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バングラディシュのビル倒壊事故が資本主義社会での企業の存在意義を問う? 社員総会で語ったバリュエンスが社会に提供する‟Value(価値)”とは?

会社に関わるすべての人がフィジカルに、一堂に会する社員総会は、会社という組織の方向性を示す絶好の機会でもあります。

今日はバリュエンスの社員総会で私がいちばん伝えたかったことをお話しします。

「トゥルー・コスト」を知ることから始まる

社員総会で行ったプレゼンテーションのなかで私がメンバーに特に伝えたかったのが、「Purpose of Valuence―バリュエンスの存在意義」と銘打ったパートでした。

このパートは、ある映画の紹介動画から始まります。
その映画とは、2015年に公開された『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~』

https://unitedpeople.jp/truecost/

この映画は、2013年4月23日にバングラディシュの首都ダッカで起きたビルの倒壊事故がきっかけで生まれた作品です。バングラディシュと聞いてピンときた人は少ないかもしれませんが、実はバングラディシュは「世界の縫製工場」といわれるほどのアパレル輸出大国で、衣料品の輸出額は中国、ベトナムに次いで世界3位を誇っています。

労働と対価……新興国のジレンマ

かつてアジア最貧国といわれたバングラディシュがアパレルという経済的な武器を持ったという話ならいいのですが、実はこれ、労働コストの低さと労働人口の豊富さに目をつけた多国籍企業が続々と進出した結果でもあるのです。

その最たる例が、ファストファッションの縫製工場です。バングラディシュで安い人件費を利用して人を雇い、安価な服を大量につくって世界に流通させる。以前と比べたら「驚くほど安い」衣服は、値上がり続きのご時世でありがたくもありますが、私たちが手にする安価な商品の多くは、こうした仕組みによって生産されています。

物価やコストのギャップを利用しているだけならいいかもしれませんが、古今東西を問わず、こうした”不自然な“仕組みには歪みが生じます。
『ザ・トゥルー・コスト』誕生のきっかけとなったビル倒壊事故は、このビルに入っていた縫製工場のずさんな安全管理が原因だったともいわれているのです。
この事故で亡くなったのは、縫製工場で働いていた女性など1136人。事故後の補償などの法的枠組みも大きな問題になりました。

華やかなファッション業界、大量生産・消費を続けるアパレル業界は、こうした人々の犠牲の下に成り立っている。世の中の裏側に迫ったこの映画は、エマ・ワトソンさんら多くの著名人の目に留まり、多くの新興国で起きている大きな問題を浮き彫りにしました。

予告編が見られるので、お時間がある方はぜひこちらを。本編も配信サービスなどで見られます。

数千円のコートが売られている理由

知っているのと知らないのとでは見えるモノが違ってくる。
私たちの当たり前は、もしかしたら誰かの犠牲の下に成り立っているかもしれない。

ファストファッションブランドのお店で服を手に取るとき、ダッカの縫製工場で生活のために過酷な労働条件で働く少女のことを思い浮かべる人は少ないかもしれません。しかし私たちも、ふと立ち止まって、これまでなら考えられないくらい安価で服が売られている理由について考えてみる必要があるのかもしれません。

社員総会では、この『ザ・トゥルー・コスト』を紹介しながら、世界中の生産を担う新興国では、劣悪な労働環境、日給数ドルという低賃金、長時間労働、児童労働などの人権問題と水質、大気汚染などの環境問題が前提になってしまっていること、私たちの生活は彼らの犠牲によって成り立ち、その犠牲は彼らだけではなく私たちの身にも跳ね返ってきていることなどをメッセージとして伝えました。

「知ってしまった後」にできること

こうした現状に対して、私たちに何ができるか?
バリュエンスでは、世界に対する私たちの存在意義として、

Circular Design for the Earth and Us
地球、そして私たちのために循環をデザインする

をパーパスに掲げています。

企業としては、リユースを主業とする私たちにしかできないこと、循環社会、循環経済を加速させていくこと、二酸化炭素排出量、水使用量、エネルギー使用量、PM2.5排出量の削減貢献量を算出することなどに取り組んでいますが、総会の場でメンバーと共有したかったのは、「では一人ひとりは何をするのか?」ということです。

会社の取り組みは取り組みとして知る。知らなかった「不都合な真実」を知る。
そしてその先に、バリュエンスのメンバー一人ひとりの生活があり、行動があります。

バリュエンスには、パーパスとともに事業を通じて目指す中期的な使命

大切なことにフォーカスして生きる人を増やす

というミッションがあります。

今回、このパーパスである「Circular Design for the Earth and Us 地球、そして私たちのために循環をデザインする」とミッション「大切なことにフォーカスして生きる人を増やす」をつなぐコアバリューを改めて言語化しました。

それが

Value Design for Us

です。

アンケートで見えてきた“幸せの正体”とは?

メンバー一人ひとりが「⼤切なことにフォーカスして⽣きていく」ことで、⾃分の⼈⽣をValue Designし、自分に、一緒に働くメンバーに、周囲に、そしてお客さまに、さらには社会に広げていくことができれば「地球、そして私たちのために環境をデザインすること」につながるのではないかと思うのです。

このコアバリューをつくるにあたって、一つ簡単なアンケート調査を行いました。
このnoteではお馴染み、

これまでの人生で何に幸せを感じたか?

という問いです。

幸せとはつまり、人生における価値=Valueのことです。Value Designのためには、Valueの正体を把握しておく必要があります。

私の仮説が証明された格好になったのですが、アンケートは「幸せを感じたのは経済的リターンではなく、精神的リターンである」という結果に。しかも、家や車、時計など何かを買ったという経済的リターンに幸せを感じた人5%に対して、結婚や出産、家族との時間などの非物質的、精神的リターンを挙げた人が94%という圧勝でした。

企業が社会に存在を許されるためには?

今回同時に、バリュエンスメンバーの行動指針であるValue Mindも更新し、バリュエンスがお客さまに、そして社会や世界に必要とされる存在意義の全体像がよりわかりやすくなったと思います。

仕事は自分のためにやる。自分らしさを表現するために働く。

会社のために縛られていた旧世代の働き方から脱却するのは素晴らしいことですが、自分らしさを自分勝手と取り違え、ただ楽しければいい、自分さえよければそれでいいというわけにはいきません

経営者として常に考えているのは、「バリュエンスはどうしたら社会に存在することを許されるのか」ということです。
「許される」は、強い言葉かもしれませんが、日本に、世界に、この社会にバリュエンスという企業が存在する理由は、自己都合だけでなく、社会の要請、需要があって初めて成立するものであり、これがあってこそ事業として継続性を持って成長していけると考えているのです。

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