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『十字名号』御掛軸のご修理

この度ご注文をいただいた御掛軸は、『十字名号じゅうじみょうごう』御掛軸と言います。本紙中央に書かれた「帰命盡十方无碍光如来」という十個の漢字で構成されているので十字名号、読み方は「きみょうじんじっぽうむげこうにょらい」と読み、意味としては「阿弥陀様を心から信じます」ということです。

この御掛軸、福井市にある浄土真宗本願寺派・平乗寺へいじょうじ様からお預かりしていたもので、『真宗重宝聚英しんしゅうじゅうほうしゅうえい』第1巻(同朋舎メディアプラン、平成18年)にも所収されている貴重なご法物です。

今年に厳修ごんしゅうされる住職継職法要に向けて、修理のご依頼を賜りました。この御掛軸には『裏書』『添状』という書面が備わっていて、

『裏書』には、永正18年〔1521〕に西本願寺第9代宗主実如上人〈第8代蓮如上人8男〉から、現在の石川県白山市願得寺にいた実悟上人〈蓮如上人10男〉に渡した掛軸だということが記されています。なんと500年前の御掛軸です!

『添状①』には、天明元年〔1781〕に第18代宗主文如上人が、「この掛軸は実如上人が実悟上人に与え、やがて平乗寺に受け継がれたもので間違いない」という保証をした内容が記されています。『真宗重宝聚英』に「第11代顕如上人の時に平乗寺に伝わった」と記述があることから、織田信長と本願寺が戦った石山合戦〔1570-1580〕で平乗寺様は大きな功績を残し、この御掛軸を譲り受けたのではないかと想像できます。

『添状②』には、法真というお坊さんが「文如上人が保証した」ということを記しています。法真さんは、西本願寺〈本山〉の役人さんだったか、福井の一般寺院〈末寺〉と西本願寺を取り継ぐ「録所ろくしょ」や「触頭ふれがしら」といったお寺の人だったかは調べておりません。

この添え状2紙も御掛軸に仕立てました。十字名号御掛軸と並べて奉懸ほうけんすることで、一層価値が高まりそうです。

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御掛軸や経巻、襖や屏風を修理する専門職を、装潢師そうこうし表具師ひょうぐしといいます。当社では、このような貴重な御掛軸を修理できる技術がありませんので、信頼ある宇佐美松鶴堂さんにお願いしました。

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※上写真は、宇佐美さんの工房で表装を選んでいただいた時の写真です。平乗寺様三代揃ってお越しいただきました。

みなさんの”信心の拠り所”であった十字名号御掛軸を綺麗にお色直しし、無事に平乗寺様へお返しすることができました。

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これからも子々孫々、”心の拠り所”となりますように!

工芸舎・F倉



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