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七月の読書録と積読状況

 八月になりました。
 毎日暑いですね。わたしは死にかけた虫のような状態です(笑)。
 エアコンのきいた部屋で、何かしら文章を書いてから、映画や読書や音楽や、とにかくインドアで過ごしています。横になっている時間も増えました(汗)
 さて七月に読んだ本と併読・積読状況を書きます。


読了した本


「百年の孤独」ガルシア・マルケス

 今月、いやもしかすると今年読んだ本の中で一番面白かったです。感想文は以下の通りです。

「あたしの一生 猫のダルシーの物語」ディー・レディー
猫好きにはたまらないお話です。

「君が手にするはずだった黄金について」小川哲
 感想にも書きましたが、作家を目指す方にお勧めしたい本です。

「生まれてきたことが苦しいあなたに」大谷崇
 
思想家エミール・シオランの入門書です。思想家シオランの生涯や名言、主な思想について語っています。シオランは「生きることは自殺の延長だ」と主張したり、怠惰を称賛したり、とにかく常識的には「負」と位置づけられる行為や感情を肯定するペシミストですので、前向きに元気よく生きている人にはまったく刺さりません。逆に厭世的な思想を持ち、生きることが苦行に思えるような人には全部とは言いませんが共感する部分があるはずです。
 ただでさえ生きるのが苦しいと思っているのに、ネガティブな思想の本を読むべきではないと考えるかもしれませんが、それはちょっと違うと思います。鬱の人に「がんばれ」というのは御法度と言われますよね。落ち込んでいるときに、ポジティブな言動や思想に触れても偽善に見えるだけで心に染みません。むしろとことん落ち込むような暗い本を読んだり鬱々とした音楽を聴いたりすると、かえって癒やされるものです。例えば、死んでしまいたいくらい辛いときに中島みゆきの「生きていてもいいですか」(彼女のアルバムで最も暗いアルバム)の「エレーン」や「異国」を聞くと意外と元気が出てきたりします。
 この本は入門書でシオランの思想を深く掘り下げてはいませんし、好き嫌いがはっきりわかれる思想家なので、最初に読むには丁度良いのでは無いでしょうか。わたしは根っから厭世家でシオランに共感する部分も多くありますので違和感なく読めました。ただ、彼の著作を読んでみようとまでは思いませんでした。「カイエ」とか高いし。なので、シオランはこの本でおしまいにします。

 七月に読了した本は以上の四冊です。併読増やしすぎて量を読めませんでしたが、その分『百年の孤独」をしっかり読めたので満足です。

現在読んでいる本と併読状況

 厄介なことになっています。手を広げすぎました(笑)。ちょっと整理するつもりです。

吉村昭の平家物語
 これが今のメインです。非常に面白い!ただ今源平合戦が盛り上がっているところですが、合戦自体よりも仏御前の話とか、細かい逸話が心に残る。本当は、完全版を読もうと思っていたのですが分厚いため、挫折するともったいないので評判の良いこちらをまず読むことにしました。

自分ひとりの部屋 ヴァージニア・ウルフ
  ずっと読んでいますが、まだ半分くらいです。一九世紀から二十世紀初頭にかけて女性が文学を生業とすることがいかに難しかったかがよくわかります。女性は家を守り飯を炊いて洗濯していればよい、政治や芸術に口を出すなというのは、日本に限った話では無く(日本はかなり遅れていますが)、男女平等の先進国の西欧であっても当時は似たようなものだったことがわかります。
 また女流作家は今では珍しくなくなりましたが、画家、音楽(ここでいう音楽はわれわれがクラッシックと呼ぶジャンル)の世界ではまだまだ少ないです。しかしなぜそうなのか。どうすれば女性は芸術において偏見で見られることがなくなるのか、ウルフは絶妙の語り口で極めて美しく、流暢に述べます。ひとつの小説のようです。
 また様々な先人の芸術家の名前が出てくるので、勉強にもなります。アフラ・ベーンなくしてブロンテ姉妹もジェイン・オースティンもなかった。文学史の勉強にもなりそうです。ウルフの小説は難読ですがこの本は読みやすいのでおすすめです。女性に特に読んでほしい本です。

青と緑 ヴァージニア・ウルフ
 笑っちゃいますが、上の随筆を読んでいるのに短編集に手を出してしまいました。こちらは小説です。はっきりいって慣れるまでは読みづらいです。大した事件も何も起きませんので、ひたすら「意識の流れ」だけ語られるのですがそれが美しい。翻訳者を尊敬します。
 表題作「青と緑」なんてとても短い作品ですが、完全に一枚の絵です。冒頭からしてこうです。

玻璃の尖った指先はみな下方を差している。光はその玻璃を辷りおり、滴って緑色の水溜まりを作る。一日中、玻璃の枝つき燭台の十本の指は大理石の上に緑を滴らせる。

青と緑

 こういう描写が延々と続きます。何も起きません。そこがまたいいのですよ(笑)。しかし、短編とはいえ同じ作家二冊併読はちょっとまずかったと反省。

箱男 安部公房
 
昔読んだものを再読しているので筋は知っているのですが、半分くらいで止まっています。箱男は砂の女とは違って途中から難しくなるのでウルフを読み終わるまで一度止めるかもです。未読の「カンガルーノート」を早く読みたいのですが。。。

砂の本 ホルヘ・ルイス・ボルヘス
 短編集です。ラテンアメリカでもマルケスとは違う不思議な世界が展開されます。ひとつひとつの話は短いし面白いのですが結構難解です。ラテンアメリカ文学にはまりそうです。

イラクサ アリス・マンロー
 
本当は、この短編を優先して読むつもりでした。ところが、ウルフにはまってしまったためなかなか進みません。ただ、こちらは、難解ではないし、いかにも短編の名手らしく物語がきっちりできているので数日に一編ずつ急がずに読んでいきたいと思っています。

アリス物語 ルイス・キャロル(芥川・菊池翻訳版)
 
誰でも知っている不思議の国のアリスですが、このたび芥川・菊池翻訳版を買ったので毎日少しずつ読んでいます。挿絵も可愛いし、語り口が今風と違って大正時代の香りがして素敵ですよー。子供たちがわくわくするというのかな、大人でもわくわくします。

積読状況

 積読というと桁が違う数になるので、とりあえず読みたい本、読む予定の本のみ挙げます。

カンガルーノート 安部公房
最後の物たちの国で Pオースター
ロリータ ナボコフ
ブルックリン物語 ピート・ハミル
予告された殺人の記録 ガルシア・マルケス
コルタサル短編集
ペンギンの憂鬱 アンドレイ・クルコフ
アルケミスト パウロ・コエーリョ
月曜か火曜 ヴァージニア・ウルフ

このあたりでしょうか。ラテンアメリカ文学にはまっているので、また変わるかも(笑)
それではまた。

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