読書感想『〈本の姫〉は謳う①』多崎 礼

二つの月が浮かび、熱砂に覆われたソリディアス大陸ーーー
自分ではない誰かの記憶を持ち、白銀の髪と青い目を持つ少年・アンガスは一冊の本とともに旅をしていた。
その本には歌姫が宿り、彼女は歌うことで大陸に散った邪悪な文字(スペル)の回収を行なっていた。
人々の精神に影響を与える古代の遺物・文字が引き起こす世界の崩壊を止めるため、彼らは旅を続ける。
レーエンデ国物語が非常に面白かったので、多崎作品の再刊行についつい手を出してみたり…
本来、僕ファンタジーものってそこまで好きじゃないというか…それぞれの独自の世界の設定を掴むのが苦手で楽しみきれないことが多いのであまり手を出さないのですが、つくづく多崎先生、設定の説明の仕方が上手い方だな…とか思ったり。
〈本の姫〉は、すでに滅んだはずの天空の文明である文字を回収していく物語である。
本に宿る歌姫の正体は天空に関係があることだけはわかっているが姫本人の記憶も欠落しておりはっきりはしない。
口の悪い高飛車な姫と、どこか命知らずなアンガスの旅を中心に、滅びた天空の過去のパートを織り交ぜながら進んでいく。
すごくファンタジーなのだが、文字の力を引き出すための「解放の歌」だとか「鍵の歌」だとかの設定は何処かパソコンのプログラムを思わせるというか、荒唐無稽とは言い切れないリアリティがあるというか、なんでしょうね、割と入り組んだ設定なのに個人的にはすごく受け入れやすく面白かった。
過去と現代の物語も、話が進むにつれ繋がりがあることもわかってくる。
いやーこれは先が気になるわ…
今回再刊行に合わせて購入しているため割と短期間で続きが読めるのが楽しみなんだが、気をつけないと過去本買ってとりあえず続き読んでしまいそうなくらいには先が気になる。
本のボリュームの割に、凄く情報の取捨選択が上手いんでしょうね…わかりやすくて読みやすいので気がつけば一冊サクッと読み終わってます。
ファンタジー好きな方も、普段は苦手で避けてる方も楽しめる本ですね。

・三崎亜記「30センチの冒険」

・朝霧カフカ「ギルドレ」

・宮部みゆき「ICOー霧の城」

ファンタジーを面白く描ける方々の世界の構成力に圧倒されるよね…

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