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地方演劇を真面目に考える会 番外編9 【演劇環境を良くしたい!! 役者を増やす!編】

概要

2021年に和歌山市のクラブゲートと、オンラインで開催した「地方演劇を真面目に考える会」の記録です。以下のHPにて、開催した動画のアーカイブ、アンケートデータや、インタビュー動画をご覧になれます。ぜひご覧ください。

役者やりませんか?

今回は演劇環境の要素の二つ目、役者の数を増やす方法について考えて行こうと思います。結局、演劇人口の内、観客に次いで一番多いと思われる役者数ですが、演劇を一番楽しめるポジションだともいえます。特に非大都市圏では、役者数が一番環境に直結するのではないかと思います。そこで、どうすれば役者が増えるのか?を考えます。

役者を増やすためにできる事

以前に役者数について考えたときに、役者数を増やす・維持する・減らさない方法について考えました。これを元に、もう少し細かく考えていきたいと思います。

役者数を増やす方法

・公演数を増やす
公演だけが役者の仕事ではありませんが、やはり公演数がないと、演劇の役割として役者が出ることができません。公演数が増えることがそもそも役者が増える大前提だと思います。そして、公演数が増えれば、観客から役者をやってみたいと思う人が増える可能性が高くなっていきます。やはり公演数を増やすのが一番だと思います。
・ワークショップを増やす
観客から急に役者というのはハードルが高く感じる可能性が高いので、ワークショップなどで、気軽に役者体験をできる場所を作るというのが非常に効果的です。また、非大都市圏では、観客→役者という構図ではなく、いきなり役者からというパターンも非常に多く見受けられます。特に学生演劇などはその傾向が顕著です。その場合、いきなり何の知識もなく演技をすることになるので、うまくいかないことが多々あります。やはりワークショップなどで裾野を広げておくのは非常に有効です。また、人脈を広げておくのにも、ワークショップは非常に有効であり、とにかく役者を増やすためには必須条件かと思います。
・初心者が入ってきやすい環境を作る。
ワークショップもその一環ですが、それ以外にも役者をやってみたいなと思ってから次のステップに入りやすくする、観客から役者をやってみたいと思いやすい環境を作ることが重要です。専門的な役者を育てるのも重要ですが、初心者でも体験しやすい支援体制や、劇場などが主体的に体験的なイベントを開くのでも、役者が身近に感じられると思います。特に非大都市圏では、観客主体の演劇環境よりは、役者主体の演劇環境の場所が多いので、体験型の演劇を作れる技術・知識を持っているのは非常に有効的であると思います。
・劇団を作りやすい環境を作る。
公演数を増やすことと似ているのですが、公演数を増やすためには劇団数を増やす事が重要です。劇団を作るというと、難しいように感じますが、別に仲間で集まって、劇団ですと名乗ればそれで成立します。公演をするためにはそこから超えないといけないハードルがいくつもあるのですが、とにかくそのハードルを下げる努力を、すでに経験者である先輩団体側が用意しておくことが重要です。特に、非大都市圏では、つながりのない所から自然発生的に劇団が成立すると、そことのつながりを作るのがかなり難しいです。とにかく情報のアンテナを広げて、いつでも気軽にコンタクトを取りやすい環境を作っておくことがぐらいしかできませんが、それをやってい置くことが重要です。
・学生演劇を盛り上げる。
非大都市圏では、学生時代に、演劇部やサークルなどで演劇を体験して、そこから仲間で劇団を作るというパターンが非常に多いです。つまり、学生演劇の盛り上がりが、地域の演劇環境に直結していきます。とはいえ、直接的に学生演劇に関わるのは、なかなか難しいのですが、学生演劇を経験した人が、そこから社会に出て、演劇に触れる場所を作っておくことが重要だと思います。
・演劇関係の情報に触れるきっかけを増やす
非大都市圏では、演劇に興味を持っても、「演劇の情報を探す」という最初の一歩がかなりハードルが高いと思われます。特に観客の絶対数が少ないので、口コミで情報が広がる可能性が低く、どうやって情報を届けるのかが難題になります。
無理して頑張れば成果は出ると思いますが、それで疲弊してしまっては意味がありません。とにかく、情報を探そうと思った人が、探しやすい状況を作り出しておくことが大事です。ネットはもちろんの事、地元メディア、特にネットの検索に引っ掛かりやすくしておくことはかなり有効です。

役者数を維持する・減らさない方法

・支援体制を作る
非大都市圏では、役者をやるといっても、仲間も少なく、勉強をしたいと思っても大都市圏のようにワークショップに行くという選択肢もすくないです。昔よりは、ネットの発達で、情報は手に入れやすいですが、実際に目で聞いて、話をする情報にはかないません。また、知らない劇団に出たいなと思っても、その足あがかりを作るのも大変です。そういった役者へのサポートをするところがあれば、役者が活動しやすいのは間違いありません。
・観客数を増やす
増やす意味でも観客数は重要ですが、役者を続ける中で、観てもらう人数というのは、モチベーションの意味でも大事です。観客が少ないとどうしても、モチベーションが下がってしまうのは仕方がないかなと思います。
・トラブルを解決しやすい環境を作る
劇団は閉鎖的な空間で稽古を重ねたり、人数が多いのでトラブルも発生しやすい条件が整っています。トラブルは予防はできても、一切なくすというのは難しいので、そういった時に、相談できる所や、解決する方法を用意しておくと、活動を継続しやすいと思います。相談しやすい先輩や、先輩劇団があれば、いいかなと思います。
・評価されやすい環境を作る
大都市圏と非大都市圏の大きな違いは、評価され方だと思います。非大都市圏でも、観客がほめてはくれますが、本当に面白かったのか?という部分や、どこがよくなかったのか?など、一歩つっこんだ評価をもらうのは、なかなか難しい所です。そうなってくると、どうすればいいのか?という方向性を見失う原因になってしまいます。ただ、そういう評価をしてくれる人を探すのは、かなり難しいです。もし自信のある作品ができたのであれば、大都市圏での公演も考えてもいいかなと思います。
・役者としての仕事・役割を増やす
役者としてのやりがいは公演活動でも得られますが、それ以外にあれば、とてもいい環境だと思います。特に、公演の演技だけをしていても、役者のスキルとしては十分ではなく、普及活動も役者の活動の一つだと思います。また、仕事として金銭が得られれば、活動もぐっと楽になりますが、なかなか非大都市圏では難しいのが現状です。

