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崇拝する夢野久作先生へ

夢野久作先生、あの世でどうお過ごしですか。

私はあなたに魅了されて、あなたに研究人生を狂わされたと言っても過言ではない。
でもそれは、後悔なんかじゃなくて、むしろ先生を知れて良かったと思って居ます。
たくさん私に美学を教えてくれてありがとうございます。
あなたに費やした三年間も、私の卒業論文も、あなたの作品に恋したから
出来たことです。

今回は根拠や文献が必要な考察や論文とは別で聞いてくれるとありがたいです。

夢野久作先生、あなたはずっと死にたかった気がしてならない。

夢野久作先生は、私と似ている気がしてならないのです。
先生が心を病んでいた記録も、証言も、日記も、何もない。
むしろ、全うに人生を生きていた、端から見たら幸せなくらい、でしたね。
父の存在は大きく、プレッシャーに感じていたかもしれませんが、あなたと関わりのあったひとの証言からはそのくらいの根拠しか得られなかった。日記は殆ど心情というよりか出来事を書いていた様な印象でした。何年かすっぱりと(あなたの父がなくなったころでしたっけ)残っていないことも私は研究する上でもどかしくもありました。
それにどの作品にも、裏付けを取って事実を元に創作していたくらい真面目だったんですよね。とても真面目でした。


でも、あなたの猟奇趣味、探偵小説、エログロナンセンスとあなたの人生・考え方・真面目さが結びつかなかった。

だから、あなたの本当の気持ちについて考えてみたんです。
論文や発表には根拠がないから使えませんでした。でも、ずっとあなたについて考えていました。

久作先生は、乱歩先生とは違うとは思って居ます。乱歩先生は少なからず、性癖としての作品だった。
卒論で書いたように乱歩先生とは違ってあなたの作品には、美学があった。けれど、そこまでしか書けませんでした。

ここからはしがない24歳の考察に過ぎません。
私は、あなたはとても疑り深く、臆病で、作品は世間の瀉血なんて言いながら、もしかしたら自分の瀉血もしていたのではないですか。
あなたはとても真面目だ。わたしもそう思うのです。
でもその作風はグロや猟奇、気が狂った人間の話、死体、諸々・・・もちろん根拠があったのだろうとは思います。あなたのジャーナリズム性の裏付けはとれています。
けれど、私が思うに、真面目故に、心の闇を誰にも言えなかったのではないですか。
大きすぎる父の存在、平凡な家庭環境、名前を「探偵小説家」として売っていたこと。
全てがあなたの闇を打ち明けるには要素として大きすぎたのではないでしょうか。
太宰先生のが恐らくわかりやすい。作品でも(たぶん)日記でも分かる要素がたくさんある。けれどあなたの文献には何もない。私はずっともやもやしてきたのです。
先生、もしかしたらあなたの心の中は太宰や他の自殺を選んだ文豪と何も変わらなかったのではないですか。
あなたの周りには父の存在故に有名人が多かったのでしょう。
だから太宰先生みたいに日記や文献や手紙に残す勇気も、人に打ち明ける勇気も無かったのではないですか?
作家として、父の息子として世の中に認知があったから。世間に出てしまうからです。世間とは言わなくても、後世に残ってしまうから何処かに書かれるかも知れないという疑り深さから息子にも妻にも父にも母にも言えなかったのではないですか。
更に言えば、あなたの家庭環境や家柄は端から見たら問題なくて、余計に自殺という道を選べなかっただけなのではないですか。
この世のエゴを、不条理さを、ずっとひとりで抱えてきたのではないですか?

だから、そんなあなたの捌け口は、本当に、当時の風潮に乗せたエログロナンセンス、猟奇趣味でしかなくて
あの話を読んだとき、確かにあなたを天才だと思った。美学も感じた。けれど私はあなたに魅了され続けてしまったのは、そういったものを、あなたのSOSを、なんとなく感じたからなのかもしれません。

でもこの話はもう少し続くかも知れません。その時はまた、あなたに追記として認めたいと思います。

三年間、あなたに恋い焦がれた私の、勝手な憶測です。あの世で違ったのなら「それは違うよ」とお笑いくださいませ。

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