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泥梨の花よ

母からの突然の電話。
開口一番、
「弟の就職が決まったよ」


「やったーーーー!!!!!」
思わず大きな声が出てしまう私。
大学卒業してニートをすること3年目…ようやく春が訪れた…!嬉しい。本当に。

しかし、母は電話の向こうで泣きじゃくっている。嬉し泣きでは無さそう。
話を聞いてみると案の定、
「〇〇大学まで出てこんな年収の会社…」
「貧乏暮らしするのが可哀想」
「もっといい会社行けるのに勿体ない」
etc…

『今まで何社も受けてきて唯一、弟のことを認めてくれた会社じゃないか。
貴女の言うもっといい会社なんて絵空事。

そんなことより、この状況から一歩踏み出したことを褒めるべきだろう。
何故手放しに喜んでやれないのか。彼を信じてやれないのか。
若い内に失敗しておかずに、いつ失敗するんだ。駄目なら駄目で辞めればいいし、生活なんてこちらで支援してどうにかすればいい。

側から見てみりゃ実家に引き篭もる成人男性を"もっといい所があるはず"なんて引き留めること自体、異常です。

彼の幸せも、自分の価値も彼自身が定義すればいい。
彼の人生なんだから。』

なんて正論をぶつけても母は発狂してしまうだろうから、ぐっと堪え、
「明日帰るね。」
とだけ伝えた。
弟に余計なことを言わないように、どうにかして母の気持ちを前向きにさせないと。
何を言おうか…頭が痛い。

そして弟には、
「この地獄の中でよくぞ腐らずに咲いてくれた。貴方は私の誇りです!」
と、ただただ褒めてあげたい。

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