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孤独のバイト飯

  私の職業は芸人だ。仕事はないのでお金もない。だから、派遣のアルバイトをしている。昼飯はラーメンとかハンバーグとか好きな物を食べたいところだが、最近は全てのものが高い。今まで700円くらいで食べられていたラーメンも最近は900円くらいになっている。だから、最近はアルバイトの勤務時間や労力に合わせて食べることにしている。


 駅前の大型会場 9時~20時 

 やはり11時間労働だと、食費を抑えることはできない。しかも東京なので量が少なくて高い。食費を抑えるために駅そばにしたことがあるが、やはり腹がすぐに減る。一度、初めてその会場で会ったおじさんに誘われランチの白飯食べ放題の店に行ったが、やはり950円と高い。
 
 そのおじさんはこの店で大量に白飯を食べ、一日一食という生活をしているらしい。その店も一回限りで行かなくなった。次第にその会場には段々行かなくなった。最後の昼飯は前々から気になっていた中華料理屋。タンタンメン定食850円。やはり高く感じたが、味はおいしかった。
 
完全にその会場に行くことをやめた原因は食費ではなく、若い仲間内でつるんでいるグループがあり、それを見るのがしんどかったからだ。安い店があればもしかしたら我慢できたのかもしれない。

駅から徒歩20分 小規模区民館 9時~17時


 飲食店などあるはずがない。あったとしても地元民が行きそうな居酒屋くらい。何があるのか分からず調べると、サンドウィッチの店があることが分かった。
 この会場は人は来ないし、休憩を沢山取らせてくれるチーフの為、サンドウィッチ2つぐらいでエネルギーは十分だ。
 サンドウィッチの種類は多く、バラエティーに富んでいたが、私は値段が安いものを選んだ。ブルーベリーとハムカツ。計450円。味はおいしくまた食べたいと思ったが、もっと値段を抑えられると思った。
 私は実験的にコンビニのパン2つにした。200円ちょっとで済んだ。業務が少し忙しいと少し辛いが、暇だと全然大丈夫なことが分かった。
 それからというもの、私はその会場ではコンビニでパン2つを買って公園で子供が遊んでいる様を見ながら、パンを食べるルーティンが定着した。何度もそれを行うと私はなんで生きているのか分からなくなる。富士の樹海に行ったかのような気分になる。常に孤独だった。しかし、私は止めなかった。
 
 チーフがおにぎり2個のほうがいいのではとアドバイスをもらった。しかし、コンビニもスーパーもおにぎりは以外と高く2個で250円くらいだったので1回きりとなった。
 私はこの会場が好きだったが、人が来なさ過ぎて閉鎖した。

千葉県の文化会館徒歩20分 9時~17時

 この会場も人はあまり来ないので昼飯は省エネモードにした。
 
 ラッキーだった。スーパーOKがあった。地元にOKが無いからよく知らなかったが、物が安い。そして美味しい。コスパがいいと思う。最初はパンに2個にした。組み合わせ次第で200円を切る。しかし、OKは種類が多くそして美味しいのでそこから、4分の1カットのピザ2枚になり、最終的には300円弁当になっていた。300円にしては量が多いので満足である。
 OKのかつ丼は忘れられない。カツにお出しが美味しかった。そして厚い。
 
 私はいつも弁当は会場で食べるのではなく、OKの真横の道路で食べていた。何故かというと、会場の休憩室が狭いからである。道上で立って食べるから、カツを砂の上に落としたこともある。しかし、私の中ではOKで弁当を買って道路で食べるルーティンが確立していた。

 一度その会場で初めて会った大学生に「いつもどこで食べているんですか」と言われた。私はルーティーンを説明すると、一緒についていきたいと言われた。
 一緒にOKに行き、そこの社員でもないのに商品の説明を行った。彼は300円のエビ天丼とおにぎりを買って、私と一緒に道路で食べた。

 私は彼に「あと2時間くらいしか働かないし、金もないしこのくらいの昼飯で十分でしょう。」と言った。彼は「それ正解です。」と褒めてくれた。


 食費は積み重ねて、馬鹿にできない金額になる。本当は好きな物をたべたいけれど、昼飯を抑えることによって人との出会い・ふれあいを感じることができることを私は知った。お金持ちの人も一度昼飯を抑えてみればいかがだろうか。


 




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色々な記事を書きたいです。