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【キネマ救急箱#6】ウエスト・サイド物語(1961年)〜名作を「名作だよ」と言われて見るのはハンデ〜

こんにちは。
ニク・ジャガスです☺️

始まりましたね。
スピルバーグ監督による『ウエスト・サイド・ストーリー』令和版!←

折角だから前作を見直そうと思い、10年ぶりくらいにロバート・ワイズ、ジェームズ・ロビンズ監督版の『ウエストサイド物語』を見ました。

もう50年前になるのですね。
やっぱりね、色んな意味で時が経ちましたよね。

普及の名作として今なお愛される本作、改めてレビューです。

あらすじ

ニューヨークのスラム街。そこではイタリア系のジェット団とプエルトリコ系のシャーク団という対立する不良グループが、連日連夜、縄張り争いを続けていた。ある夜、町のダンスホールで開催されたパーティに、ジェット団のボスであるリフが、かつての仲間であるトニーを連れてやって来る。トニーはそこで美しい少女マリアと出会い、お互いにひと目で恋に落ちるが、彼女はシャーク団のリーダー、ベルナルドの妹だった…。

ウエスト・サイド物語(字幕版)より

名作を「名作だよ」と言われてから見るのはハンデ

『ウエストサイド物語』といえば。

ハリウッド史、そして歴代ミュージカル映画における金字塔。
日本でも「午前十時の映画祭」で度々取り上げられる、これぞ普及の名作という一本。

…だとは思うのですが。

名作を「これ、名作なんですよ!」と宣言されてから見るほど、重いハンデはない!!!

当時の最高興行収入を記録!
アカデミー賞○部門ノミネート!
今も語り継がれる名曲の連続!

そう言われると「それほどか…?」といった目線はまず、脳みそから抜き取られてしまう。

そして、よく分からなかったとしても「確かに!名作だっ!しゅごいっ!」と結論づけることで自分の感性をマジョリティレベルに適正化しちゃうんですよね。
少なくとも私はそうです。すみません。笑

やはり映画は制作された時代に見るのが一番正しい受け止め方ができるのだろうな…と思います。

時代背景に沿った人種間の対立や、出会ってから数時間で“I love you.”に達してしまう運命に対する憧れだとか、その時代の人にこそ響く描写ですよね。

それを現代人が、Blu-rayだとかスマホだとか、異なる時代背景、上映形態で見た場合、その映画の“本来の良さ”をどれだけ受け取れているんだろう…🤔

ワーワー言うとりますが、今回は正直に感じたことをエイっ!と書いてみます。笑

ごめんなさい!どうしても好きになれないヒロイン像

早速、大物からテコ入れしてしまいました。

本作のヒロイン「マリア」ですが、どうしても好きになれない。
だって自分のことしか眼中にないんだもん。。

私を手に入れたいなら喧嘩を止めてきてから、とか…
殺された兄よりも昨日会った男の安否を知りたがったりとか…
恋人を亡くしたばかりの傷心アニータを否応なしに伝書鳩にしたりとか…

今では絶滅危惧種に近い“受け身で待つヒロイン”
自分から行動を起こすのではなく、他人を通して願いを叶えていく。

トニーがベルナルドを殺したと知り、祭壇の前で「自分を殺しても良いからなかったことに!」と懸命に願う。
3人もの命を失った末に、ジェット団とシャーク団に「争いなんか無意味よ!」と説教する。

優しく、美しく、清らかな心の持ち主。
その名はマリア、首には十字架のネックレス。
まさしく“聖母”として、理想のヒロイン像だったのでしょう。

……てやんでい!!!!!

と、叫びたい。笑

階段で密会するシーン、マリアの方からトニーに静かにしろって言ったのに後半ずっと大きい声でトニー呼ぶな!って思ってた。笑

今ライトが当たるなら、ジェット団に入るために必死で情報を掴んだ女の子だろうな。
「スカートはけ」「女は女らしくしろ」と吐き捨てられたり、女の子たちに嘲笑されても、めげない子。

サブキャラに過ぎないのでしょうけど、ユニークな存在感があったように思います。

徹底した二極化の表現

本作は2時間半くらいですがインターミッションがあります。
2時間半の映画が量産される現在は、なかなか出会わないですよね!

リアルタイムで経験したのは『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』ですね。
劇場で見ましたが、観客がトイレに押し寄せていたのを覚えてます。

前半、後半で静⇄動が語られるわけですが、『ウエストサイド物語』には沢山の二極化が描かれてます。

  • 老いと若さ

  • 男と女

  • 白人と有色人種

ジェット団をかくまうドクや、マリアが働く裁縫店の店主は、若者に人生を説く。
もちろん若者は「うるせ!」って言う。笑

ただね、ドクの最後の叱責は若者にもはっきり届いたよね。
あの場面にスカッとする私はもう、しっかりと大人組。。

個人的にはダンス場での衣装の二極化が好きでした。
例えるならば、ジェット団がイエベ、シャーク団がブルベの衣装なのよ。笑

真っ赤な背景に双方の衣装が映えて美しかった。
マリアは真っ白なドレスに赤いベルトをしてたから、基本はシャーク団だけど、中立的な立場なのよ、と描写してるのだと思います。

最後に「この映画はパナビジョン70で撮影されました」とクレジットが出ていて、画面の美しさに納得。
やはりネガフィルムに如何に多くの情報が含まれるかでデジタルリマスターのクオリティが変わりますもんね。

今では考えられない?時代背景

この機会に、色々と当時の撮影風景について語られている記事を読みました。

本作で、アカデミー賞助演女優賞を獲得したリタ・モレノは、当時の記憶をこんな風に回想しています。

肌をすごく黒っぽく塗られ、ひどいなまりの英語をしゃべらされて、もうこの役は降りようと思ったこともあった、と。

ニューズウィーク日本版2月15日号より

プエルトリコ側、シャーク団を演じた俳優もほとんどが白人だったそう!
知らなかった。。

そして、アニータとベルナルドを中心に移民サイドが歌った名曲「アメリカ」。
またこの歌詞がもう、アメリカ最高!アメリカ格好いい!アメリカ人になりたい!みたいな、アメリカ万歳を観客に訴えるものですよね。

まぁ自分もアメリカ大好きなんですけど。笑
そんなに恋焦がれる対象があるって、幸せなことなのかもしれないですね。

あまりアメリカ史に詳しくはないですが、戦後に爆発的な経済成長を遂げて世界のトップに君臨していたアメリカ、その中心地ニューヨークといえば夢と希望を渇望する若い世代が各地から集まったんでしょうね。

おまけ的な感想

なんだかんだ、それっぽいことを並べても結局は

口笛と指パッチンに、一つも澱みがない映画だったな〜。笑
指パッチン綺麗すぎてよさこいの鳴子かな?と思いました。

スピルバーグ版『ウエスト・サイド・ストーリー』では、どんな描かれ方をするのか楽しみです!!


最後まで読んでいただき、ありがとうございました😊


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