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【メンバーインタビュー】フルリモートワークする事業責任者の裏側

春に3名の新メンバーを迎え、関わってくださる方々が増えたVUILD。といっても、「自律分散協調」の理念に則り様々な雇用形態を採用しているため、数多くいるメンバーの働き方は三者三様です。

また、建築デザイン領域を担う「VUILD ARCHITECTS」、ハードウェア販売を担う「ヴィルダーズ」、ソフトウェア開発を担う「EMARF」と、3つの事業部が核にあるものの、必要に応じて事業部を横断してプロジェクトが立ち上がっていくため、会社全体が日々変化し続けています。

そこで、改めてVUILDの「ひと」が日々何をやっているのか?を深堀りするメンバーインタビューをお届け。今回は、6月で入社3年目になるというヴィルダーズ事業部・田中翔貴さんをご紹介します。

田中翔貴 Shoki Tanaka
アーキテクト/プロジェクトデザイナー
神戸生まれ多拠点育ち。越境した先で出会う、人、もの、場所を大切にしている。ものや暮らしが自然とつくれる場所を世界中に広げたい。

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「つくる」への違和感から考え始めた転職と、VUILDとの出会い

建築系に進んだ大学時代を経て、商業施設や物流施設の企画からメンテナンスまでを一気通貫して行う企業で、建築設計業務に携わってきた田中さん。木材やデジタルファブリケーションとは縁のない環境で、3年間建築設計における実務経験を積みました。

その後、一級建築士の資格を取得しましたが、分業化された社内で自分の担当領域のみをこなすことの手触り感の無さに対して、

「図面を描くために1日の大半をパソコンと向き合って過ごしている自分の時間ってなんだろう。自分がやりたかった『つくる』と違う」

と感じたそう。これが、転職を考え始めたきっかけでした。もともと机に向かうより人と話すことが好きだった田中さんは、これを機に建築から離れることも視野に入れていたと言います。

田中「高校時代に進路を決める時に、なんとなく “かっこいいから” で選んだ建築学部。転職を決めた時に他の業界を見たりもしたのですが、結局やっぱり建築っていいなと思うことになりました。

建築は、単にものをつくるだけでなく、その過程において理系的要素と文系的要素が入り混じっています。深い沼ですが、多種多様な要素が関わっている建築は、自分の性に合っていると改めて感じました。」

そう考えていた矢先に、知人からVUILDのCOO・井上を紹介してもらい、とんとん拍子でVUILDで働くことが決まった田中さん。現在は、ヴィルダーズ事業部で、主にShopBot*の設置や導入をサポートするプロジェクトデザイナーとして活躍しています。

田中「VUILDのヴィルダーズ事業部は、主に全国各地にShopBotを販売している部署です。今期はすでに14台導入し、全国導入台数は70台、計65拠点に増えました。」

拠点数

▲3D木材加工機「ShopBot」(左)、全国各地に拡がる導入先一覧(右)。
*ShopBotは、世界で初めて低価格で販売された木材加工専用のCNCルーター。VUILDのヴィルダーズ事業部は、日本公式代理店「ShopBot Japan」として導入サポートを行っている。

VUILDが創業した2017年以降、着実にShopBotの導入台数を増やしてきたヴィルダーズ事業部。この数年間で事業部メンバーも増え、ShopBot販売のみならずアフターサポートの拡充やワークショップの開催、ShopBot Japanのコミュニティ構築など、デジタル人材を育成する取り組みもしています。

田中「一見、機械を売っているだけに見られがちですが、実は、VUILDのミッションである『すべての人を設計者にする』を目指して、つくる人(ヴィルダー)を育てるための教育も行っています。

例えば2020年4月には、長野県松川町と包括的地域連携協定を提携し、地域の高校生などを中心とした住民参加型のものづくりワークショップを実施しました。町面積の64.5%を占める豊富な森林資源を活用して、これまで『つくる』という領域に関わることのなかった人々を巻き込んで、地域材を使って日常の暮らしをつくる取り組みをしています。

ワークショップなどで本物の木、ShopBotや3DCAD、EMARFに触れ、思い描くものをカタチにする体験を通して、これまでものづくりに関わる機会のなかった人に暮らしを自分の手でつくる楽しさを届けたいと思っています。」

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▲協定を結んだ松川町では、森林資源を活用した自立分散型社会の仕組みづくりに関わってくださる地域おこし協力隊の募集を行っています。詳細はこちら

田中「また、全国各地の導入拠点と連携しながら、拠点オーナーを繋ぐコミュニティづくりも行っています。対VUILDとのコミュニケーションだけでなく、オーナー同士が情報交換することで、それぞれが自律していけるような場づくりをしています。」

全国各地に広がるShopBotの導入拠点は、製材所や工務店、自治体、教育機関など、多岐に渡りますが、2020年以降からは、印刷業界などの異業種や個人からの問い合わせも増えてきているとか。

ShopBotを製造しているShopBotTools社のあるアメリカでは、コロナ禍で仕事を失った人々が、ShopBotを使って事業を立ち上げる事例が増えてきているという報告もあります。そして、近年同様の現象が日本でも起こっているそう。

田中「ヴィルダーズ事業部では、ShopBotを使って新事業を立ち上げたいという方々に向けた、事業開発サポートも行っています。

例えば、静岡県の鈴三材木店さんや兵庫県の木原木材店さんでは、人材の紹介から事業計画、ワークショップの企画、教育プロジェクトの開発まで、ゼロからサポートしています。」

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▲静岡県の鈴三材木店内にある「Home Hamamatsu」で開催した<ワークショップ開催のための講座>。VUILDのサポートがなくても、ShopBotとEMARFを使ったものづくりワークショップを開催できるようになることを目指した。

