見出し画像

DeFi_#7:DeFiはどう動くか - スマートコントラクトとガバナンストークン

DeFi プロトコルは スマートコントラクト 群によって構成されています。また、非中央集権であり特定の運用主体がいないDeFiプロトコルは、ガバナンストークン保有者による「ガバナンス投票」によって、プロトコルの発展の方向性が決定されます。この単元では、DeFiプロトコルに欠かせないスマートコントラクトとガバナンストークンに着目し、それぞれがどのような役割を担っているのかを解説します。


複数のモジュールで動かし、修正や追加は投票で決める

まず、DeFiプロトコルの動き方を解説します。

DeFiプロトコルは特定の機能を担うスマートコントラクトをモジュール(構成部分)と見なして、複数のモジュールを組み合わせることで、目的とする金融サービスを提供しています。個々のモジュールは単一の機能を担っています。

例えばレンディングプロトコルは、ユーザーが担保を提供するためのスマートコントラクトアドレス(モジュール)、担保を管理するためのモジュール、担保を清算するためのオークションモジュールなどによって構成されています。様々な単一の機能を提供するモジュールが集まり、それらのモジュールが相互に作用することで、DeFiプロトコルは必要なサービスを提供しています。

これはまるで、機械が様々な役割を担う部品で構成されていることに似ています。ユーザーが洗濯機のスイッチを押して操作をすると、制御基板を通して電気が電力源からモーターへ送電され、モーターの動力がクラッチやベルトを通して洗濯槽を動かし、洗濯・ゆすぎ・脱水などの選択した洗濯コースが自動で実行されます。

ユーザーはモーターや制御装置など個々のモジュールに対して、個別に操作をする必要がありません。最初にスイッチを押すと、個々のモジュールが相互に作用しながら、プログラムされたサービスを提供してくれます。

これはDeFiプロトコルにも当てはまります。ユーザーは個々のスマートコントラクトを操作する必要はなく、最初にスイッチとなるスマートコントラクト(モジュール)の操作をすると、その後は各モジュールが相互に作用しながらプログラムされた通りに動きます。

また、白物家電の場合は、プログラムや個々のモジュールの変更を製造したメーカーがモデルチェンジなどにより変更します。一方でDeFiプロトコルの場合は、メーカーのように管理をする特定の団体などは存在せず、基本的には自律分散をしているため、機能やルールの追加・変更はコミュニティに委ねられています。その際にインセンティブ設計と、報酬としてガバナンストークンを配布することで、プロトコル運用の方向性と利害関係者の利益を一致させています。この仕組みにより、更にプロトコルが自律的に成長していくようになっています。

DeFiプロトコルにおいては、機能修正、追加や利率などのパラメータ変更、コミュニティや DAO 資金の使用方法などについて、ガバナンストークン保有者が保有量に応じて決められたルールに従って投票を行います。投票を経て可決したものを実行する仕組みのことを「ガバナンス投票」と呼んでいます。

サービスを構成するスマートコントラクト群

サービスを構成するスマートコントラクト群について、具体的な事例を用いながら見ていきましょう。複数のスマートコントラクトが相互に作用してサービスを提供しているとは、いったいどのようなことなのかを説明します。

例えば、暗号資産(仮想通貨)を担保に ステーブルトークン を発行することで借り入れが可能になるレンディングプロトコルの場合、担保を管理するスマートコントラクトが使われています。まず、ユーザーはこのスマートコントラクトに担保とする暗号資産を送付します。すると、スマートコントラクトは担保として暗号資産をロックして管理します。

仮に、このレンディングプロトコルは担保資産の70%までステーブルトークンを借り入れることができ、担保資産の価値が借入時よりも75%(清算値)まで下落すると、担保資産を強制的にオークションにかけて清算するというルールにより動いているとします。

担保がロックされたことが確認されると、ステーブルトークンを発行するスマートコントラクトによって所定のステーブルトークンを発行します。そして、発行されたステーブルトークンはユーザーの ウォレット へ送付されます。

借入後、担保資産の価値が75%まで下落したとします。この時、担保を管理するスマートコントラクトはオラクルから価格フィードを得て、清算値を下回っていること確認すると、清算トリガーが引かれ、管理していた担保を清算のためのオークションスマートコントラクトへ送ります。担保資産はオークションにかけられて入札が行われ、落札後に売却代金により、負債は清算されます。

このように、個別に役割をもった内部・外部のコンポーネントが所定の条件を満たすと、他のコンポーネントに対してデータを送信し、プログラムされた次の動作が自動で執行されます。


ガバナンストークンによるインセンティブ構造と収益構造

また、DeFiプロトコルはユーザーのプロトコルの利用を促すために、ユーザーがプロトコルを利用をするとガバナンストークンが配布されるというインセンティブ構造がよく利用されています。例えば、AMM(Automated Market Making、自動マーケットメーカー)に流動性を提供するとガバナンストークンがもらえるリクイディティーマイニング(流動性マイニング)という手法があります。

しかし、ガバナンストークンの価値とプロトコルの価値が紐づいていなければプロトコルの発展は正しくなされません。例えば、ガバナンストークンの過半を保有する主体が、ガバナンス投票で自身が利用する時のみ有利になるパラメータの変更を可決した場合、他のユーザーはそのプロトコルを利用しなくなり、プロトコルの価値は低下するでしょう。

また、リクイディティーマイニングについてもユーザーにとってガバナンストークンに価値がなければ、得たガバナンストークンはすぐに売却してしまい、結果としてはガバナンストークンの価値が低下しています。ガバナンストークンの価値が低下すると、価値のないトークンのために流動性を提供するユーザーはいなくなり、最終的にはプロトコルの価値が低下します。

このようにガバナンストークンの価値とプロトコルの価値もしくはユーザーにとっての価値を紐づけなければならず、それぞれの価値が合致するインセンティブ設計が必要になってきます。

ステーブルトークンなどのソフトペッグトークンペアを効率的に交換することが可能なAMMのCurve(カーブ)は、Vote-escrowed Token(veToken、ヴォートエスクロウトークン)というインセンティブ設計を導入することで、それぞれの価値を紐づけることに成功しています。

Curveのガバナンストークンは流動性を提供するユーザーのみならず、ステーブルトークンを発行するDAOなども保有するインセンティブがあります。それらのDAOがCurveに新たな機能の追加を提案するなど、ガバナンストークンを通してインセンティブ設計による自律分散的なエコシステムの拡大がなされています。

第8回では、DeFiアプリケーションの例と実在のDeFiプロジェクトの概要を解説します。


Web3ポケットキャンパスはスマホアプリでも学習ができます。
アプリではnote版にはない「クイズ」と「学習履歴」の機能もあり、
よりWeb3学習を楽しく続けられます。

ぜひご利用ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?