自分の子どもに自分の介護をさせたくないなら、子どもをつくらないほうがいい

タイトルは完全に主観なので、もし共感できない、物申したい方の目に止まったら申し訳ありません。
ただ、友達と話していて思ったことがあったので、今の想いを書き出します。

自分の子どもに自分の介護をさせたくない人がいます

お子さん思いの優しい方ですね。
私の友達にも多く(といっても3人です)、この意見の方がいます。

理由や対策としては主に、
・自分の親の介護が今大変でつらい。子供には同じ思いをさせたくない
・介護の経験はないが、ニュースでよく大変さを聞く。子どもにそんな苦労をかけたくない
・自分の面倒は自分で見るものだから。老後用にお金を貯めておけば、子どもの苦労はなくなるだろう
あたりがメインでした。
共感できるご意見ある方、いらっしゃるでしょうか。

けど、現実はそうやすやすと子どもに楽はさせてくれないと思います。

誰かの子どもである限り介護から逃げられる人はいません

例外があるとすれば、ご両親を早くに亡くされている方くらいではないでしょうか。

自分が成人してもなおご両親が「ご存命」の方であれば、
いつかは必ず両親の介護を担う時が来ます。

両親が離婚していて片親になろうが大喧嘩の末絶縁してようが、必ず
お父さんとお母さん、両方の介護の責任が子どもに降りかかる。
少なくとも私の感覚では、そう思います。

だから、「自分の子どもに自分の介護をさせたくない人は、子どもをつくらないほうがいい」と思います。
特に一人っ子はおすすめしません。かと言って兄弟がいるのも、あまりおすすめはしません。

この考えに至った経緯を、ここから書いていきます。

しばらく顔を見ていない父の入院に、長子である自分のサインが必要になる

いわゆる連帯保証人です。
いくら親がお金を用意していても、万が一払えなくなったら代わりに払ってくれる人というのを指名しないと、入院手続きが進みません。

私は両親それぞれが緊急入院した経験があります。
連帯保証人として指命されたのは、長子である私でした。
父が倒れた時は専業主婦で稼ぎがない母では保証人になれず、母が倒れた時は父が病気のために保証人になれる状況ではなかったためです。

友達(長子です)に、父親が入院したので保証人になった子がいました。
詳しい事情は聞いていませんが、父親は離婚していて遠方に住んでおり、しばらく会っていなかったそうです。
それでも突然病院から呼び出され、保証人として名前を書くよう言われた。

友達はそのことに、非常に怒っていました。
離婚して離れて暮らしているのだから、もう関係ない他人なのに。今の時代お金を積めば保証人を雇えるらしいから、それで何とかすればいいのに。と。

憤りはもっともだと思います。
ただ、それを聞かされた病院はなんて思うだろうか、と、私は思ってしまいました。

周りの人は、家族が支え合うことを義務付けようとしている

病院、ひいては医療や介護の業界人の思い込みが厄介という話ですが、愚痴や文句がいいたいわけではありません。
私が5年弱介護業界で働いてみて感じた雰囲気が、そう感じさせるものだった、という話です。

①施設に預けても、施設から家族に連絡する機会があまりに多い

私の仕事は有料老人ホームの介護職員でした。(今は違います)
介護福祉士の資格も持っています。
普段はホームにお住まいの利用者様のケアが仕事ですが、時々ご家族様への連絡や電話も対応します。

ご家族様に連絡するケースとして、お金がかかるサービスの導入是非を伺ったり、危篤など命にかかわる判断をお伺いすることがあります。
そうしたときの連絡先はホームに入られる際にまず伺っています。(その多くは長子の方です)

たまに「よほどのことがない限りは連絡しないで」と頼まれるご家族様がいます。
雰囲気から、おそらくホームにいる本人と折り合いが悪いのだろうと推察されますが、あまり立ち入ったことは聞けません。

ところでこの「よほどのこと」、どれくらいの範囲だと思いますか?

