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紐解く芸術~レオポルトシュタット・ガラスの動物園・雨夜の月

昨年十月、新国立劇場でトム・ストッパードの『レオポルトシュタット』を観劇しました。

中劇場1階奥の席に着き、同月に観た『ガラスの動物園』と異なり張り出された黒々とした舞台を眺めます。

『ガラスの動物園』は文庫が出版されており、『レオポルトシュタット』はハヤカワ書房の悲劇喜劇11月号に戯曲が掲載されていたので、いずれも目を通してから見に行きました。

開演直前、横をみると空席が目立ちます。

少なくともガラスの動物園はそのようなことはありませんでした。

招聘でもなければこんなものかと諦念がわきました。
制作関係者でもないのに。

観劇後、私はこの空席たちに腹立ちを覚えます。

こんなに素晴らしい作品が満席じゃない。
この舞台を観に来ないなんて。
もどかしい思いでした。

一方で、新国立劇場でないと公演が難しいことも分かりました。
営利性を求めるならば、実現できない舞台でしょう。

演劇。
ミュージカルに比べたら、ずっとエンターテインメントに欠ける。
芸術というには見苦しい人間の手あかが濃すぎる。
それでも総合芸術であることには間違いのない……。

レオポルトシュタットの観劇体験は、私にとって強烈でした。

難解というよりも、日本人が見るには必要な知識が多すぎます。
(ただ、エリザベートを観劇した方は、あの時代のやや後なので知識がすんなり入ってくるかもしれません。)

幸いストーリーに関わる歴史にはついていけたものの、ユダヤに関する知識は欠如を実感しました。

一方で、観劇後に友人とパンフレットや悲劇喜劇を引きながら紐解いていく作業も楽しかったです。

例えば、物語全体を通して語られるフロイトはユダヤ人であることに縛られ続けていました。
だからこそレオポルトシュタットにおいて、登場せずとも象徴的な人物です。

私が制作に関わっている舞台も似たもので、
あまりに深く、重く、観客を選ぶものです。

半年前、タスク管理アプリに
【新作舞台 満員御礼】と書きました。

残念ながら営利性には向いていない舞台です。

難解な作品を紐解く楽しさを伝えられたらきっと大いに売れるんでしょうけど。

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