読書感想『Q』呉 勝浩

異様な性癖を持つ義父により、血のつながりはないが姉妹弟になったロク、ハチ、キュウ。
ハチこと町谷亜八は、傷害事件を起こし執行猶予中であり、一人、もういない祖父母の家でひっそりと生きていた。
そんな彼女に、数年ぶりに同い年の姉ロクから連絡が入る。
キュウのために手を貸せと迫るロクに、ハチは詳しい事情もわからないまま従う。
ハチとロクには、キュウのためにすでに事件を起こした過去があった。
キュウには持って生まれたダンスの才能があり、彼の圧倒的な魅力を開花させることが彼女たちのすべてだったから———
キュウという魅力に取り込まれた彼らが目指すものとは?
本を手に取った全員が読む前に気合を入れたであろう、663ページもある一冊で2~3冊分くらいの厚みのある一冊である。
その重さに圧倒されつつ読み始めたら、今度はどこに向かうかもわからない予測不能なストーリーにぐんぐん引き込まれた。
いや、一気読みもさせてくれない分厚さと密度だったので読むのにはちょっと時間かかったけど(笑)
まず無茶苦茶な家庭環境で結びつけられたハチ、ロク、キュウ…同い年のハチとロクの姉妹は、年下で魅力的なキュウのことがすべてなのだ。
存在自体がF分の一の揺らぎのようなキュウの、圧倒的な空気感に関わった人たちはみな少しずつ変わってしまう。
キュウに出会う前と、出会った後で彼らの人生は変わってしまいキュウの魅せる世界を渇望してしまう。
特にハチとロクはすぐ近くにいたキュウのその圧倒的魅力を世の中に知らしめたい、すべての行動の起源がそうなってしまっている。
キュウのもつスキャンダラスな過去を隠すことに奔走し、彼を羽ばたかせるためだけの計画を次々と実行していく。
読んでいる間中、この物語がどこに向かうのか、キュウが何を望んでいるのかが全く見えず、同時にノンストップで進んでいく圧巻のストーリーとキュウという存在に引き込まれて気づけばしっかり読み切ってしまった。
最初から最後まで、引力の物凄い一冊だった。
いやもう、圧巻…本の分厚さで読み始めるまでは気合がいるが、一度読み始めたら最後までたどり着かずにはいられない…。
いったい何を読んだのか、読み終わった後に呆然とするような読書体験である。
気になってる方は是非、その厚さに負けずに手に取って欲しい。



・呉勝浩「ロスト」
・佐藤究「テスカトリポカ」
・恩田陸「ネクロポリス」あたりも読み終わった後呆然となれるのでオススメ…。

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