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思いを告げない理由とは

評判の朝の連続ドラマ『虎に翼』を配信で追っかけながら見ています。最近やっと追いついたところです。とてもいいドラマだとおもいます。主人公猪爪寅子を演じる伊藤沙莉さんの演技もとてもすがすがしいです。ドラマは戦争を経て、戦後の後半パートに入っていきます。

ドラマでは主人公猪爪寅子に密かに思いを寄せる男性が二人いました。裁判官の花岡さんと猪爪家に住み込んでいる書生の優三さんです。

花岡さんは優秀な裁判官でとてもシュッとした男性です。大学時代から寅子が好きで、佐賀に赴任する前に寅子を食事に誘います。プロポーズするつもりで。しかし、寅子の「そんなつもり全くありません」といった態度に接して言わずに別れてしまいます。その後、他の女性と結婚してしまい、寅子は「え?わたしのことが好きだったんじゃ……?」と感じてしまいます。

また、優三さんも「司法試験(劇中では高等試験)に合格したら」と思いながら、結局できなかったのでその思いを秘めたままでした。のちに、思いを遂げて寅子と結婚することになるのですが。

そんなふうに、このドラマの男性は自分の思いを告げないのです。それってなぜなのでしょう。よくわからない。自分が傷つきたくないから? それとも相手を思ってのこと? 

よくよく考えてみたのですが、思いを告げてしまうと、そこでその恋に決着がついてしまうのですよね。多分、どちらの場合も寅子に告白したとして、寅子は首を縦にふらなかったでしょう。だって、弁護士になることに全てをかけていたから。

ドラマはドラマだという性質上、物語を持続させなければなりません。だからこそ、思いは告げられないのではないか。ということは、現実におきかえても、同じことがいえそうな気がします。好きな人がいても、思いを告げないほうが、その人との物語はよきにつけ、あしきにつけ続いていくのです。

しかし、そんな物語がおもしろいだろうかと考えてみます。ドラマならおもしろくつくることも可能でしょうが、現実は繰り返される退屈な日常が待っているだけです。

自分の思っていることは言葉にしなければ、相手が自動的に気づく可能性は限りなくゼロに近いです。劇的なハッピーエンドも悲劇的な終わりもありません。言葉にしなければ、他人は何も気づかないままです。何も起こり得ない。

言葉は何のためにあるかといえば自分の気持ちを伝えるためにあり、だから続いていく物語が心躍るものになるかどうかは「あなたの言葉」が鍵を握っているのです。



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