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創作物(詩)

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#創作大賞2023

【詩】傘

  傘

日傘は揺れながら泳ぎ方を覚えようと
水浸しの空を恥ずかしげもなく揺れながら
泳いでいる 泳ぎ疲れる踊りの友を待たせながら
踊る
ふりかかる日の粉のような干しざおの隙間のような
面影をたたえながら友人のふりをしているような
空たちの涙さらいに踊りを 踊りを
踊りを 踊りを
見せつけながら
泳いでいる 内向きに
泳いでいる 日傘は 恥知らずにも
踊る そして 泳いでいる
泳ぎ方を覚えようとし

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【詩】腐っていく朗報

  腐っていく朗報

解体されていく持続性
形式主義者の嗜虐趣味
せめてもの悲惨を振りかざしている
平和なれした陳列罪
 優柔不断な進駐軍から
 釣餌と知らずに掠め取ろうと
 攻撃性へと吸い寄せられる
 腐りかけの鯛
方向音痴の交通機関の
企業秘密を点字に訳して
手土産代わりに持参する先の
見えない解放区
 怒りとどよめき混じりに聞こえる
 世界が平和である証明を
 誤訳するのに精を出している
 

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【詩】きっと

  きっと

笑われたくて仕方のない羊飼い、羊をひとっところにまとめて、導き飼養し売りに出すことの滑稽さを、ご丁寧にも、全人生をかけて説明してくれているのは順調かい? 優柔不断な羊が一匹、笑おうか笑うまいか、さんざん迷っているらしいんだから、続けていけば、その内きっと、羊を売って世の役に立ち、買い手の幸せに貢献するだけが能じゃないってことに、誰かが気づいて笑ってくれるかもしれないぜ! 加工されてい

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【詩】浅はかな休憩

浅はかな
休憩

手のひらを重ね合わせた残像を
打ちひしがれている誰かの前に
さらけ出している商人が
売り物のガス灯を
路上に放置していくごとに
少しばかり
治安が良くなっていくのを
黙認している犯罪者集団の
面白おかしい暗躍に
胸を躍らせている商人が
売り物のガス灯を
ここぞとばかりに持参していく
明るすぎる街角で
交番以外
すべての建築物から盗む
ひだまりを
振り返りざま
スプレーか何かのよう

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