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青と絵画 〜青い顔料と絵画の関係について調べてみた〜

空や海などこの世界は青いモノが多く存在しています。ですがそれだけ多くの青色に囲まれた世界でも、青色を絵画に使う事はそう簡単ではありませんでした。今回はそんな「青」と世界の美しい絵画の関係について調べてきました。

空と海が青い理由

この自然界で青いものと言ったらやはり空と海でしょう。しかし空と海から染料を取ることはできません。なぜなら空と海はそれ自体が青くないからですね。

若干仕組みは違うのですが、空と海が青いのはどちらも光の散乱によるものです。空気中で波長の短い青が強く散乱されたり、水の分子が青の光を吸収しない事によってこのような現象が起きます。

自然に溢れた色でありながら染料としては自然界には多くは存在していません。だからこそは青はありふれた色でありながら高貴な色として見られるようになっていきました。

最古の青 ウルトラマリンブルー

ウルトラマリンはラピスラズリという鉱物から取れる鉱物顔料です。アフガニスタンから地中海を超えて輸入されたのでこの名前が付きました。

ウルトラマリンは中世ルネサンスから高価でありながら、非常によく使われる顔料でした。下の絵はウィルトンの二連祭壇画の片方の一枚です。ラピスラズリをふんだんに使ってるだけでなく、背景には金も使われており高級品を大量に使った立地な絵画ですね。

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そしてこのウルトラマリンブルーを使った画家で有名なのはやはりヨハネス・フェルメールでしょう。この美しい青にはラピスラズリの青が用いられています。フェルメールのこの美しいラピスラズリの青はフェルメール・ブルーとも呼ばれており、ウルトラマリンブルーの別名になっています。

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浮世絵の青 プルシアンブルー

プルシアンブルーは鉄のシアノ錯体に過剰量の鉄イオンを加えることで得られる沈殿物から取られる青色です。この顔料は日本と深く関わりを持つ顔料として知られています。

このプルシアンブルーはヨーロッパで作られたものが清国を経由して日本に持ち込まれました。大量に輸入され安い価格で手に入ったので江戸時代の多くの浮世絵師に使用されました。発見地のベルリンからベロ藍と呼ばれて親しまれました。

ベロ藍が最も美しく使われている日本の浮世絵といえば、藍摺絵の代表にして浮世絵の代表とも言える葛飾北斎による「富嶽三十六景神奈川沖浪裏」でしょう。この波の深みはベロ藍あっての表現だと言えます。

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陶磁器の青 コバルトブルー

コバルトブルーは水酸化コバルトと水酸化アルミニウムからなる顔料です。元々は中国の陶器などに利用されてましたが、フランスの科学者のルイ・テナールが絵画に使える顔料として改良しました。これは世界初の合成顔料の一つになりました。

コバルトブルーを最も美しく扱った画家として知られているのがアメリカのマックスフィールド・パリッシュです。コバルトブルーによって作り出されるこの清澄な青色はパリッシュ・ブルーとして知られています。

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新たな青 セルリアンブルー

セルリアンブルーは硫酸コバルトを焼成して作られる顔料です。製造法が確立されたのもコバルトブルーと同時期でどちらも似た色をしていますが、セルリアンブルーのほうがシアンが強くくすんだ色合いをしています。

セルリアンブルーはその色彩的な特徴から特に印象派の画家に重宝されました。そのくすんだ色合いは日に照らされた水面や空気感を表現するのに最適でした。

それがよく分かる絵画がエドゥアール・マネの「舟遊び」です。太陽に照らされたセーヌ川の水面の変化をセルリアンブルーを用いて見事な色彩で表現しています。

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そしてセルリアンブルーは他の青ととても色彩的に相性が良かったようです。クロード・モネの「サン=ラザール駅」ではコバルトブルーとセルリアンブルーの対比によって絶妙な空気感を表現しています。

またファン・ゴッホの「星月夜」ではプルシアンブルーとセルリアンブルーの対比によって夜空な不安定でミステリアスなバランスを表現しています。プルシアンブルーが発色がよく扱いが難しいのですが、極限の精神状態でこの表現力を持ってたことに天才性を感じてしまいます。

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最後に

青は少しの色合いの違いが絵画の印象を大きく変える色合いです。高貴で品のある色にもなれば、どこか寂しげな色合いにもなりえます。絵画を見るときはそんな青に注目してみると面白いかもしれませんね。

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