Jリーグはフーリガンや人種差別を根絶し、審判が暴行されることもない。世界一安全にフットボールが行われているリーグ・日本であり続けて欲しい

「フットボールは、お互いが100%の力を出してプレーするので、こういう事態が起こりうることは皆知っています。2点目の場面では、お互いが全力を尽くした結果、両選手が負傷してしまいました。注意しても注意しきれない難しいシーンでしたが、こういうことになってしまい非常に残念です」

ベルデニック監督の言葉通り、非常に難しいシーンが起きた。

2013シーズンJ1第10節、大宮アルディージャ×サンフレッチェ広島戦の84分。GKのパントキックが裏に抜けた所に、大宮の富山が反応し、ヘディングに行く。それを防ごうと、広島のGK増田も飛び出す。ボールは富山が先に触り、値千金の決勝ゴールが生まれるのだが、そのまま両者は激しく激突してしまう。

富山のヘディングは【無謀な方法】ではなく、しっかりとボールにプレーできている。GK増田のプレーイングディスタンスに遅れて入っていったわけではない。【危険な方法】というより、佐藤寿人のいう「FWはゴールを決めるために、GKはゴールを防ぐために生まれた事故だと思うので、そこは仕方の無いことだと思いますし、そういった勇気を持てなければゴールを決めることも、ゴールを防ぐこともできません」という言葉通りのシーンだったと思う。

選手やサポーターもそれを理解し、審判団に不満をぶつけることなく、「レフェリーもコントロールした中でメディカルスタッフとコミュニケーションを図って試合を進めた」(佐藤)ため、険悪な雰囲気にもならなかった。また、病院に搬送される両選手に対し、大宮サポーターは増田へ、広島サポーターは富山へのコールを送る。
試合後、佐藤は広島選手を引き連れ、大宮サポーターのいるゴール裏へ挨拶に向かう。
「お互いに傷を負ったと思いますし、それでも紳士的に対応をしてくれました。お互いをリスペクトするという意味では素晴らしいことだと思いますし、しっかりと感謝の気持ちを伝えなければと思いました」

試合後、森保監督は、フットボールとは何かというのを教えてくれた。

「もちろん対戦相手なわけですけど、一つのゲームを作る仲間でもありますし、それはチームの垣根なく、審判も含めてゲームを作る仲間がああやって対戦相手である我々に声援を送ってくれる事は非常に仲間としてありがたいと思いました。ゲームをしている時は勝利を目指してぶつかり合う相手ですが、思いやりをもって選手に励ましの言葉をもらえることに感謝の気持ちを持ちたいと思います」

怪我から復帰した相手選手にブーイングを送ったり、アウェイチームが喜ぶことを許さなかったり、審判に全ての責任を負わせる人たちもいる。それは個人の自由だし、「海外では当然」なのかもしれない。ただ、私はこの試合を見てこう思った。Jリーグは、これでいいのだ、と。

フーリガンや人種差別もなく、審判が少年に暴行されることもない。世界一安全にフットボールが行われている国であり続けて欲しい。

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