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わかおの日記5

退屈も辛いものであるが、働くことはもっと辛いことである。ましてやその労働が、やる気のない中学受験生に国語を教えることであればなおさらだ。ぼくは、やる気のない中学受験生に国語を教えるという重労働を、どういうわけだか時給1200円ほどで引き受けてしまったのである。

反射板の貼られたナイスなデザインのリュックサックを背負って、やる気のない中学受験生はやって来る。本当は家でマインクラフトをしたりヒカキンTVを見たりしたいのに、エリート志向の両親に強制されて、仕方なく塾に行くのだ。当たり前のことだが彼らには自分の意志がない。したがって勉強に対するモチベーションも著しく低い。当然の帰結として彼らの成績は悪く、そのことがまだナイーブな彼らの自尊心を傷つけるのだ。終わりなき悪循環。可哀そうである。

しかしそれとこれとは別問題だ。ぼくの眼前で国語のテキストを広げてあくびをしているこの男子小学生の態度はあまりにも悪い。苦手な国語の時間だけ、先生をガン無視してやり過ごせばよいとおもっているのだ。ぼくはそのようなねじ曲がった根性のガキは大嫌いである。パクチーと同じくらい嫌いである。

よってぼくはキレた。後で苦情が来ないように少しだけキレた。あくびをしている彼に向かい、「考える気がないならもういいよ」と言い放ったのである。そしてぼくは完璧に職務を放棄した。ただ模範解答を読み上げ、赤ペンで直しを入れる作業に己を埋没させたのだ。

そこから先はもう楽なものである。ぼくは高校生の時、教科書を読み上げるだけの授業をするタイプの先生を心底忌み嫌い、軽蔑していたが、今ならその先生の気持ちもわかるような気がした。先生も被害者だったのだ。

あと、きょうは映画「フォレスト・ガンプ」をみた。今更という感じもぬぐえないが、作中で様々な映画のパロディがなされていたため、それに気付けるようになってから見られたことは、結果的によかったと思った。特に「フルメタル・ジャケット」のパロディであろう、鬼軍曹が出てくるシーンは面白かった。全体を通してとても面白い映画だった、戦後のアメリカ史をざっくり振り返るような内容になっていたので、世界史をとっていたら、もっと面白かったかもしれない。

弟の夏休み延長が決定し、母がかなり落ち込んでいた。母を1人にさせてあげるために、気を使って父と弟と銭湯に行った。小さい銭湯だったが、きちんとしたサウナもあって、とてもよかった。サウナについては別の機会にきちんと書きたい。

帰り道に自転車をこいでいたら、田無高校の野球部員と、そのマネージャーが仲睦まじく歩いて帰宅しているところを目撃してしまった。ぼくは、生ぬるい晩夏の風を振り払うように、全力でペダルを踏んで彼らを追い越した。

追伸 教職はとりたくないけれど、女子校への教育実習だけ参加したい。 



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