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環境問題を考える廃棄物アートの公募、COIL Upcycle Art Contestの存在意義(1.現代アートと思考のきっかけ編)

今回は、今年第2回目を迎えたCOIL Upcycle Art Contest(以下、CUAC)が持つ存在意義についての紹介を書いてみようと思います。共感してくださった方はいいね♡お願いします。

廃棄物アートの公募は未来の“Improbable(起こりそうもないこと)”が生まれるきっかけ

廃棄物を使った現代アートの公募を企画するきっかけとなったのは、今人類が直面している、「環境課題の解決が難しいことにより感じる未来への絶望感」という課題の存在。

いつ実現されるか分からない先進的な発明や科学技術の進歩、他人の革新的な発明の誕生を待つだけでなく、人々が課題解決の当事者として能動的に行動することが出来れば、未来に対する可能性を増え、結果的に未来への希望が生まれるはずだと私は考えている。

こうしている間にもClimate Clock(温暖化が進んだ、 もう後戻りできない地球になってしまう「締め切り」の時間を示す時計)は刻一刻と進んでいるのだ。

この時計を見るたびに、何もせずにその時を迎えるのではなく、たとえ大きなインパクトを残せないとしても今出来ることをしたいと切に思う。



イノベーションとは、従来の組み合わせを一旦解き、新たな組み合わせを実現することである。

『経済発展の理論(1912年)』ヨーゼフ・シュンペーター


シュンペーターによると従来の組み合わせを一旦解くことを「創造的破壊」、新たな組み合わせを実行することを「新結合」と表現するそうだ。

イノベーションのイメージ


環境問題に対する新結合を起こすにはどうしたら良いか。とはいえ、大きな1つの発生をただ待つには時間が限られている。

そこで、世の中に対して「きっかけづくり」という軽いスタンスで関われる場をつくることで、関わる人々の中で小さな変化を多発させ、結果的にImprobableが起こることを目指していこうという意図から、

廃棄物について考えるきっかけを与え、環境と人のこれからに対する問いを提起・議論する場として廃棄物アート公募の企画を進めることになった。


“全員当事者型”アート公募プロジェクト

創造的破壊と新結合が繰り返し行われる思考方法の一つの例として「アート思考」というものがある。

アート思考とは、①自分の感情を発掘する(源)②表現する(行為)③誰かと共鳴する(成就)という、アーティストが創作活動をする際に経るプロセスをメソッド化させたものである。

表現者(作家)の中で創造と破壊が繰り返され生まれた表現や行為(作品)を第三者(鑑賞者)と共鳴し合うことで、誰かの新たな感情の発掘に繋がったり、相互の思考が新結合することで新たな発想が生まれることが期待されている。


このプロセスでは表現者だけではなく、作品に関わる全ての人が各自の内側で何かしらのアクションをとることになっている。言い換えれば、作品に関わる全員が当事者であり、誰かが欠ければそのプロセスが成就することはないというのがアート思考であるのだ。

現代アート作品成立のイメージ


また、現代アートの先駆けとなるコンセプチュアル・アートを手がけたことで知られるマルセル・デュシャンは「作品を起点に思考を巡らし、鑑賞者の中で作品が完成すること」とコンセプチュアル・アートを定義している。

つまり、作品に対する能動的な疑問と思考によって完成する鑑賞者とアーティストの対話こそが現代アートであり、鑑賞者の疑問と思考があって初めて作品は完成するということを意味している。

環境問題の解決に対しては未だ先が見えないからこそ、能動的に疑問を持ち、思考し、他者と共鳴させていくということ自体に大きな意味がある。

廃棄物を用いた現代アートの公募というImprobabelを起こすための対話の機会を通して、環境問題を抱える世の中に小さな疑問や思考を生み、解決に一石を投じることができるような変化を生じさせることが出来るなら、私たちがこの困難な時代を生きる意義が少しでもあるのではないだろうか。



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