私が働いていたホームでは、
「怪我や病気をしたら教えて欲しいだろう」
「ホームの利用者とトラブルが有ったことは伝えないといけないだろう」
「危篤はさすがに知らせないと、後で取り返しがつかないからかわいそうだ」と、
それぞれの職員が様々な感覚で何度もご連絡していました。
そしてご家族様に、様々な判断を迫りました。

どう思いますか?
誰かの子どもである限り、施設に預けたって介護から逃げられる人はいません。
私はそう思いました。
いらないって言ってるのに、そんなに電話しなくてもいいじゃないか…。

本当に「子どもに苦労をかけない」「子どもに迷惑をかけない」のであれば、本人は死ぬまで子どもに全く連絡してほしくないと思います。
(これは私の母がそういう考えの人だからそう感じます。人がいない庭で熱中症で倒れて死にたいと良く話します)
死ぬと葬儀や相続のため戸籍をたどられるので、その時点で初めて連絡がくるのが理想なのかもしれません。

でも私が見た現実は、こんなにも家族(お子さん)に連絡する機会がある、というものでした。
それも、家族間の折り合いの悪さは全く加味せずに、です。 

家族の間の愛憎関係なんて、職員目線からするとまったく見えないものでした。
良く訪問される方なら表面的に喧嘩するとか仲が良いとかはわかりますが、そうでない限りは電話でのたまのやり取りだけでは見えるものも見えません。

なので自分がお客様側になった今もきっと、
私が家族をどう思っているかはわかってもらえてないんだろうな、と強く感じます。

②扶養義務を盾に、家族に積極的な介護を期待する空気感がある

下記の記事から一部を引用します。

民法第877条により、原則として扶養義務を負う親族の範囲は、「直系血族」と「兄弟姉妹」であると定められています。

経済的に余力はあるものの、親とは不仲で関わりたくないから、扶養義務を放棄する、ということはできるのでしょうか。

この場合には法律上、扶養義務を放棄することはできません。過去にどのようなことがあったとしても、扶養義務を負う親族であることは変えられないのです。

ショックでした。
同時に、病院やケアマネージャーの態度に、とても納得しました。
遠方に住んでいようが、絶縁してようが、彼らは
「直系血族である」ことを理由に子どもに積極的な介護を期待する。
業界内で感じるこの雰囲気はきっと、この民法から作られているのだと感じました。

『強いる』のであれば、まだ文句をつけたり強い態度で拒否をする余地もあるというものです。
厄介なのは、『期待する』ことです。
介護や医療に本気で取り組む人ほど(つまりベテランほど)、「家族なんだから、本人のつらさを理解して必要な援助をしてくれる」という期待感が高い。

世の中の末っ子さんたちにはわからないかもしれませんが、兄や姉というものはこの『期待』に弱いです。
まわりの期待に応えようとして、自分の身を削り出す。
いわゆる良く言う「お兄ちゃん/お姉ちゃんなんだから譲りなさい」と期待されて育った弊害の一つだと思います。
ソースは自分(と妹の婿)なのであまり気にしなくていいですが、私の主張には大事なので書いておきます。

では、この場合身を削るとは、何なのか。
介護の時間をとるため、介護離職をするかもしれない。
在宅介護になれば、介護未経験なのに下の世話やお風呂といった重労働をしないといけないかもしれない。
リハビリが必要になった時、家でもできるからと家族が親にリハビリ運動する声かけを毎日嫌がられてもしないといけないかもしれない。
自分の時間を捨てて介護に取り組んだ結果、身も心もボロボロにして、病んでしまうかもしれない。

これを親から子どもに強いたくない、というのが冒頭の友達の思いだと思います。
ですが、実際にこれを強いるのは親ではなく周りです。
お子さんの性格にはよるでしょうが、この周りの期待感に負ける子が少数派だとは、私には思えません。

介護が必要になるような年齢や病気になってから、そうしたある種の『悪意』から、子どもを守ってやれると思いますか?
私が見てきた限り、ホームにいる利用者様にそこまでの強さや体力がある方はいませんでした。

