『火鎮』伝説・玉田神社様施工しました
先日施工してきた玉田神社様をご紹介したいと思います。玉田神社様は京都府久世郡久御山町にあります。本殿は四間造という珍しい建築物で、国登録有形文化財に指定されています。
玉田神社様には、武甕槌命(たけみかづちのみこと)・天児屋根命(あめのこやねのみこと)・誉田別命〈応神天皇〉(ほんだわけのみこと・おうじんてんのう)・武内宿祢命(たけしうちのすくねのみこと)の四柱が御祭神としてまつられています。〈※HP参照しました〉
玉田神社様には火鎮の霊験(れいげん)があり、名馬『火鎮(ひしずめ)』の伝説に由来します。境内地にはその伝説の由来が記された石碑が建っています。
今回どのようなご発注をいただいたかというと、本殿の金具工事・木工事・木口胡粉塗(こぐちごふんぬり)を施工させていただきました。といっても、木工事は外注に出しています。京都市左京区の宮大工・匠弘堂さんにお願いしました。
本殿の金具のうち、六葉金具(ろくようかなぐ)と扉金具は水銀鍍金(すいぎんときん)での仕上げです。水銀鍍金は、銅地の金具に水銀を接着剤として金箔を焼き付けたもの、と考えてください。古来から用いられてきた技法ですが、需要の減少とともに施工できる業者は減ってしまい、いまでは全国でも十数社ぐらいではないでしょうか?
下の写真2枚は取り外したときの金具写真です。金具表面は錆や汚れの付着で黒ずんでいました。
下の写真は金具の洗い作業を撮影しました。希硫酸(きりゅうさん)で表面の付着物を浮かせた後に、金ブラシで洗っています。
下の写真は洗いが終わったところです。銅の地金が現れ、すっきりしました。
下の写真は水銀を塗布した後に金箔を押しているところです。金箔は何枚も重ねていきます。
次の写真は金箔を押し終わった六葉です。金箔が水銀を含んで銀色に光ります。
次の写真は、電熱器で熱を加えて水銀を蒸発させ、金箔の色が出てきたところです。
最後に磨きをかけて、苅安(かりやす)でコーティングをすれば完成です。
次の写真4枚は本殿に取り付けたところです。
すっかり綺麗になりました!
もう一つ行った工事、木口胡粉塗は材木の切り口の中で一番水気を吸いやすい木口面(こぐちめん)を保護するために施工します。
ハゲハゲになった既存の胡粉を掻き落とすことから始まります。いろいろな形状のヘラを用いて古い胡粉をパリパリと破砕し、それでも残った粉末状の胡粉は刷毛ではたき落とします。
近年では化学塗料と胡粉を混合して塗布していく場合もあり、今回はこの技法を用いました。
斗尻(ますじり)などの曲面は刷毛の動かし方が難しく、考え事などしているとあっという間にはみ出てしまいます。
今回施工させていただいた本殿は、2018〔平成30〕年に国登録文化財に指定されました。1584〔天正14〕年に造営され、1624〔寛永元年〕年、1863〔文久3〕年の改修を経て、2020〔令和2〕年に今回の改修を迎えました。木口胡粉塗と金具工事、木工事を施工したのですが、すっかり見違えるような姿になりました。
施工は平日昼間に行っていたのですが、たくさんの参拝者がお詣りになり、「いろいろな方のお気持ちが込められた神社なんだなぁ。」と感じました。
工芸舎・F倉
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