スクリーンショット_2020-03-11_18.19.58

自ら手がける新生活

【デジタル日曜大工 #2
第1回『デジタル日曜大工特集』では、VUILDのデザイナー/フォトグラファーである黒部駿人さんをご紹介しました。今回は、この春から新卒社員としてVUILDに入社する中村祐介さんを、作品と共にご紹介致します!

【プロフィール】
中村 祐介 YUSUKE NAKAMURA

アーキテクチャルエンジニア
1997年広島県生まれ。2020年3月広島工業大学建築デザイン学科卒業見込み。大学3年次にインターンとしてVUILD株式会社に関わる。その後継続して広島にてリモートの業務委託として設計に携わり、モクコレや面白法人カヤックのパーゴラなどでGHを用いた設計を行った。2020年4月よりVUILD株式会社に新卒入社。

画像1

1. 身の周りを「手」がける

まずは作品紹介から。

画像2

【スツール】
こちらは、中村さんが初めてShopBotを使用して自主制作したスツール。Pinterestで気に入った作品を模倣するところからはじめました。

大学では課題設計をCADで行うのみに留まっていて、実際に切り出して制作する機会がなかったという中村さん。大学内にShopBotもありましたが、安全面を考慮し、授業以外では学生に解放されていませんでした。しかし、VUILDでのインターンを経てShopBotの使い方を習得したところ、授業外でもShopBotを使用する許可を大学の先生からもらうことができたそう。そして初めて制作したのがこのスツールです。

画像3

【彼女の家のソファー】
第2弾として制作したのはソファー。接合部を学び始めた頃に制作したものが壊れてしまったため、ホゾ(接合部)なども再検討し設計した改良版です。

「彼女につくるものはクライアントに提案するみたいに、まずは大まかに作って提案してみて、そこから『ここはこうしたら使いやすいんじゃない?』とか『ここはいらないかな』という話をして、変更してというやりとりをします。
すると、自分はいらないと思う箇所が追加されたり、必要じゃない?と思う箇所が消されたりして、自分が最初に想像していたものとは違う物が完成する。良くも悪くも、自分だけでは生まれない作品が出来上がります。」

そう話してくれる中村さんはなんだかとても嬉しそうでした。「ちょっと作ってや〜!」と彼女にお願いされて、一緒にデザインから考えて制作できるのはとても素敵ですね!

画像4

【スケートボード】
この春広島から上京して来る中村さんが、関東での移動手段としてチョイスしたのがスケートボード。

自転車はどこに駐輪するにもお金がかかるし、流石に車は持ってこられない。そんな時にひらめいたものがスケートボードだったそう。当初はシンプルに板を圧着して制作する予定でしたが、学校には揃っていない道具が多く、全て用意すると6万円程の費用がかかってしまうことが発覚。そこで思い出したのが、以前VUILDが設計・施工した面白法人カヤック社のパーゴラでした。

画像5

このパーゴラを参考に、「Grasshopper*」で設計。パーゴラは両面に膨らむ形でしたが、スケートボードでは上面を平坦に、下は膨らむ形にする必要があり、デザインを確定するまでにとても時間がかかったといいます。また、強度が求められるモビリティは、使用する木材の質や厚さも重要なため、学びも多かったそう。とはいえ、試作品含めいずれもVUILDのメンバーが使用中に壊れてしまった為、まだまだ改良が必要なようです。

*3Dモデリングツール「Rhinoceros」上で動作するプラグインのモデリング支援ツール。

そんなスケートボード制作ですが、実は卒論の真っ只中に先生に隠れてこっそり作ったとか。無事に卒業が決まったからこそお話できるエピソードです。そして、昨年末のVUILDの忘年会で反響がよかったことから、それ以来VUILDが制作してきたもののオマージュを作りはじめました。

