読書感想『東京ハイダウェイ』古内 一絵

逃げ込む場所が、あっていいーーー

大手の通販会社に勤め念願のマーケティング部に配属されたのに、仕事のやり方が同期の直也と折り合わず息苦しさを感じていた桐人。
直也に馬鹿にされ疲弊していた昼休み、無口で真面目な同僚の璃子が軽快に歩いていくのを見かけ思わず追いかけてしまう。
彼女の行く先にあったのは、プラネタリウムだった…
現代を取り巻く様々な歪みの中で疲弊した社会人たちが見つける、ささやかな息抜きの連作短編集。


真面目に、自分のことだけではなく取引先や周りの人たちに敬意を払いながら働く桐人を中心に、彼の同僚の璃子や上司のワーキングマザーや映像業界から引き抜かれた上司などが日々の仕事に追われ疲弊していく中でも自分なりの着地点を探すお仕事連作短編である。
出来るだけ波風を立てたくない彼らは、自分勝手に自分の利益を追求する直也たちにいいようにあしらわれ疲弊していく。
そんな中で見つけた自分なりに息抜きできる場所をきっかけに前向きになれる、そんな物語である。
個人的には、直也めっちゃ苦手で嫌いで…(笑)
こんなやつ同じ会社にいたら僕大喧嘩になるわ!?と思いながら読んでたり…
主人公になる彼らは真面目で一生懸命ではあるのだが、同時に自分の利益を優先できず周りとのバランスを図ってしまう人たちだ。
そして、彼らは仕事だけではなくこれまでの人生で抱えてしまった負い目や後悔があり、それがなおいっそうの足枷になっているのである。
彼らの抱えた問題は、そんな簡単に解決できるものではないのだが、それでも日々の中でほっと息を付ける場所を見つけられたことで少し心の持ちようが好転していくのがじんわりと心にしみる一冊となっている。
現代に生きることだけで疲れてる人にぜひ読んで欲しい一冊である。

こんな本もオススメ


・『弊社は買収されました! 』額賀 澪

・『本のエンドロール』安藤 祐介

・『仕事のためには生きてない』安藤 祐介

やりたいことを仕事に…出来たらそりゃいいんだろうけど、そんなにうまくいかないんだよなぁ。

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