読書感想『敗者の告白』深木 章子

とある山荘で会社経営者の妻と8歳の息子が転落死し、殺人の容疑で夫が逮捕された。
その逮捕を後押ししたのは、妻が残した『夫に殺される』と記された手記だった…。
死んだ妻の残した手記、息子が祖母に送ったメール、彼らに関わった人々の証言が裁判を通じて事件を紐解いていく。
果たして夫は本当に妻子を殺したのか?
裁判所の出す結論とは?
それぞれの証言だけで構成されるミステリー。


食い違う証言を整理し、真実をあぶりだすミステリーであり、その証言者のうち二人がすでになくなっているというなかなか異色のミステリーだ。
別荘のベランダから謎の転落死を遂げた妻子、そのすぐそばにいた夫…
妻の残した手記は矛盾に満ちており、息子の残したメールには衝撃の告白がつづれらている。
いったい誰が本当のことを言っていて、実際には何があったのかを証言者たちの言葉だけで追いかけていくのである。
個人的には最後のオチ自体は嫌いじゃないんだが、まぁ、ちょっと最後の弁護士の手記とそれに返信された独白については描き方にやりすぎ感感じちゃったので、内容はこれでいいからもうちょっとスマートな提示方法なかったのかな?とは思いましたが…。
タイトルは『敗者の告白」である。
果たして誰が敗者に当たるのかを考えながら読むのがいいんじゃないだろうか?
それぞれの告白には、各々の保身が多分に含まれ、積極的に嘘をついていなくとも自分を少しでもよく見せようとする虚栄が含まれている。
常に語り手が変化していくため若干の読みにくさは感じるものの、証言が進むにつれ暴露されていく事実やそれによって変化していく印象が面白い。
楽しめました。

・湊かなえ『告白』

・宮部みゆき『ソロモンの偽証』

・辻村深月『盲目的な恋と友情』


実際に起こったことは一つでも語る人によって真実が違うのって面白いよね~

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