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一軒家リノベの舵をとった学生が考える、つくることで得られる”豊かさ”とは

家族へのプレゼント・他団体との一軒家改修・他者とのワークショップと、テーマを決めて3ヶ月間に渡りEMARFアンバサダー* として活動してきた杉山真道さん。

小さな家具から始まり一軒家改修、そしてワークショップの開催と、ものづくりのスケールを広げていく中で、周囲の人々との関係性やものづくりに対する意識はどのように変化していったのでしょうか

今回は、周囲の声に耳を傾けながら人々の生活環境に寄与するものづくりを実践してきた杉山さんに、創作のヒントを学びます。

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* EMARFアンバサダープログラムとは、「ものづくりの文化を広げる」とともに、「学生ひとりを独立した企業家に育てる」ことを目的に、VUILDがローンチした日本初のクラウドプレカットサービス「EMARF」を使い倒す3ヶ月間の学生プログラムです。

▼アンバサダーとしての心意気を語ってくれた杉山さんの前回インタビューはこちら

家族のためのものづくり:ものに居場所を与えることで、生活への関心に火をつける

ー 一作目はお父様のために本棚を制作されたということで、お父様含めご家族からの反響はいかがでしたか?

父はコロナ禍でより一層読書をするようになったらしく、本の冊数が思った以上にあったので、当初考えていた本を針金で吊るすような構造ではなく、面的な棚上を整える家具のような使い方になりました。大学で学んだ分野を使って親に何かプレゼントするのが初めてだったこともあり、関心していました。

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ー 無造作に置かれていた本や小物に居場所を与えてあげて、それらを一度に収納できる棚を製作したことで、どのように生活が変わりましたか?

実際に形として出力されることで、生活へのこだわりというか執着が生まれたように感じます。物理的な面もそうですが心理的な面において、今までになかった生活への関心に火がついたみたいな。

また、以前はあまり口を出してこなかった父が、「もっとこんなことができるんじゃないか」とアドバイスをくれるようになりました。

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▲収納棚をプレゼントする前の様子。本や小物が無造作に置かれている。

他団体とものづくり:AやBでもない、Cが気付かせてくれたこと

ー 二作目では他団体と共同で一軒家の一室をEMARFを使って改修をされたということでしたが、プロジェクトがどのように進んでいったか教えてください。

このプロジェクトでは、①一軒家を住めるように施工すること、②よく住まわれるために設計すること、この2つを同時並行で進めていきました。

団体のメンバーとは、初日の顔合わせから設計・施工を通してどんな空間にしたいかを一緒に考えることができたので、まとまった時間を執拗にとらなくても作りたい空間の共有ができていたように思います。

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▲改修前の物件内(左)、改修後の物件(右)

また、協力をしてくれた学生団体さんが、僕なんかよりずっとものづくりやチームチャットツール、マネジメントについての知識があったので、メンバー間での調整や情報共有の面では助けられてばかりでした。

ー 他者と制作する中で、様々な要望や検討事項があったと推察します。印象に残っていることを教えてください。

人と共同で何かを作ると、気づかされることが多くあると感じました。自分がAかBで悩んでいるときに、思いもよらないCが他者から飛んでくることが数え切れません。

描きたい空間が共有されていれば、出来上がるものが椅子から机に変わっても問題はなく、人と共有することで1人だと考えつかない方向に進めるのことができたのが面白かったです。

ー 反対に、うまくいかなかったことや実現できなかったこと、失敗談があれば教えてください。

答えがあるものではないと思うのでなんとも言えませんが、畳を残すように家具を作る案や、より視線の抜ける案など、試す価値のある案がたくさんあり、1/1で空間を検討する機会をもっと設けたほうがよかったと思いました。ものとして出すには人手や時間が必要になるので、おろそかにしてしまったなと今では感じます。

ー 完成していかがでしたか?ご自身の感触や一作り手としての気付き、心情の変化があれば教えてください。

本棚としても機能する間仕切りに、実際に生活者が本を置いてくれていることを知った時に、作り手として感じる喜びの感情に自分自身びっくりしました。これまでだれかのために何かを作る機会がなかったので知らなかった感情でしたが、こんなことができたら嬉しいのではと考えていたことを、モノが完成した後に生活者が叶えてくれました

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ー 竣工後に実際の利用者の手に触れることで、モノが空間として完成したということですね。利用者からの反響はいかがでしたか?