画像6

【ランプシェード】
スケートボードに続き、VUILD作品のオマージュ第2弾として制作したのがこちらのランプシェード。

板の厚さを考慮し、ShopBotではなくレーザーカッターを使用して制作しました。Twitterに投稿したところ「欲しい!」と言ってくださる方もいましたが、なんと合計500パーツから構成されている為、商品化したり、人にプレゼントするには設計し直すことが必要だと感じているそう。

これまでシンプルな家具ばかりを制作していた中で、このランプシェードやスケートボードは、色々な知識が溜まりはじめた頃に試行錯誤しながら制作した、思い入れのある作品だそうです。

画像7

【テーブル】
彼女の自宅用に制作したテーブル。きれい好きな彼女のために表面仕上げされた木材を使用し、除菌シートなどで拭けるようにしてあるそうです。

「今までは自分のものが多く、安い木材を使用していたり、仕上げが甘かったりしたのですが、この作品は仕上げも丁寧に行い、初めて納得して人に贈れる作品になった気がします。」

天板の下に収納を設けることでティッシュやコースターなどを置くことができ、常に机の上に物がない状態をキープできる仕様には、彼女も喜んでくれたとか。

画像8

【パソコンスタンド】
日々のPC作業から、姿勢が悪くなってきているのを実感した中村さん。簡単なPCスタンドを購入して使用してみましたが、高さが足りず、いまいち姿勢の改善になってないと感じ、より高い位置に画面が来るようなスタンドを作ろうと考えたそうです。

「持ち運びを考え、組み立て式でケースにきれいに収まる仕組みで設計しました。スタンドの角度をを15度と75度にできるようにし、外出時には15度で作業し、家では75度にしてノートパソコンのキーボードを使わず、外付けのキーボードを使い作業できる環境を作りました。
家での作業が多いため、かなりの姿勢改善につながり、とても実用的な作品になりました。」

2. 新生活を自ら手がける

4月から新卒社員としてVUILDで働くにあたり、なんとこのインタビューの3日前に広島から神奈川へ引っ越してきた中村さん。インタビュー当日は、文字通り家具が全くない状態だったそうです。それから1ヶ月弱を経て、コツコツと制作してきた新居の家具たちを紹介していただきました!

画像9

【ベッド】
新生活を送るにあたり、まずはより良い睡眠を目指すことに。ベッドの設計は進めていたものの寸法感や強度など、不安要素がかなりあったそうです。

端材で制作したため、ギリギリの部材割りをしてしまい加工がうまくいかなかったり、初めて無垢材を使用したため繊維方向に割れてしまったりして、かなり苦戦したとか。また、無垢材ならではの注意点や端材を使った部材割りの難しさなど、この制作を経て得た失敗は良い経験になったそう

画像10

【棚
「服の収納スペースがなく、新生活が始まっていばらくはスーツケースから服を出す毎日でした」とインタビューで話していた中村さんがベッドの次に制作したのは、ハンガーラックを兼ね備えた棚でした。

シャツやアウターはクロゼットにかけておくことができるものの、インナーやズボンを置く場所はなかったそうです。そこで制作した棚は、面で構成されているよりは線材で構成し、軽い印象を与えるような作品に仕上げています。また、各パーツには少しテーパーをかける(先を細くする)ことで、線材でも強弱をつけ、細さがより目立つデザインにしています。

画像11

【トレー】
毎日持ち歩くものや、身に着けるものを置いておくためのトレーが欲しくなり、棚を制作しながら急遽考えて制作した作品。

新生活を始めたばかりで物を置ける場所が少なく、不快に感じていたなか、少し大きめのトレーを制作することで、毎日使うものと時々持ち歩くカードケースなども置けるようにしました。自分の必要な用途に合わせてハンドメイドすることで、整理された場所になり、生活のちょっとした不快感が払拭されたそうです。

画像12

【ランプスタンド】
ランプシェードを広島から持って来たものの、家の照明に合わずオブジェとして置いていた中村さん。そんな時に、VUILDの川崎ラボに置いてあったあるプロジェクトのモックアップを見て、ランプシェードと同じプログラムを使えばぴったりのスタンドを作れるのではないかと考えたそうです。