「どこにいても変わらない」が出来る、VUILDでの働き方

実は田中さんは、はじめからヴィルダーズ事業部でShopBotの設置をこなしていたわけではありません。VUILDに入社した2019年当時は、約1年ほど、VUILD design(現VUILD ARCHITETCS)で各プロジェクトのフロント業務を担当していました。

「ShopBotの導入」というと、専門的な知識や技術が必要なポジションであるように思われますが、別事業部からの移動に不安はなかったのでしょうか。

田中「不安は全くなかったです。VUILDという会社にいることは変わらないですし、部署を移動してもその部署のことだけををやっていくわけではないので、ヴィルダーズに移ってもあまり変わらないんじゃないかという思いがありました。」

VUILDに入社する以前は定時出勤・定時退社の会社で働いていた田中さんにとって、会社のバリューに「自律分散協調」を掲げるVUILDでの働き方はどう写ったのでしょうか。

田中「どの事業部にいても変わらないというこのスタンスは、もともと持っていたわけではなく、VUILDに入ってから生まれたものです。以前働いていた会社は、定時出勤・定時退社でしたから、当初は少し戸惑いました(笑)。

VUILDは、一人一人の自律している個人が集まって会社が出来上がっている組織体として、コロナ禍に入る前からリモートワークを推奨していたことから、いつどこで働いてもいい環境が整っています。

全体に共有するビジョンありきで動いてるということをすごく実感する一方で、これは裏を返せば、全ての事業部のことを知らないといけないということ。今では、どこに行こうと変わらないという意識が自分の中で生まれています。」

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最近では、ヴィルダーズ事業部以外のVUILDメンバーがShopBotの設置を担当することもあるそう。一見難しそうに見えるShopBotの設置ですが、田中さんは笑いながら、「簡単ですよ」と言います。

田中「ShopBotは、機械が丸々日本に送られてくるのではなく、パーツごとにバラバラにされた状態で日本に届きます。ヴィルダーズ事業部で翻訳し、ブラッシュアップした組み立てのマニュアルがあるので、2回ほど立ち会えば一人で組み立てられるようになりますよ。一番大きいガントリーというパーツは100kgくらいあるのですが、それ以外は全て一人で持てるような大きさのパーツです。

現場で我々は設置指導という立場で関わっており、オーナーさんが主体となり、自分たちの機械を自分たちで組み立てるという方針をとっています。」

▲岡山県新庄村にて、ShopBot設置の様子。撮影:新庄村役場・山田さん

これまで約10台のShopBotの導入を担当してきた田中さん。様々な地域や人と関わる経験を通して、現場の面白さを実感したと言います。

田中「場所としてはもちろんですが、その地にいる人と交流できることに面白さを感じています。基本的な商談はオンラインで行っていますが、実際の現場感みたいなものはやはり掴みきれません。

そのため、現場に行ったときに初めてわかることが沢山ありますし、地域特有の話を現場に立って聞けるというのが面白いと感じています。」

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▲積雪の中、同じくヴィルダーズ事業部の中澤さんと担当した岡山県新庄村での設置の様子。「あまり寒いと感じたことない」という田中さんですが、ここでは山の上での極寒を体験したとか(笑)。

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▲今年2月、緊張しながらも初めて一人で担当したLAC八ヶ岳でのShopBot設置は無事完了!

コロナ禍で変化した、「今」いる場所への視点

この春、結婚を機に東京から三重県伊勢市に移住した田中さん。それでも、フルリモートで働く田中さんにとって、あまり暮らしに変化はないそう。

田中「伊勢には特段縁があったわけではないですが、以前何度か訪れたときに、すごくパワーのある土地だと感じていました。

コロナ禍以前からオンラインベースで仕事していたこともあり、移住してもベースは変わりません。東京にいるときに、ShopBotを見たいお客様を川崎に案内するということはありましたが、それが関西方面になった、ということくらいですかね(笑)。」

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幼少期に転勤が多かったこともあり、「土地への適応力は人一倍あります」と語ってくださった田中さん。自由な働き方をする中で伊勢に引っ越した今、今後の展望をお聞きしました。

田中「もっと地域に関わりたいという思いがあります。というのも、コロナ禍をきっかけに、家で仕事をする時間が増えると同時に、町との関わりも増えた実感があったんです。

例えば、地元の直売所に野菜を買いに行く行為など、より身近な領域での行動範囲が広がったというか。それ以来、自分が住んでいる地域に対して、何かできることはないだろうかという視点で考えることが多くなりました。

せっかく伊勢にきたので、空き家改修などを通して、昔ながらの魅力的なものを引き継ぎながら、新しいことを仕掛けられたらなと思っています。伝統工芸とテクノロジーを組み合わせて、世界に発信できる伊勢発祥のものづくりもしてみたいですね。」

多くの街で暮らしてきた経験から、自身のことを、「定住人口や関係人口という概念には当てはまらない曖昧な人間」と言う田中さん。だからこそ、自分がいる地域に関わりを深めていくことで、「”この地域にいるよ”という表現をしたい」と語ってくださりました。

最後に、ヴィルダーズ事業部のメンバーとして、そして地域に暮らす一個人として、地域に関わることのモチベーションをお聞きしました。

田中「コロナ禍を通して、自分の意思を持って暮らす場所を選択する人が増えてきていると感じています。

住む場所を選択する上で、その選択肢の一つに、例えば『こういうものを作りたいからこの場所を選ぶ』みたいなことがあってもいいなと思っていて。そういう方々のために、選択肢を増やす人になりたいという思いを持っています。」

東京に住んでいた時も、自宅近くでワークショップを開いたりと、地域に目を向ける暮らし方をしてきた田中さん。伊勢という地に移り住んだ田中さんの今後が楽しみです!

▶︎田中さんのnoteはこちら


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