カム・クリーン【散文】
悪夢。
そうひと言では片づけられない、まだらな色どりと悪意の固まりから目覚める。ふだんからBPMが速く、心拍数を抑えるための薬をのんでいるぼくの心臓は強く速く脈打っている。ずっと同じ体勢だったのだろう。痺れる左腕をゆっくり動かす。それからキッチンにむかう母は病院で、家にはだれもいない。水道水で、とんぷくの薬をのんだら、落ち着くまで台所の隅に座り深呼吸する。しばらくして、よくなったらぼくはタバコに火をつけ、夢について考える。
夢のない眠りに、胸を焦がすようになったのは、いつからだろう。
きっと、君にあうはるか前だ。
はじまりは覚えてる。幼すぎるぼくの手がざわめく憎しみで満たされたのを。それは、重すぎる代償。世間でいう罪だ。そのころから、ぼくはずっとふたりだ。崩れ落ちたぼくの肩をたたいたのは、まっくろな君だった。おそろしいのは、その既視感だった。ずっと前に、同じことを、何度も、何度も、繰り返したような気がした。ありえないことなのに。
そう、あの日からずっと探している。
くったくなく笑う君を。
打算やはかりごとない君を。
君はだれからも好かれていたが、だれからも愛されていないと感じていたね。好き、と愛、が違うことを覚えたからね。それから君はとりつくろうようにいいやつでいようとした。ずっと。ずっとさ。たとえば、今寝る間際でとなりで愛猫の寝息を聞きながら、だれからも責められないのに、自分を傷つけるのが怖いだけで、だれのことも悪くないと、そう思ってるね。
君とぼくは窓際に立って、夜をのぞく。この世界には似たようなひとが多いから。だから夜になると、だれにでもなく、祈る。ほんとうに、ほんとうに一瞬だけなにかに触れたとき、君とぼくは懺悔し、また感謝する。なにものかに。
これは駄文だが告白。ぼくたちはともになってあの夜空におちていく。
カム・クリーン。
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