制作中は利用者と密にコミュニケーションが取れたので、要望を頂いていた機能やデザインに満足してもらうことができました。窓際の椅子や収納できるデスク、充実した本棚など、生活によく馴染んで利用されているようです。

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また、造形に関しても、曲線を適切に盛り込んでいて、生活動線を邪魔しない利用者目線の制作物になったという声をいただきました。ワークショップで利用者それぞれが製作した照明の居場所を作ったことにも喜んでいただき、愛着を持って利用できていると言っていただきました。

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ー 今回のプロジェクトが始まったのは、共同したリノベーション団体が、デジファブを使った空間表現を画策していたということがきっかけということでしたね。EMARFでのものづくりを経験して、制作に関わった皆さんからはどんな感想をいただけましたか?

団体としては以前のプロジェクトでデジファブを利用した経験があったそうですが、その際は制作期間が非常に短かったために、施工の効率化のみを考えてデジファブを利用したと聞きました。今回のプロジェクトでは、作業の効率化のみならず、デジファブ特有のデザインを試してみたかったことが、EMARFを活用する動機に繋がったそうです。

その結果、面で構成することや曲線などの難しい形に挑戦できることなど、デジファブの意匠的な特性を垣間見ることができたことに加え、出来上がったものを実際に使用できるということも含め、良い経験となったと感想を頂きました。

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他者とのものづくり:ワークショップを通して感じた、量販店では買えない“自分だけのモノ”への想い

ー 三作目では、ワークショップ形式でリノベ団体のメンバー一人一人が什器を制作されたということですが、照明からスツール、ハンガーまでと、様々ですね。どのようなテーマで制作されたのでしょうか?

メンバーに作りたいものを聞いたときに、あれやこれや作りたいものが出てきてしまって、取捨選択で作るものを決めました(笑)。

テーマを提示していないのにも関わらず想像以上に多くのアイディアが出てきたので、彼らは普段から日常生活における気持ち悪い(違和感のある)部分に気を使っていたんだと感じました。また今回は、EMARFを使ったことで細かな接合部や曲線など、手作業りでは表現しにくい加工も実現できたことがとてもよかったです。

例えば、クラゲのような形を表現したスツールを制作した参加者は、普段からデザインの効いた古着などを着るおしゃれが好きな女性でした。彼女にとって、規格化された椅子を買うことは違和感がある。そんな時に、デジタルの力で手書きのうねうねをデータ化し、自分だけの形状を「クラゲスツール」で制作していました。

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ー アイディア出しから完成までの流れを教えてください。

まずはじめに、アイデア出しとスケッチを交えた簡単なイメージ出し時間を決めて行いました。次に、それらのアウトプットを元に互いに感想を伝え合い、デザインに反映していく意見交換を行いました。

例えば、参加者の1人が制作したランプシェードは、ランプを覆う木材の本数で明かりの強さが変わるため、もっと多いほうがいいんじゃないかという声があったり、スケッチで書いたものを元に、荷重がかかりそうな箇所にもっと材をいれたほうがいいんじゃないかなどの意見がでました。その後は、それらを反映させた上で、それぞれが実際に形に落とし込んでいきました。

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ー ワークショップ形式でものづくりを行う際、参加者にとってハードルになったことはありますか?