役者をやってみようと思う要因と傾向

前後する感じがしますが、そもそも役者をやってみようと思う理由や、求めるものはそれぞれで、一言で役者といってもそもそも、その分類によって、訴えかけ方を分けたほうが良いのではないかと思いました。なので、一度、役者について要因と傾向を分けてみようと思います。

役者をやってみようと思う要因

・職業として
役者というのは、テレビドラマや映画など、露出が多い職業でもあるので、将来的な職業としての役者を目指すために、役者をやってみるというのは、要因として挙げられます。
・憧れて
上記の職業まではいきませんが、憧れの役者や、劇団などがあり、演劇を経験してみたいという理由で、役者をやってみようと思う要因があると思います。
・レクリエーションとして
純粋に、レクリエーションや、コミュニケーション能力の開発の一環としてやってみるというのもあると思います。
・楽しそうだから
過去に演劇部で体験したり、他人がやっているのを見て、やってみようと思う分類です。レクリエーションと似ているのですが、上記のレクリエーションよりも、より演劇に興味がある分類として分けてみました。
・誘われて
あまり興味がないけども、やってみないかと誘われたり、人がいないので、と誘われてやってみる人もいると思われます。

役者の傾向から見る分類

・プロ志向
始める要因として、職業としてのプロを目指そうと思う状態
・体験志向
演劇に興味や、役者に興味があって、体験してみたい状態。ここからプロ志向や、レクリエーション型に変化する可能性もあり。
・レクリエーション型
職業としての役者を目指さす、演劇を純粋に楽しみたいと考えている状態
・なんとなく型
誘われてなんとなくや、あまり興味がないが、やらない!やりたくない!というほどでもない状態。

なんとなく、こういう風に、図にしてみました。どれか?というよりも、こういう感じで、どこかに寄っているか?だと思います。

分類別に、訴えかける方法論の選別

・プロ志向
技術や、作品性など、大都市型の演劇で必要なものを提供できる劇団かどうかが重要だと思います。非大都市圏で求めるものは、あまりないと考えてるパターンもありますが、若い人の場合は、知識不足で、どうすればプロになれるのか? そもそもなる気はあっても、演劇について全然知らないことも少なくないので、そこをサポートできるという所をアピールすればいいのではないかと思います。
アピールする具体的な方法は、まずは情報を届ける。公演数が多い、評価を得られるようにする。といって、「凄そう、素晴らしそう!」など、評価の高さというのが重要だと思います。
・レクリエーション型
プロ志向とは逆に、本人の満足度が高いかどうかが重要だと思うので、技術や作品性も重要ですが、ワークショップなど、役者としての充実度を上げることも重要だと思います。
アピールする方法としては、ワークショップや支援体制をととのえるなど、「楽しそう」を届けることが重要かと思います。
・体験志向
演劇に興味がある状態なので、まずは情報を届ける事が最優先かと思います。とにかく、広く浅く情報網を広げることが大事だと思います。
・なんとなく型
演劇に興味がない状態なので、アピールするのが難しいですが、口コミなど、アピールの強い方法をとることが大事だと思います。ただ、アピールしても、効果が薄いともいえるので、逆にそこは気にしないという方法もアリかと思います。

まとめ

演劇の楽しみ方として、観劇をするというのと、演技をするというのは、別の次元の楽しみ方かなと思います。そして、それは演劇に求めるものが全く違うという事でもあります。役者がいないと演劇は成立しづらいことになります。演技についても、演技論の本はたくさんありますが、どうすれば、役者が増えるのか?という本は見たことがありません。(あれば教えてください)作品のクオリティーを上げたり、演技を磨くのも大事ですが、役者の楽しさを広めるのもとても重要な活動だと思います。
 最近は、ロボット演劇等、役者が介在しない作品も生まれてきていますが、やはり、演劇は役者が舞台上で生で演じるのが魅力かなと思います。それは演劇が主に「ヒト」を描いているからだと思います。それを、生身の人が、リアルタイムに演じる面白さが、一番の演劇の強みだと思います。ただ、役者というのは、特別なものではなく、生活の延長線上にあるものだと自分は考えます。誰でもできる。そして、それ自体が楽しいということが、伝わってほしいなと思います。

つづきます。
番外編 その10はコチラ

特別編 その5はコチラ

劇作家 松永恭昭謀(まつながひさあきぼう)

1982年生 和歌山市在住 劇団和可 代表
劇作家・演出家
劇団公式HP https://his19732002.wixsite.com/gekidankita


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