まとめると、施設に入れるお金をいくら親が用意してたって、周りが勝手に子どもを介護に巻き込むんだぞ、ということが言いたいです。

だから、本当に子どもに苦労をかけたくないなら、子どもを作らないこと。
これに尽きると、個人的には思います。

子供が最初からいなければ、年相応に病気をした頃には天涯孤独の身。
巻き込める家族がおらず、何かしらの保証人をお金で雇う流れになるか、保証人がいなくてもできる治療だけしてあとは放って置かれるか。
それが「子どもに苦労をかけない介護」だと、私は強く思います。

そんな老後寂しい、長生きしたいと思うなら
子どもをつくって、こどもに苦労を負わせる覚悟を持って頼るのがおすすめです。

余談…一人っ子もつらいだろうけど、きょうだいがいる方がつらいと思う理由

途中で書きましたが、私には妹がいます。
仲は悪くないほうだと思いますが、こと介護に関してはとことん気が合いません。
細かい話は割愛しますが、要は「妹は両親の介護を積極的には手伝わない」のです。

妹もまた「自分の面倒は自分で見なさい」の派閥だった

最初は手伝うと言っていたのに、実際は言いたいことだけ言って「自分の家のことで忙しいから」と、こちらが期待したことはほとんどなにもしません。
よくある「口は出すのに手は出さない」という典型だと思います。 

そんな妹も、ありがたいことに、通院の付き添いだけは買って出てくれます。
私がわけあって車の運転をしないので、毎回タクシーで通院するのをもったいないと思ってのことと思います。
(妹は両親の介護ではなく、私を手伝いたいのです)

一方、病気の父は気を遣った物言いができない性格で、妹は素直なので父のひどい冗談を真に受けてしまいます。
その結果、通院のたびに喧嘩ばかりしてしまう。
通院時の様子を聞くたび、妹が本当は通院を(介護を)嫌がっていることが伝わります。

妹は父のわがままをきくと「そんなに言うなら自分でやってよ!」と怒ってしまいます。
この子も、冒頭の友達と一緒で、人間自分のことは自分で始末をつけなさいと親を拒絶するタイプなんだな、と思いました。

きょうだいで想いが異なると、長子だけが孤立する

介護業界では、被介護者にできないことをやれと言うのは「暴言」であり「虐待」ととらえられます。
たとえば、足が動かせない病気の人に頻繁に呼ばれてイライラした介護者が「たまには自分で歩いてよ」と言うのも、捉えようによっては虐待です。
妹は父を虐待していると、いつか世間に言われてしまわないか、私は少し不安です。

妹は新婚なので、忙しいことは私もわかっているつもりです。
忙しいとストレスが溜まる子なので、私は妹からの頼み事も、基本断らずに手伝うようにしています。(私が同じ立場なら、断られたらつらいので)

でも実家のことは、妹は積極的に関わってこないのが現実。
私のほうが介護経験者だし長子だし、やりたくてやってるんでしょ、なら任せるよ。という態度です。

心理学上返報性を期待しているだけとわかっていても、私は妹にもっと手伝ってくれないか、両親の気持ちを汲んでくれないか期待をしてしまい、そして勝手に裏切られます。
そして、いまは勝手に孤立しています。

妹と父と母、全員の気持ちを守るには、孤立するのが今のところ一番の近道なのです。
リスクらしいリスクは、私が悲しくなることだけです。妹も友達も誰も、介護のことを自分事とは考えていない悲しさ。
(その悲しみが募ってできたのが、この記事なんでしょうね。)

私もまた、「家族だから」妹も両親に積極的に関わってくれるだろう、と期待する一人になってしまう。
自分の孤独を埋めるために、介護を嫌がる妹を仲間に、理解者に仕立てようとしてしまう。
そんな自分が、とても嫌です。

最初から一人だったら、こんなことは考えずに済んだのに…。

こんな思い、自分の子供には絶対してほしくありません。
だから私は対策として、子どもを作らなければ良い、と思っています。

長くなりましたが、以上です。


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