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商材特性を活かしたコミュニケーション・ミックスの話。

ウェブ解析士のnoteをご覧いただきありがとうございます。
今回は「商材の特性を理解して、コミュニケーション設計をしてみよう!」という点について書いてみようと思います。

コミュニケーション分類『プッシュとプル』

商材特性を理解する前に、まずはコミュニケーションの2分類を理解しておきましょう。商材特性によって、以下の2つの要素に強弱をつけていきます。

プル的コミュニケーション

プル的コミュニケーションは、直接的に消費者に働きかけるコミュニケーションです。
広告やメルマガ、試供品の配布などが当てはまります。
プル的コミュニケーションの特徴は、自社ブランドに対する選好意識を促し、指名買いしてもらえるように努力するという点です。
ウェブ解析に携わる方がまず連想するのは、このプル的コミュニケーションではないでしょうか。

プッシュ的コミュニケーション

プッシュ的コミュニケーションは、間接的に消費者に働きかけるコミュニケーションです。
すなわち、営業メンバーへの販売インセンティブや、流通業者への卸値の値引き・販促費の助成などを利用し、流通の過程で顧客に対して自社製品を推奨してもらう手法です。
プッシュ的コミュニケーションは自社商品を優先的に売ってもらおうとする働きかけになります。

プッシュとプル 選択の基準

この2つのコミュニケーション分類、選択の基準は至ってシンプルです。
それは、「指名買い」が期待できるか。です。
指名買いが期待できる場合、プル的コミュニケーションでブランドの認知率とプレファレンスを高めることに重点を置きます。
一方、指名買いが期待できない場合は、流通戦略に重きを置いて流通業者や販売員から消費者へ教育を行ってもらうことに重点を置いていきます。

指名買いへの期待度合いに応じて比率を変動させます

商材特性を理解するための【消費者行動類型】

さぁ、ここからが本題です。商材特性を理解するために【消費者行動類型】というフレームワークを活用してみましょう。
消費者行動類型とは、縦軸に「購買関与度」、横軸に「知識」をとって消費者の行動パターンを紐解くフレームワークです。

「購買関与度」とは

「購買関与度」とは消費者が購買意思決定のときに感じるストレスの程度といったら良いでしょうか。「失敗したくない」心理のことですね。
高額な商材や購入頻度の低い商材ほど購買関与度は高くなる傾向にあり、購買関与度が高いほど、消費者は情報を集めたがります。

「知識」とは

「知識」は、消費者が持っている商材に関する情報量のことです。
知識を多く持つ消費者ほど提供する情報の要約が必要なくなります。
例えば、カメラを趣味にする人に対して「解放F値が2.8、ISO感度はMAX25600、画素数2000万画素」という情報を提供すると「ふむふむ」となり検討材料にしてくれそうです。
一方で、初めてカメラを買う人に同じ情報を与えるとどうでしょうか?「さっぱりわからないからスマホでいいか」となってしまうかもしれません。
これを要約して「一眼特有の綺麗なボケが表現できて、暗いところでも綺麗に映る!スマホの画素数の約2倍で拡大印刷でも綺麗なまま」と伝えると結果が変わるかもしれませんね。

4つの類型

購買関与度と知識についての理解ができたところで、早速マトリックスを確認してみましょう。
概要は下図の通りです。

購買関与度”高” × 知識”低”

この象限に当てはまる商材の消費者は、情報を集める意欲はあるが、現状では情報量が不足しているタイプです。
注文住宅のように単価が高く、購入頻度の低いものがよく当てはまります。
こうした商材では、いきなりの指名買いは期待できないので、製品やブランドに関する理解を支援するようなコミュニケーション=「プッシュ方式」でのコミュニケーションが有効です。
この型に当てはまる場合、注意しなければいけないのは購買後の「認知的不協和」です。
購買後の認知的不協和とは、簡単にいうと「この商品で良かったのかな」というストレスを抱える状態とでも言いましょうか。高額な商品を買った時って「悩んだ末に買ったけど、あっちの商品の方がよかったかな」と隣芝青現象起きませんか?まさにそのことなんですよね。
なので、「知ってるブランドだから信頼できる」と思ってもらえるように広告などのプル方式でのコミュニケーションも求められます。
また、売って終わりではなく、購入後のアフタフォローもしっかり行う必要があります。「あなたの選択は間違っていませんよ」と伝えることも重要になってきます。