極端に幅を細くし、邪魔にならず、かつ、自立するギリギリを狙って設計。一番下のパーツだけ地面との接地面を肉付けしたそうですが、そのほかは変更なく同じプログラムで作ることができたとか。

家具で演出する快適な暮らし
特にお気に入りの家具は、最後にご紹介したランプシェードだという中村さん。「最近は、お風呂上がりにランプの光だけでゆっくり過ごすのが日課となるくらい気に入っています」と話していました。

中村さんのお話を聞いていると、自分のライフスタイルに合わせてぴったりの家具を手作りしていくことで、生活が少しずつ快適になっていく様子がひしひしと伝わってきました。

毎日を過ごす家が、自分で作った思い入れのあるとっておきの作品で構成されているのは、とても豊かな暮らしかもしれません。

3. 設計士のおじいちゃんに憧れて

中村さんのお話からは、自分の生活に必要なものを堅実に手作りしている印象を受けましたが、それは、幼少期に過ごしたおじいちゃんとの時間に理由がありました。

幼稚園頃から将来の夢は「大工」
小さい頃から、設計士であるおじいちゃんの現場に連れて行ってもらったり、おじいちゃんの趣味である彫刻を見ながら「かっこいいなぁ」と思っていた中村さん。ShopBotやデジタル建築を学ぶ前も、自宅の家具を家族と手作りしていたそうです。

そんなおじいちゃんに憧れて、幼稚園の頃の将来の夢は「大工」だったそうですが、中学生になり、大工と設計士・建築家の違いを知ってからは「おじいちゃんの事務所を継ぎたい」という想いから建築家を目指し、迷わず広島工業大学の建築工学科へ進学しました。

また、これからの時代は新築をあまり建てなくなるだろうと考え、リノベーションを専門的に学び始めます。そして入ったのが、デジタルファブリケーションを専門とする研究室でした。

4. VUILDで働くということ

新社会人を迎える不安と将来に対する野心
研究室の教授の紹介により、VUILDで初めてインターンをしたのが2018年の11月。その経験を経て入社した中村さんのVUILDでの役割は、秋吉さんや黒部さんをはじめとする社員のスケッチを元に、データを制作することでした。インターンとして働いていた当時から、広島で大学に通いながら遠隔でデータ作成をしていた為、インターンを始めてから一年半経った頃に初めてVUILDのプロジェクト竣工に立ち会えたというエピソードもあります。

これからは設計や工程管理、木材選定も担っていくことが求められる中で、「どこまでできるだろう」と少し不安もあると話す中村さん。3人兄弟の末っ子だったこともあり、上について行くタイプで、あまりチームをリードすることが得意ではないとか。
しかし、今回紹介させていただいた沢山の作品、そして、隙間時間で自分の作ってみたいものを引っ張ってきて、試行錯誤しながら制作してきたという話からは、ものづくりに真摯に向き合う姿勢が強く伝わってきました。

また、「おじいちゃんの設計事務所を継ぎたい」という想いは今も変わらず、「誰もやったことない領域に踏み入れていたり、全国各地で色々な人とプロジェクトを行なっているVUILDだからこそ学べる、業界最先端的の知識を自分の力に変えて行きたい」と話してくれました。

大学の4年間、研究室やインターンを通して学んできたCADソフトを活用したモデリング技術、そしておじいちゃんやお父さんと小さい頃からものづくりを行う中で育んできた建築に対する想いを糧に、4月から社員としてVUILDに参画する中村さんから今後も目が離せません!

・VUILDメンバー募集

正社員、業務委託、インターン、アルバイトなど形態に関わらず、年間を通じて複数の職種でメンバー募集を行っています。VUILDの活動に興味ある方、検討したい方、随時カジュアル面談も受け付けているので、お気軽にお問合せください。                 (2024.04.17追記)

詳細情報こちらから確認いただけます。
https://vuild.co.jp/career/