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2つのブランドでスマホ画面の占有面積をアップせよ。同時多発経営の成長戦略〜戦力外Jリーガー社長の道のり33

前回は、完全予約制(当時)をうたった新ブランド『ブランド コンシェル』の誕生秘話についてお話ししました。

今回はその続き、戦略的に『ブランド コンシェル』が必要だったもう一つの理由についてお話しします。

前回はこちら


前例がないから必要がないは間違い

前述したように業界自体に「予約して行く」という概念がまったくないなか始めてみてわかったのは、お客さまにメリットがあるなら、まずやってみることに意味があることです。

なんぼやグループでは、この後にもLINE査定、オンライン完結型買取などを同業者に先駆けて行っていくのですが、「これまでなかったこと=ニーズがないこと」ではなく、「これまでなかったこと=あったらいいものはあったほうがいい」というマインドに変換することが進化の秘訣だと思うのです。

どの業界でも「誰もやらなかったこと」には、誰もやらない理由があり、そこを突破するのが大変といわれますが、お客さまの目線に立って、「これがあったら便利か?」「自分がお客さまだったらどんなふうに使いたいか」を考え抜くと、業界の論理、サービスを提供する側からの視点では得られない必然性が見えてきます。

変えたことで変わらない根底が見えた

この連載でも何度か言っていますが、「当たり前」や「常識」をそのまま受け入れていては何も変わりません誰かのつくった「当たり前」や「常識」を鵜呑みにしている時点で思考停止状態といえるのです。

『なんぼや』と少しハイクラスな雰囲気をまとう『ブランド コンシェル』を早い段階で並立させたことで、両者の比較が容易になりました。違うところ、同じところを分析し、両者に生かす。

実はビジネスにおいては、『なんぼや』と『ブランド コンシェル』では違いよりも変わらないこと、共通することの方が多く、リユース、買い取りで私たちがやらなければいけないことの基本は同じということを再認識することになりました。変わらないことを大切にしながら、お客さまのニーズ、シチュエーションによって選択肢を用意し、お客さまに使い分けてもらえることは、現在のなんぼやグループの大きな強みになっています。

裏ミッション「スマホ画面の占有面積を上げろ」

『ブランド コンシェル』を別ブランドとして持ったことには、戦略的にもう一つ意味がありました。

2014年は、iPhoneでいえば無印6の時代。すでにスマホを使うことが当たり前で、マーケティングでいえば、パソコンのディスプレイよりさらに狭いスマホの画面を奪い合うフェーズに入った頃でした。

検索結果の上位を狙うSEO対策は当たり前でしたが、どんなに工夫しても『なんぼや』だけではディスプレイの占有面積は最大で20%ほどに留まります。

ここで『ブランド コンシェル』という別ブランドを投入したら、狙った検索ワードでの検索結果を『なんぼや』と『ブランド コンシェル』で埋めることができます。

20%止まりだった占有面積が、40%になる可能性があるのです。

画面が狭く、当時はまだマルチタスクが苦手だったスマホで、40%の占有はかなりの追い風になります。

これまでは競合他社が表示されていた検索結果に『ブランド コンシェル』を送り込めれば、メリットは計り知れません。

「継続は力なり」も「多動力」もどっちも大切

こうした仮説を元に、まぁまぁのコストがかかり、『なんぼや』とはきちんと差別化して一からブランドを構築しなければいけないという、まぁまぁな労力を使って『ブランド コンシェル』を立ち上げる価値があると判断しました。

何につけても「いろいろやるより一つを突き詰めるべき」という考え方が支配的な日本では、あの時点の経営判断として『なんぼや』に注力すべき、という声の方が多数派であり、常識的だったと思います。

スポーツや部活を一つ取ってみても、サッカーをやっていたらサッカーだけ、野球なら野球、他のスポーツをするなんて1ミリも考えないのが日本の現状です。

アメリカを代表とする欧米諸国では、小さいうちには複数のスポーツをする方が豊かな身体表現、身体操作法が身に付き、また特定の部位に負担がかからないからケガもしにくいということが広く知られ、実際、複数の競技に取り組むことが珍しくないそうです。

それと同じというつもりはありませんが、一つのことにこだわる美徳のような考え方が、スポーツだけでなくビジネスや人生において道を誤らせることもあります。

当時の私はそれまでとは別のレイヤーで顧客に向き合う『ブランド コンシェル』と、全国に出店攻勢を継続する『なんぼや』の両ブランドを同時多発的に進める手法を取りました。

『ブランド コンシェル』は、完全予約というコンセプト、これまでになかった概念、ラグジュアリーなイメージを打ち出すための加速装置でもあったので、その後、大幅な店舗増、二枚看板へというつもりはありませんでしたが、その瞬間においては見事に想定通りにハマり、『なんぼや』グループとそこで働くコンシェルジュの質の向上に大きく貢献し、バリュエンスの成長の一端を担うことになったのです。

つづく

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