メンバーのみなさんはものづくりに慣れている方ばかりでしたが、ものづくりに慣れていない人が一からなにかを作る際には、構造面や規格サイズの制約がハードルになることがあると思います。

ですが、EMARFアンバサダーの隆範さんや銅銀さんが提唱してくれたように、“既製品に対して寄生するEMARF”という手段をとることで、できることが増えるんじゃないかと思います。

ー それぞれが考えたオリジナルの形状やデザインを形にしたワークショップを経て、メンバーからの反応や反響を教えてください。

IKEAや無印などの家具量販店に行けば機能のいい家具なんていくらでもありますが、使い手が製作段階に介入することで、モノに対しての愛着量が増えることが外から見ていても分かりました。インスタやTwitterなどに投稿してくれたたりもしました。

ー 2ヶ月間制作を通して、他者とどのような関係を築くことができましたか?

学生の場合、普段は学校が同じだったりと、なにかしらの共通点がある上で人と知り合うことはありますが、今回のプロジェクトでは本当の本当に初対面で緊張していました。しかしその後のプロジェクトを通して食事を共にしたりお昼寝したりしていく中で打ち解け、今では時々お泊りしに行くほど関係が深まりました。

決して完璧ではないヴィジョンを創作意欲に変えるには

ー 作りたいものがない時や、作りたいと思った時に進行を阻害する障壁への解決策があれば教えてください。

VUILDでEMARFのエンジニアをしている吉川さんが、形にするのを怖がってる僕に「完璧でなくても形にしちゃったほうがいい」と言ってくださったことが、活動する上での大きなターニングポイントになりました。

目に見えていない障壁を頭の中でいくら考えても解決することはできないので、今では、正解を求めるより、自分らしさを追加するくらいの感覚で進めていけばいいと思うようになりました。

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ー EMARFを知ってくださっている方の中には、使ってみたいけど何を作ればいいかわからないという方もいるようです。日常生活におけるものづくりを実践する際のマインドやアイディアの根元、そして前述のような方々にアドバイスがあればぜひ教えてください。

協力してくれた学生メンバーの暮らしを見て感じたのは、生活のストレスを感じた上で、そのストレスをデザインのきっかけにする力が強いんだと感じました。

例えば、本棚の横幅が足りなくて本をそれ以上置けなくなった時、本を横にして上に積み上げることで、無理やり詰め込む人が多いと思います。

しかし、生活のストレスをデザインのきっかけにする力が強い人は、そうはせずに何かしらの解決策として、良い整頓方法を形にすることができるのではと思います。

これは、生活で感じた気持ち悪さ(違和感)を、自分らしいデザインのきっかけとして面白がれるマインドを持ってして生まれるものであり、それこそが、創作をする上で鍵になってくるのではないかと感じています。

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ー 杉山さんは3ヶ月の活動を通して家族へのものづくり・他団体とのものづくり・他者とのものづくりと、それぞれテーマを決めて制作されてきましたが、次に挑戦してみたいこと・作ってみたいものがあれば教えてください。

静岡県三島市で父方の親が持つ一軒家が空き家になっているらしく、院生の2年間でなにかできないかと考えています。

また、現在はコロナによって活動が制限されていますが、学校でやっている二地域居住の活動「富浦プロジェクト」で、自分たちで作ったものを地域に還元できたらなと思っています。

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▲過去に富浦プロジェクトで制作した作品:子供がデザインを考えるワークショップ型竹灯籠祭(左)、原岡桟橋周辺のベンチ制作

ー EMARFはユーザーのニーズに答えながら、日々アップデートを続けています。今後EMARFにどのような展開を期待しますか。

構造面や組み立てにおいて、アドバイスや助言していただけるサービスが追加されると良いと感じています。

また今後、たくさんの人の中で「購入すること」=「豊かになること」だけではなく、「作ること(=らしさ)」で得られる豊かさがEMARFによって認知されると嬉しいなと感じました。

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▼アンバサダーとしての活動テーマを語ってくれた銅銀さんの前回インタビューはこちら

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