境で我慢するよりも、他の職場への転職を検討することも一つの選択肢です。

ブラック企業になりにくい業態として、以下の要素を重視する企業が挙げられます。

①定期的な休日が確保されている

休暇が適切に取得できる環境が整っていることが重要です。

②残業手当の支給

労働時間に応じた残業手当が正しく支給されることがブラック企業化を避けるポイントです。

③労働基準法遵守

労働基準法などの法令を遵守し、従業員の権利を尊重する経営姿勢が大切です。

ブラック企業とは労働条件や労働環境が劣悪な企業のことで、飲食業界では長時間労働や雇用条件の悪化などが原因でブラック企業化しやすい傾向があります。就職や転職の際にはブラック企業に注意し、万が一入社してしまった場合でも適切な対処法を考えることが大切です。ブラック企業になりにくい業態を選ぶことや法令遵守を重視することが、より健全な労働環境を実現する一歩となると思います。
#ブラック企業

フランスとの違い


日本とフランスの飲食業界の違いは、労働文化、教育と専門性、料理の価値観、経済的背景、文化的背景の要素によって形成されています。日本では長時間労働が一般的であり、労働環境が厳しい一方、フランスでは労働時間が短く休暇や休日が重視され、飲食業界の労働環境が改善されています。また、フランスでは料理学校による専門的な教育が重視され、高い技術力と専門性が評価されていますが、日本では経験や実力も重要視されます。さらに、フランス料理は芸術として位置づけられる一方、日本料理も独自の価値を持ち国際的に評価されています。経済的には、フランスの高級レストランや食材が高価であり、一方で日本では高級志向な飲食店と庶民的価格帯の店が共存し、評価の違いがみられます。文化的にも、フランスと日本の異なる歴史や文化が飲食業界の評価に影響を与えており、食事の重要性や労働文化の違いが見られます。
#料理は芸術

日本の飲食業界の格差の形成は歴史的要因にも影響されています。江戸時代の身分制度によって異なる食生活が形成され、商業と都市の発展により労働者の格差が生まれました。都市部と地方の食材入手性の違いも料理の多様さと格差の要因となりました。そして日本の近代化に伴い、洋食導入や西洋文化の影響で新たな料理文化が広がりつつも、格差が存在し続けました。これらの要因が共に、日本とフランスの飲食業界の違いや格差の形成に影響を与えています。

おわりに


飲食店で働く人たちの立場を向上させるためには、公正な労働条件の確保、スキル向上のための教育・トレーニング、キャリアパスの提供、働きやすい環境整備、柔軟なシフト管理、インセンティブ制度の導入、意見交換とコミュニケーションの促進が重要です。これらを組み合わせ、従業員のモチベーションや生産性を高める取り組みを行うことが必要であると考えます。

これから飲食店で働く人たちの立場を向上させるために特に重要なアプローチは次の3つです。

①公正な労働条件の確保

適切な労働時間と賃金を保障することで、従業員の健康とモチベーションを維持します。

②教育とスキル向上の促進

従業員に専門性を高める機会を提供し、技術や知識を向上させることで、キャリアの成長を支援します。

③コミュニケーションと意見交換の重視

従業員の声を尊重し、コミュニケーションを通じて職場環境を改善し、従業員の満足度を向上させます。

これらのアプローチが、飲食業界においてより良い労働環境と飲食人の立場向上の為の機会となると思います。僕が30年近く飲食の現場にいて感じることは、年々労働環境は良くなっていると思います。
しかしながらその弊害も生まれています。賃金上昇によるコスト増加や競争力の低下、人材確保の難化、業界構造の変化、サービスクオリティへの影響、過度な規制懸念などがあります、最近では特にコンプライアンスが厳しくなってきています。これからの飲食店では、今まで以上にバランスを保ちながら改善策を検討していくことが求められているのかなぁと感じています。
#飲食に未来はきっとある

前編はこちらから☟

この記事が参加している募集

振り返りnote

仕事について話そう

よろしければ、サポートお願いします。 自分のモチベーションアップのためと、今後のためにインプットに使わせて頂き、またアウトプットできればと。サポート頂いた方へはちゃんと返信させて頂きます。