OASIS北イングランドの憂鬱

冬の憂鬱な寒空になったり
冷たい雨が降ったりすると
無性にoasisを聴きたくなる。
これは夫の故郷の北イングランド地方に6年暮らした間に身体に染み込んだ
反応のようなものに違いない。

Lately have you ever felt the pain
In the morning rain that soaks you to the bones
(Live forever)
最近あの痛みを感じたかい?
朝の雨が骨まで染み入るようなあの痛みを??

Who kicked the hole in the sky
So that the heaven cries over me?
(Let there be love)
誰が空を蹴って穴を開けたんだ?
天が俺の真上で泣いてるよ

北イングランドの天気は本当にこうなのだ。何週間も暗く寒い日が続き雨が降り止まない。横風が強すぎて傘を差しても壊れちまうからコートを着て頭までフードを被ってポケットに手を突っ込んで背中を丸めて(Liamの歌う姿のように)濡れた石畳を歩くしかない鬱屈だ。

イギリスの現状を知らなかった私と夫は田舎のとても牧歌的な村にある庭付きの素敵な貸し家を見つけて住んだことがある。

住み始めてから知ったのはそこはいわゆるCouncil Estate(低所得者用の住宅)のど真ん中で隣近所の家庭はみな3代に渡って失業手当をもらっている家庭だったり3代に渡って麻薬中だったりいわゆる訳あり家庭だった。


もちろんにこやかに挨拶してくれるご近所さんも沢山いるが怪しげな人も多い。(でも東洋人の私には優しい。)
特にその界隈に住んでいる子供たちの暗い表情は特筆すべきものがあった。

うちの庭先のお気に入りのライラックの木の陰で近所のおそらく10歳、
11歳くらいの男の子と女の子がフードを深く被って(イギリスではHoodieと呼ばれる)暗い表情で話しながらタバコを吸っているのを目撃するたびに
なんて暗い希望のない目をしているんだろうと悲しくなったもんだ。
(もちろん声はかけない。怖いから)

その家は3年ほど住んで引っ越すことになったが
その間に車が盗まれる事件、
車のウインドウ割られる事件
(もちろんワールドカップでイギリスサッカーチームが負けた夜)
向かいの家の車が炎上した事件、
その後その炎上した車の持ち主は麻薬の取引がらみで殺された事件
(被害者の母親はシングルマザーの看護師で働き者のお母さんだった)
隣の家のおじさんは実の娘に長年性的虐待を加えていた件で服役した事件、
などなど、実に色んな事が起きた。

おそらくそれに近いような(マンチェスターの都市部はもっと深刻だろう)
環境で父親の虐待から逃れた母親と身を寄せ合って暮らし成長したであろう
あのチンピラのような兄弟たちがその鬱屈を毒と一緒に吐き散らすように歌うのを聞くとあの暗い暗い北イングランドの空を思い出すのだ。

でもそれが不思議と力をくれる。
やってられっか、でも負けないぞ。
FXXX OFF!!!
みたいな元気を与えてくれる。

特に今年のような冬。
パンデミックで世界中が打ちのめされて寒くてお金がなくて仕事もうまく行かない、出口が見えない、気持ちがやたらと滅入るこんな冬には。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?