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創造性を広げる問いの作り方

今週もウェブ解析士のnoteをご覧いただきありがとうございます。
ウェブサイトを作るときも、マーケティングキャンペーンを実施する際にも、もっと言えばプロダクト開発の際にも必ず必要になってくるのがコンセプトの開発です。誰のどんな課題にどうやってアプローチして、解決に導くのか。何をターゲットに訴求するのか。
そんな時に役立つのがリフレーミングという視点を変える手法です。今回はそんなリフレーミングについて記してみようと思います。


リフレーミングとは

リフレーミングとは、視点を変え、視野を広げ、それまでとは違った領域で思考するための問いの変換をさします。
例えば、自動車の耐久レース、ル・マン24時間耐久レースで3連覇したアウディは「もっと速いエンジンを作るには?」という問いを「レース全体を通して勝利するには?」という問いに変換したことで、ピットインの回数を減らす=燃費を良くするという解決策を導き、ディーゼルエンジンを採用することで速度性能は他社が採用するガソリンエンジンに劣るものの、効率性で優勢に立ちレースに勝利することができました。
このように視点をずらすことで、今までにない解決策を導く可能性を生み出すのがリフレーミングです。
リフレーミングをする際は以下のフレームワークを活用して、8つの視点で問いを立て直すと良いそうです。

細田高広『コンセプトの教科書』をもとに作成

ひとつずつ見ていきましょう。

8つの問い

①全体の問い

部分最適で考えずに、より広い視野で問いを立て直してみようというのが「全体の問い」です。
先ほどあげたル・マンでのアウディの事例がこれにあたります。
ウェブ解析で考えると以下のような感じでしょうか。

部分の問い:CVRを上げるには?

全体の問い:売上を増やすには?

②主観の問い

客観的な視点の問いはコモディティを生み出します。AIが普及しつつある今、その傾向は顕著になっています。競合他社も同じような発想をする以上、そこに勝機を見つけるのが難しくなっています。一方で、データから生み出すことのできない、主観によるイレギュラーな解答が創造性を生む可能性があります。
白無地Tシャツの専門店は「白Tを流行らすには?」という客観的な問いから離れて、白Tが好きという主観から「白Tを正装にするには?」という主観的な問いを立てることで成功しています。
ウェブ解析で考えるとどうなるでしょう?

客観の問い:ウェブ解析を普及させるには?

主観の問い:アクセス解析だけでなくビジネス解析もウェブ解析に含まれると知ってもらうには?

とか、そんな感じでしょうか?(中の人はアクセス解析より理論的なマーケティングによるビジネス解析が好きなのです…)

③理想の問い

ビジネスをしていると、現実的な問題に直面することが多いですが、目先の問いばかりを追いかけると視野が狭くなります。そこで、現実の先にある理想を問いかけると視野が広がるそうですよ。
例えば、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」というエンターテイメントコンテンツは「視覚障害者がストレスなく仕事ができる環境は?」という現実的な問いを「視覚障害者が強みを発揮できる環境は?」という理想を追い求めることで生まれたそうです。

ウェブ解析で考えるとどうでしょう?

現実の問い:アクセス解析環境を整えるには?

理想の問い:ウェブ解析を民主化するには?

④動詞の問い

物事を考えるとき、多くの人は名詞で考える傾向にあるようです。例えばこれからの「ウェブ」はどうなっていくのか、「マーケティング」はどうあるべきかといった感じですね。名刺で考えると、固定観念に縛られてしまうそうです。なので、名詞ではなく動詞で考えるとより柔軟な発想ができるのだとか。例えば、トヨタが「自動車」という名詞から「移動すること」という動詞に置き換えて「モビリティカンパニー」と称するようになったのが代表的な事例ですね。
重要なのは、問いの重心をモノからヒトに移すことなのだとか。
ウェブ解析で考えるとどうなるでしょう?

名詞の問い:ウェブ解析はどうあるべきか?

動詞の問い:データと向き合うときの心構えは?

⑤破壊の問い

今までの常識を破壊するような問いを立てるのも有効な手法なのだそうです。
例えば、ネットフリックスの創業者はレンタルビデオの延滞料金に腹を立てて、レンタルビデオの延滞料金という業界の常識を破壊するには?という破壊的な問いを立ててサービスを作ったと言われています。
ウェブ解析の常識ってなんでしょうね…?

創造の問い:関係者が誰でも解析データを見れるようにするには?

破壊の問い:解析は難しく、専門知識が必要という常識を覆すには?

こんな感じですかね?

⑥目的の問い

マーケティング近視眼で度々事例に上がるアメリカの鉄道会社。自社のドメインを「鉄道」と絞ってしまったために、衰退したという事例です。これを乗り越えるには、今課題としている対象を一つの手段としたときに、目的はなんなのかを問うことだったとされています。このように、対象を手段と捉えその目的を問うことも創造的な発想には必要になりますね。
ウェブ解析で考えるとどうでしょう?

手段の問い:ウェブ解析を身に付けるにはどうしたらよいか?

目的の問い:ウェブ解析を身に付ける目的はなんだろうか?

⑦利他の問い

とある調査によると、現存するブランドのうち75%は「今すぐ消えても困らない」ブランドなのだそうです。では、どんなブランドに残って欲しいのかというと、ソーシャルグッドなブランドと73%もの人が回答したそうです。
なので、利己的な問いを、利他的な問いに置き換える必要がありそうです。
ウェブ解析で考えると、どうでしょう。

利己の問い:ウェブ解析を利用して、売上を上げるには?

利他の問い:ウェブ解析を利用することは、誰にどんなメリットがあるのだろうか?

⑧自由の問い

ここまで出した7つの問い以外に、何か価値がある問いはないだろうか?と考えるのが自由の問いですね。縛りがないので考えるのが難しそうです。
「ウェブ解析ってそもそも必要なの?」と疑ってみるとかですかね。

まとめ

以上、リフレーミングについて解説しました。コンセプトの開発はウェブサイトやマーケティングにおいて重要です。リフレーミングを活用して、問いを変換することで新たな解決策が生まれます。また、利他の問いを考えることでソーシャルグッドなブランドを作り上げることができます。
今回は細田高広さん著『コンセプトの教科書』から、問いの立て方を紹介しました。この本ではコンセプトをどうやって考えていくのかという手順が事例や独自のフレームワークと共に紹介されていますので、興味のある方はぜひご一読ください。

あとがき

今週も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
今回ご紹介した本は、年始の休業期間に読んで面白かった本です。コンセプト開発については何冊か読んだのですが、中でも一番「中の人」の思考に馴染んだ本でした。
ウェブ解析って、どうしても「解析」という言葉に引っ張られてアクセス解析のような数値的なイメージが強いですが、デジタルマーケティングを網羅するような学習内容なので、ちゃんと身に付けるとコンセプト開発のような、より上流の考え方も分かって面白いと思います。上流から俯瞰してみていくと、アクセス解析の仕方も変わっていくような気がします。
それではまた来週お会いしましょう。

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