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第18回 道成寺

皆さま少しご無沙汰しております。
あちらこちらで寒波の波雪もちらつく様子となってまいりましたが体調のほどいかがでしょうか?
また昨今の感染症変異株の感染力も非常に高く、とうとう能楽界にも忍び寄ってまいりました。
逆に言えば今までほとんど陽性者、感染者の方が出なかったのは奇跡だなと思うほどです。
もはやどこから感染するかもわからない世界となってきましたが根本的な健康を保つ方法を用いて乗り切って参りたいと思っております。

若手能official onlineは今回で一区切りとなります。
現状の形態の更新(解説文+動画)はひとまずこちらで完結とさせていただきます!
今思えば長かったような、短かったような…
私のような文才のないものがあれやからやと更新させていただいておりましたがいかがでしたでしょうか?笑
個人的にはいい経験をさせていただきましたし、刺激にもなりましたのでこれを糧に新たなことにも挑戦できればなと思います。

前置きが長くなってしまいましたがひとまず区切りの最終回「道成寺」でございます。
こちらは僭越ながら私(大鼓方山本寿弥)が担当させていただきたいと思います。

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解説文

あらすじ
春真っ盛りの桜が舞い散るような日、紀伊の国(今の地名では和歌山)にある道成寺では作り直した釣り鐘の供養が行われることになりました。
その寺の住職は、この釣り鐘には謂れがあって女性が参ってきてもいれてはならないとお触れを出します。
しかしそのような時に、一人の白拍子(少し怪しい綺麗な遊女というイメージ)の女が供養の舞を舞わせてほしいと寺男(能力〔のうりき〕)に頼み込み、供養の場にまんまと入り込みます。
入り込むと女は独特の拍子を踏み(乱拍子)、舞いながら鐘に近づき、ついに鐘を落としてその中に入ってしまいました。
ことの次第を聞いた住職は、道成寺にまつわる恐ろしい物語を語り始めます。
それは、昔に真砂(まなご)の荘司(しょうじ)の娘が、毎年訪れていた山伏に裏切られたと思い込み逃げる山伏を追いかけ続けた末に毒蛇となって、道成寺の鐘に逃げ隠れた山伏を、恨みの炎で鐘もろとも焼き殺してしまったというものでした。
女の執念が未だに根深くあることを知ったお僧達は、祈祷し鐘を引き上げることとしました。
しかしながら、鐘の中からは蛇体に変身した女が現れます。
争いの末、毒蛇は鐘を焼くはずがその炎でわが身を焼き、日高川の底深く姿を消していくこととなったのでした。

ここからは個人視点の見どころとしまして三つほどポイントを上げさせていただきたいと思います。
囃子方目線、大鼓方目線で大変申し訳ありませんがしばしお付き合いの程よろしくお願いいたします。

ポイント1 特別感

まず最初になんと言っても欠かせないのが能楽における立役の方々。
今回の道成寺においては一際大層であります笑
まず初めに出てくるのが

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です。笑
作り物の大きな鐘ですがなんと重さは70キロほどあるそうです。
その鐘を6人がかりで運び、特殊な技法を使って鐘を舞台上に吊り上げます。(これは見てのお楽しみであります。)
その後に出てこれるのがワキ方、狂言方となるのですが各々重い習い(師匠から特別に伝えられる口伝や流儀の中で伝承されている特別なもの)があり、常の謡回しとは異なった緊迫感のあるものとなっております。
突然それはシテ、ひいては囃子方にも適応されます。
普段の出囃子とは全く異なるなんとも恐ろしいような「何かが起こる世界観」が満ち満ちています。
こちらも当日来ていただいてからのお楽しみです!

ポイント2 小鼓、大鼓にソロパートが!

囃子方贔屓で申し訳ありません笑
続いては先程と少し被りますが囃子方の習いについてです。
先程の出囃子についてもそうでしたが他にも様々な習いがあります。
特に強調されているのが小鼓の乱拍子。

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これ無くして道成寺は語れません。
これはシテと小鼓方のみ(節目にはお笛が少し入ります)で成される舞と言いましょうか。
こちらについては様々な言い伝えがあり…
(鐘に向かう階段を登っている?、情念がどんどん渦巻いて込み上げてくる?等)
何せとっても綺麗で緊迫感があり不気味です。
その前には大鼓とシテだけの部分もあります。
どちらも習いとしては重く「一子相伝、口伝也」
とよく手付け(台本のような物)に書かれてあります。
こちらもまた激動の数分間です。
どちらも見てからのお楽しみと言ったところでしょうか!

ポイント3 鐘落ち、祈り伏せる特殊性

先程ポイント1で触れた鐘が落ちてきます…
本当に落ちてきます…
考えるだけで怖いのですがこれは見ていただく他無いと思います。
更に落ちてきた鐘の中でシテは装束を着替えます。

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普段は数人係で着付けているところを1人で鐘の中で着替えられます。
なかなかにこちらもすごい技術です。
終盤になってくるといよいよ太鼓も鳴り始めクライマックスです。
この時の太鼓も重い習いがある特殊な手組みをたくさん打ちます。
能楽においては鬼、幽霊等に対する手段として用いられるのが武力ではなく法力。
所謂祈り伏せる力ですね。祈り伏せる際に囃子方だけで演奏する部分(祈りといいます)があるのですがこちらも普段とは違いかなり凝っています。
どこを切り取っても一際大層で、凝りに凝っているものとなっております。
さすがは道成寺と言ったところでしょうか。

以上長々と書いてしまいましたが動画内ではわかりやすいあらすじの他、道成寺に出演する若手能メンバーから意気込み、見どころなども盛りだくさんとなっております!!

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是非是非お買い求めいただきたいと思っております!

それではどうぞ!!

若手能HP
 つぼみから花へ大阪若手能ホームページ
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YouTubeチャンネル
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