購買関与度”高” × 知識”高”

この象限に当てはまる商材の消費者は、知識もある上に情報収集にも積極的で、選好意欲が非常に高いのが特徴です。
趣味のカメラなどが当てはまるかと思います。
選好意欲が高いので「指名買い」が十分に期待できますので、広告などのプル的コミュニケーションが効果的です
また、CtoCコミュニケーション(他の消費者への拡散)も期待できるのでSNSなどを通して継続的なコミュニケーションやUGCをいかに作るかなども重要になってきます。
世界観を作り上げ、信者とも呼べるファンを創出するブランディングなどが効果を発揮する商材とも言えます。
さらに、この象限の消費者は購入するフェーズになくても継続的に情報を収集する傾向があるので(情報を集めることそのものが趣味になっているような)、タッチポイントを広くとり、常に情報を発信しておく必要があります。

購買関与度”低” × 知識”低”

この象限については、情報に無関心な消費者という特徴が大きいです。
思考停止して購入するような消耗品などが当てはまります。私も歯ブラシなどは磨ければなんでもいいと思い、店頭にある一番安いものを買ってしまいます。
要するに、「指名買い」は期待できないので、店頭で目立つための流通戦略が必要=プッシュ的なコミュニケーションに重きを置いた方が良いです。
また、マス広告を利用して認知率を上げ(プル的要素)、できるだけ欠品のないように配荷率を最大限にする努力(プッシュ的要素)が重要です。
マーケターなら憧れるP&Gのマーケティング手法はこの象限に当てはまるケースが多いですね。
この象限の商材は「バラエティ・シーキング」が起きやすいという点も大きな特徴でしょう。
バラエティ・シーキングとは「特に現在使用している商品に不満はないけど、他社製品に浮気してみよう」といった心理ですね。
シャンプーとか毎回思考停止で同じものを買うけど、たまに新商品が出てたりすると試してみたくなりませんか?そんな真理のことを指します。
比較的低価格で、購入頻度も高いので「別に失敗してもいいか」と思えるからなんでしょうね。
なので、他社の消費者を奪うチャンスがある一方で、自社の消費者の流出にも気を配らなければなりません。

購買関与度”低” × 知識”高”

この象限に当てはまる商材の消費者は、自身の持っている知識に基づいて購入判断をするので、新しい情報には消極的です。
例えばですが、私はMacbook Airを愛用していますが、その前もMacbook Airでした。Macbookが優れていることはわかっているから、特に情報探索はせずにほぼ思考停止でMacbookです。
このように経験に基づき判断するため、ほぼ指名買いです。
他のブランドに浮気されないように、広告を打つなどのプル的コミュニケーションが有効的です。
一方で、別に探索意欲も高くないので店頭で見つけることができなければ「別にいいや」というタイプの消費者なので、店頭での露出や配荷率の最大化などプッシュ的なコミュニケーションも非常に重要になってきます。

あとがき

今回も最後までお読みいただきありがとうございます。
プロモーション領域が長いマーケターの方だと、どうしても広告領域(プル的コミュニケーション)などに施策が偏ることがあります。
しかし実は、商材によっては配荷率をあげるほうが効果的な場合もあり、流通戦略を必要とする場面も出てきます。マーケティング予算は不足しているのが常なので、いかに効率よく効果の出る施策に予算を振り分けるかを今一度検討していきたいですね。
プッシュ的なコミュニケーションはアクセス解析だけでは見えて来ないので、この記事がウェブ解析に携わる方にいつもと少しだけ違った視点を提供できれば幸いです。

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