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サンタクロースになった日のこと
2度、サンタクロースになったことがある。
最初は、両親を相手に。2度目は、恋人でも友達でもないあの人に。
2人の予定がたまたま合う日。12月23日の夜。24日ではないところにかえって清々しさがあって、居心地がいい。
クリスマスなんて知らないような顔をしながら年末らしい番組を見て、鍋をつついて笑いあう。もちろん、お酒も飲みながら。
鍋もあらかた片付いたころ、いつものように彼がシャワーに向かう
偽者のままで遊ぼう ゆびきりをしながら針を飲み込むように
あふれだすマジックアワー 魔法ならもっとじょうずに泣けないのかよ
変わらないもの いかさまのキスをしたあと髪の毛をいじる癖とか
やさしさは甘えるための言い訳で三日月みたいな背骨をなぞる
うつくしい夢を見るためできるだけ銀河を深く深く吸い込め
特別じゃないはずのひと ウィルキンソン はっ、と弾けてそれでおしまい
溶けていく星空のこと 見たこともない色たちをもっと教えて
残像が絡まる前に手
停止線まであとすこし
夢のなか流星群をつかまえて叫んだたったひとつの願い
頭上には月しかなくて完璧な夜を迎えに行くため歌う
三崎口行きの電車で嗚咽、嗚咽 好きの証拠はまだ変わらない
ひさしぶり、なんて現実めいたこと言いたくないし言わないでいて
自転車のうしろで触れた懐かしい体温 匂い 心臓の音
しいたけに猫のかたちの切れ込みをいれる背中の丸い輪郭
痛いのはおんなじなのに まだそんなつらそうな顔して笑うんだ